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"QueenⅡ"に寄せて  作者: イプシロン
Side Black
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ライの国の七つの海――Seven seas of Rhye


  丘の墓地から見える海

  波濤をかき乱しながら

  渦潮が海鳴りをあげて

  歌う声が聞こえてくる


  旋律は砕けてはまた結ばれる

  風が吹き抜け、海鳴が舞い戻る

  生と死の行進を織りなしながら


  父から子へ、子から孫へ

  祖母から母へ、母から子へ

  受け渡される音色は

  迷宮のように絡みあっては

  結びあってまた解ける


  白き女王は母に似て

  初恋の人にもその面影

  純粋さの子宮に還れずに

  ほろほろと泣けてくる


  いつかある日に落ちた恋

  それが愛だと気づかずに

  ひたぶるに夢を追った


  父母の愛すらわからずに

  がむしゃらに自由を求め

  ようやく知った愛の意味


  罪も(いさお)も人の業だと

  わかったような

  わからぬような

  鏡の世界に(ほだ)されて


  いつ頭に落ちぬとも知れぬ

  金の斧に怯え運命を呪い

  叡智を求めて彷徨い歩いた


  愛と喪失

  欲望と誇り

  そして、死と永遠


  「お前はそれをなんと想う?」

  風が去り海鳴りが唸っている

  「それですべてだとでも?

  見知ったるが世界だと?」

  ひとつのヴィジョンが浮かぶ――


  「我が国を見るがいい

  その勇気があるならば

  眼前の渦潮は銀河なり

  また銀河群は渦潮なり

  巡るものの核に我あり

  我こそ不動の動者なる

  輝けるライの国の七つの海

  七つの海の力の源なり


  「汝は我が力を信じようとも

  まったくもって無駄なこと

  海の力は何も必要としない

  ただ沈默して見るがよい

  汝が我が国に憧れようとも

  決して立入ることは出来ぬ

  口を開くな、歌など無用だ

  我が国への切符は力への意志


  「されば汝はそれを持つか?

  駱駝から獅子へ、獅子から子どもへ

  子どもから超人へ、その先はどうする?

  我が力は冒涜され得ざるもの

  海の国への切符は力への意志

  その意志は我が手中にしかない

  汝、無力を嘆いておるのか?

  さればいつかは言えぬまでも

  ライの国の七つの海に招こう」


  ヴィジョンはふっつり途切れ――

  海鳴りも聞こえない

  ただ風の音が(かまびす)しく騒いでいた

  ライの国の七つの海など

  どこにもありはしないと


  子ども心が風に嘯く

  パパママ、海に連れてって!

Queen - Seven Seas Of Rhye

https://www.youtube.com/watch?v=0e4Odk-v3oU

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