行進――Procession
沈黙の風に吹かれて歩いている
前を往く人の背中を見つめて
後ろにつづく人びとも
ただ背中を見つめて歩いている
ヒタという足音すらなく
行列は粛々と進んでゆく
霞んで見えない先頭
後尾も靄の向こうだ
周囲には健気な動物たち
犬は一途に歩き、猫は遊びながら
鳥はヨタヨタしたり飛んだりして
鼠は駒のように像はノシノシと
兎は跳ね、足萎えの蛇さえも
行列にそって進んでいる
不毛な行進を恐れるのか
人も獣も不安に声を上げる
意味ありげな音律なのに
その意味がわからない
それでも儀式はつづいてゆく
「いったい何のためだ?
貴人を悼んでなのか?
それとも皆んなのためか?
誰か理由を教えておくれ!」
どこからともなく声がする
「足を止めるな、考えるな
汝に知る権利はない
行進が神聖でないなどと
疑ってはならないのだ!
いつかその意味もわかろう
だがそれを知ったものは…」
「知ったものがどうなるって?」
声は消え去り静寂だけが
傍らで力尽きた者が
呻きながら倒れて動かない
――これが世界なのか
これが生きる意味なのか
この行進が摂理であるのか
おお神よ、なんとあなたは残酷なのだ――
傍らで美しい旋律を口ずさむ者
歌が夜の迫る闇に木霊する
先頭が松明を炊いたのか
炎が漣のように押し寄せてくる
懐中に手を伸ばし松明を灯す
紅蓮の川はどこまでも流れてゆく
――これが命の輝きなのか
これが真理なのか
この行列が……おお神よ
なんとあなたは英明なのだ
精霊と父と子が
行進しているではないか――
目からは涙が溢れ
口からは慰めと歓喜の旋律が
自然と零れでた
世にも高貴で美しく
そしてまた意味のない
歌詞すらない頌歌が
Queen - Procession (Instrumental)
https://www.youtube.com/watch?v=vRulFyRWFrY




