紙飛行機に乗って、君と飛んで行けたら。
空を飛んでみたいと、病室の窓から空を眺めて言っていた君。
『翼かな、それとも空を飛ぶ列車かな?』
そんなことを言うから、あれ以来空を見上げると、自分の背には翼が生えて、列車は夜空を泳いでいるようで……
俺の目からは、涙が溢れるんだ。
そうして視界が滲んで、それが元に戻ると、その翼と列車はもう、消えている。
誰でもいい。
この呪いを、誰か解いてくれ。
でないと、会えないのに会いたくて、空を見上げるのが怖くなってしまうから。
……と夜空に向かって意味の無い頼み事をしたのが、昨夜のこと。
君がこの世から居なくなって丁度一ヶ月。
それを思うと、いつもより胸が苦しくて、つい泣きすぎてしまった。
大学休みだし、気晴らしに散歩でも行くか……
そう思い、スマホを片手にふらりとアパートを出る。
十分後に辿り着いたのは、近所にある公園。
近くには一級河川があり、流れが穏やかだ。
そして空は快晴で、今の俺と正反対だからか腹が立つ。
そんな青空の下でより眩しく見えるのが、駆け回る子供たちの笑顔──…
小学校低学年くらいか。
男の子が二人、かけっこをしている。
追いかける側の男の子の右手には、紙飛行機があった。
そして意味もなく、無邪気な子供たちを眺めてみる。
ベンチに座った俺は、それから暫くして「あっ……」と声を上げる。
男の子の「いけぇ〜っ!」という元気な声と共に、紙飛行機が空高く舞ったからだ。
最初こそ真っ直ぐ飛んでいたが、途中から方向が逸れ、川の方へ行ってしまった。
男の子たちが残念そうにその紙飛行機を見届ける中、俺は涙が溢れて止まらなかった。
「う、あ……ああ……っ」
翼が生えていなくたって、列車が空を飛んでいなくたって、俺の願いは、
『君の願いを叶えたい』
ただそれだけだった。
飛行機や気球に乗るという、現実的な方法だって良かったんだ。
病に苦しんでいた君の、唯一の願いだったから。
なのに実際、君の願いを叶えてあげることは出来なかった。
「ごめ、ん………ごめん……っ」
優しい君へ。
どうか、謝る俺を許さないで。
それでも、胸が痛くてどうにかなってしまいそうだから、謝らずにはいられないんだ。
心の底から後悔し、希う。
今にも着水してしまいそうなあの紙飛行機だって良いから、君に空を飛ばせてあげたかったと。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
『君』が妹なのか恋人なのか、はたまた友達なのかは、皆さんのご想像にお任せします。