表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄色の壁  作者: 石田ヨネ
第一章 ある噂
5/44

5 「お酒は絶対やめた」と言いながら浴びるようにワインを

「しかし、危なそうなことばかりしてるね。気を付けてくれよ、ソユン」

 動画を見ながら、カン・ロウンが心配する。

「まあ、気を付けなよってたって、さ? 今年だけでも、けっこう散々な目には遇ってるから、今さらなんだけど……」

「ああ、そう言えば、そうだったね」

 と、振り返ること――

 このパク・ソユンおよびSPY探偵団だが、今年の一年でも、いくつか事件を調査してきた。

 その中で、異能力というか、異常者を相手にすることも少なくない。

 中でも、パク・ソユンが小さくないダメージを負ってきた事件が二つほどある。

『茶館事件』と、『Ⅹパラダイス』なる島での事件。

 前者は、さしづめ毒劇物の“茶会”といったところか?

 狂人的な財閥令嬢の主催者が“招待”と称して、実体は拉致によって強引に客人を“招き”、茶会といって劇物や、ギンピギンピなど激痛をもたらす植物を用いた“茶”を振る舞うという狂気を行っていたのだ。

 その調査の際に、パク・ソユンは友人を人質を取られ、犯人の令嬢に捕らえられてしまうことになる。

 手首をチェーンソーで切り落とされたり、ギンピギンピやら硫酸を飲まされるやら散々な目に遭うのだが、協力関係にあった“妖狐”なる存在の力を借り、最終的には令嬢にリベンジする形で、事件の解決までに至ったという。

 そして、直近では、Ⅹパラダイスなる島でのこと――

 謎の島への招待状が届くという、小説や漫画みたいなことがあったのだが、パク・ソユンはドン・ヨンファを強引に誘い、やめておけばいいものの、のこのこと島へと行く。

 どこか分からない島――

 まあ恐らく、韓国からそれほど離れていない島なのだろうが、そこにあったのは、巨大な“ヒトガタ”の――、それも、膝をついたセクシーポーズをとる女体のヒトガタという、およそ趣味の良くない巨大建築。

 一見すると、カジノ付き高級ホテルのような内部なのだが、案の定、そこで奇妙なことが起こる。

 パーティを終え、「お酒は絶対やめた」と言いながら浴びるようにワインを飲んだ後のこと。

 夜中に目が醒めると、なんと、部屋の中にクリーチャーがいたのだ!

 それも、人間を、まるでゴム手袋をひっくり返したような、血と臓腑の滴る、筒型のグロテスクなクリーチャーが!

 そうして、パク・ソユンとドン・ヨンファのコンビは逃走しながらも、この異常事象の首謀者たちとの戦闘の末、何とか倒し、島を脱出したという。

 その際も、“人体をひっくり返さんとする念能力のような力”を受け、肋骨がひび割れたり、腕が割れてクパァッ――とイキそうになったりと、小さくないダメージを負ったのだった。

「――ほんと、振り返るだけで、ろくなことが起きてないわね」

 パク・ソユンが言って、空になったグラスをスッ、コーン……! と置いて、また自分でぐ。

 キム・テヤンが息のあったように、海鮮系のツマミと海苔を置いてやりつつ。

「まったく、確かに運がないよな、ソユンは」

 とは、カン・ロウン。

「まあ、運がなさすぎでしょ、さすがに」

「けっ、またどうせ、変なことが起きちまうだろうぜ。いいじゃねぇか? お前と、“あいつ”にはお似合いじゃねぇか」

「は? 私まで、いっしょにしないでよ」

 と、“あいつ”との人物を出しながらも、キム・テヤンが茶化してくる。 

 すると、 

「ちっ……、噂をしたら、そのアイツが来ちまったじゃねぇかよ」

 と、噂をすれば何とかと、くだんの人間が現れる。


 ――ドゥ、ルゥン……!


 と、エンジンの音がして、近くの駐車場へと、ぬるりとブガッティが停まる。

 そんな、わざわざ近くの駐車場へ止めてまでして、車からは高級そうな黄色スーツにキノコ頭の男が。こんな屋台にやってきた。

 これで、SPY探偵団の四人がそろう。

 この、クレヨンしんちゃんの組長――、もとい園長先生のような黄色スーツを着たキノコ男こそは、メンバーのドン・ヨンファだった。

 貴族、中規模財閥の一族で、趣味程度に実業家やビジネスを嗜むという、グループ随一の有閑な男でもある。

「けっ……! まったく、来ちまったのかよ」

「来たのかよって、ひどいこと言うなぁ、テヤン」

「うん。来なくていいから、帰りなさいよ? アンタ? いや、帰りたいよね?」

「何だい? その、言い直しての「帰りたいよね?」って疑問形、」

 と、舌打ちしてくるキム・テヤンと、冷たくあしらうパク・ソユンというやりとりをしながらも、

 ――コン……!

 と、キム・テヤンは酒を、ビールを出してやり、ドン・ヨンファも飲みに加わる。

「ったくよ、わざわざ、そこに車を停めやがって」

「いや、駐車場だからいいじゃないか? 後日、取りに行くし」

「何? わざわざ、ブガッティを見せつけて、イヤミなわけ? 酒でもかけてあげよっか? “アレ”に?」

「ちょっ……! やめろよ、そいつは。さすがの僕でも、怒っちゃうよ? ソユン」

 アレ呼ばわりして、軽犯罪レベル程度には物騒なことを言うパク・ソユンに、ドン・ヨンファが憤り、

「――で? 後日って、いつアレは取りにくんだよ? どうせ、一週間くらい忘れてんだろ、お前はよ」

「その……、まあ、また暇があったらさ」

「けっ、高級車なんかいくらでもあるから、いつでもいいってことかよ。盗まれちまえばいいのによ」

「ね? やっぱイヤミでしょ? やっぱ、お酒かけてくるから、ビール、2、3本ほどちょうだいよ? テヤン」

「だから、やめてくれって。てか、酷いな、君たち」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ