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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第五章 紫の炎

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42 『ぽよ』の呼吸



          (3)



「あ、れ……? 美祢、八?」

 と、状況の理解が追い付かず、目を点にするドン・ヨンファと、

「ぽ、よ?」

 と、まだ虚ろな目のパク・ソユンは順に、“入ってきた”美祢八の姿を見て思わず声にした。

 その美祢八に続いて、

「ソユン! ヨンファ!」

 と、ふたりの名を呼びながら、カン・ロウンが駆けつけるように現れた。

「ろ、ロウン!」

 思わず叫ぶドン・ヨンファと、

「は? 何で、アンタたちがいんの……? ぽよ」

 と、思わぬ出来事に、パク・ソユンがいつもの怪訝な顔で、『ぽよ』をつけ忘れそうになりながら聞いてくるも、

「というか、ソユン!? ど、どうしたんだい!?」

「おうよ、どうしたんけ? その、首と、口から出とる血ぃは?」

「は? 何ぽよ? アンタたちも、「こいついつも口から血ィ吐いてんな」って、「こいついつも疲れてんな」みたいに言うわけ? ぽよ?」

「い、いや、別にそれは言ってないが……、って、ぽよ――!?」

 と、パク・ソユンの首元の出血と吐血を気にしながらも、カン・ロウンは『ぽよ』の語尾に驚かされる。

 また、パク・ソユンは続けて説明する。

「はぁ、……まあ、その、何っていうぽよ? この、黄色の壁の化身とかいうのに、たぶん、異能力でなのかな、ぽよ? 首に爆弾をつけられて、さ? ぽよ」

「首に、爆弾――!? だと!?」

「ぽよ」 

「……」

 と、カン・ロウンは、まだ『ぽよ』の相槌に困惑しながらも、

「そ、それを、爆発させられたわけか……?」

「ぽよ」

「……」

 と、困惑の沈黙を挟みつつ、今度は美祢八が、

「ほう、そんで、首ちょんぱして死なんかったんけ? どんな身体しとるんけ? 『ぽよ』のおば――、姉ちゃん」

「今、おばちゃんって言いかけたでしょ? ぽよ? 殺すぽよ?」

 と、パク・ソユンはジトッ……とした目で、美祢八のほうを睨みつつ、

「まあ、ヨンファにも説明したけどさ? ぽよ。たぶん、『ぽよ』の呼吸ぽよ。『ぽよ』って力を抜くことで、爆発のダメージを分散した的な、ぽよ」

「いや、呼吸ってレベルじゃねぇぞ、そいつぁ」

「だよね」

 と、つっこむ美祢八に、ドン・ヨンファが同意する。

 そう話している間には、


 ――シュ、ワ、ワァ……


 と、空間に穴が開いた影響からなのか――? 紫の、バブルガムの炎が引いていき、泡のように消えてしまった。

 それと同時、


 ――ドサァッ……


 と、糸が切れたように、翁が“地”に伏した。

「う、ごぉぉ……」

 呻き声があがる。

 その翁の姿を見るに、呑まれてしまう寸でのところで炎が消えたためか、まあ、助かっているのは見てとれる。

「ほぉ? お前さんが、ここの主――、いや、黄色の壁、そのものやろ? なかなか、ええ壁やねか」

 美祢八が、翁に話しかける。

「……」

 と、翁は、ゆっくりと美祢八と目を合わせて、

「貴方、は――?」

「ああ? 俺け? いちおう、お前さんを“作った者”と同じく、まあいちおう、壁に携わる仕事をしている者やっちゃ」

「そ、うか……。褒めてくれてことに、感謝、する」

「おうよ。まっ、何が、ええ壁か、知らなんだけど」

「「「……」」」

 カン・ロウンとドン・ヨンファと、翁の三者の沈黙が重なる。

 いや、知らんなら言うなよ、と――

 本題を進めて、

「そんでの? お前さん、いや、何て呼べばいいかね?」

 と、美祢八が聞く。

「ふ、ぅ……、まあ、さしずめ、翁とでも呼ぶがいい」

「うん。分かった」

 と、頷く美祢八に、

「「……」」

 と、ドン・ヨンファとカン・ロウンがシュールな顔で沈黙しつつ、

((何だよ、その、軽い、小学生並みの返事は……))

 と、心中、つっこみたくなる。

 その美祢八は、続けて問う。

「それで、壁の翁よ? 噂には聞いてきたが、お前さんは、“ここ”を訪れた者たちを、黄色の異空間へと連れ去ってきた――」

「……」

 と、翁はジッと、静かに美祢八のほうを見つつ、

「そして、この、ぽよのおばちゃんたちにしたように、連れ去った者たちに、“何か彼らの内面というか深層意識を自答させるようなテスト”を課してきた――」

「は? アンタ、ほんと首ちょんぱしたげよっか? 殺すぽよ」

 と、傍らで、おばちゃん呼ばわりにパク・ソユンが反応する中で、

「――“それ”で、間違いないけ?」

 と、美祢八は、確定するように聞いた。

「ああ……」

 翁は、静かに認めた。

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