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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第五章 紫の炎

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39 「何やってんだ! お前!」程度に、ソフトに質問




「――これが、最新の、すっげぇ再生技術を用いた義歯なんだよね」

 郷田が、そう言いながら、置かれてある義歯を見せる。

 口の中の型をとった土台という、歯医者でよくイメージするアレだ。

 まあ、一見すると、セラミック製の義歯のように見えるが、

「この義歯をさ、歯の欠損した箇所に差し込むとさ? 歯の再生と再成長が始まってさ、だいたい数か月か半年もすれば、残った土台の歯や顎の骨と完全にくっついた状態になるってわけ? この技術を、世に、バラまくぞッ! ――ってのが、ウチの理念でさぁ?」



   ーーー


※※『シン屋根裏の散歩者』より




 その翁のほうを、パク・ソユンも、意識を保ちながら見て、

「で? ぽよ? こんなことして、何がしたかったの、ぽよ?」

 と、「何やってんだ! お前!」程度に、ソフトに質問する。

「何の、ためだと……?」

 翁が、表情を少し険しくして続ける。

「フン……。この、黄色の壁という、絶対なる存在に囲われた空間……、それはすなわち、自己の、深層意識と向き合うことで、真理に辿り着くための空間――」

「……」

 と、警戒するドン・ヨンファと

「……」

 と、パク・ソユンが、ジトッ……とした目で、耳を傾け、

「それを、私は試してやったのだ……。そうしてきた結果、いかに、自己と、向き合わない者の多い事か……! 彼らは皆、自己の、深層に呑まれてしまったのだよ……」

「ふ~ん、ぽよ……。自己と、深層意識と向き合わない系の人間に、憤ってきたわけ、ぽよ?」

 とここで、パク・ソユンが問う。

「そういうこと、だろうな……。一見すると、自己と向き合っているような、見せかけの者は多いがね……」

 と、翁は、落胆に近いものを込めて答える。

 すると、


「へ――? それが、何か問題ぽよ?」


「何か、問題……、だと?」

 と、小馬鹿にするように、とぼけるパク・ソユンに、翁の表情がピクッとなる中、

「ぽよ。別に、自己と、深層意識と向き合いたい人は向き合えばいいだけの話じゃない、ぽよ? それを、わざわざ“こんなところ”に連れてきて、ぽよ……、何か? 意味あるわけ? ぽよ?」

 と、あろうことか――? 鼻クソをほじりながら、パク・ソユンは話す。

「いや、何で、鼻クソほじりながら話してんの?」

 案の定、つっこんでくるドン・ヨンファに、

「いや、鼻くそレベルの話でしょ? ぽよ。こんな、自己の深層意識と向き合うとか、向き合わないとか、ぽよ。あ? もしかして、自分に向き合う系の人を見過ぎて、可笑しくなっちゃとか? ぽよ?」

 と、パク・ソユンはひとつまみに鼻クソを丸める。

 その、対峙する眼前、

「……」

 と、翁の表情が、どんどん険しくなっていた。

 それは、静かな怒りの“それ”へと変わっていき、

「貴、様……」

 ジッ……と、こちらを見る翁に、

「(ちょっ! 何か、怒ってるし……!)」

「いや、勝手に怒らせとけばー、ぽよ」

 小声で焦るドン・ヨンファに、パク・ソユンは、やる気の無さそうな様子で、

 ――ピ、ンッ――!

 と、鼻クソを弾く。

 その、さすがの光景に、

「お、前……」

 と、翁がついに怒ったのか?

 ――ゴゴ、ゴゴゴ……

 と、ふたたび何か発動せんと、黄色のオーラが沸き立ちはじめる。

 それを見て、

「ちょっと、ヨンファ、アンタも何かしなさいよ、ぽよ」

「え? 僕も?」

「当たり前じゃん、ぽよ」

 と、パク・ソユンが急かす。

 そうして、

「うっ……、何か、あるかな?」

 と、ドン・ヨンファは、その黄色スーツの中へと手を伸ばして探る。

 このドン・ヨンファであるが、いちおう、植物というか花系の――、それも、魔界植物というべきに類似した異能力を使うことができる男でもある。

 そうして、

「“これ”でも、大丈夫かな?」

「ぽよ。何でもいいから、ぽよ」

 と、懐のあたりから何かを取り出す動作とともに、

 ――ファ、サァァ…… 

 と、“ナニカ”を放つ。

 すると、それらは紫に揺れる煙のようになりながら、

 

 ――シ、ダァァ……!

 

 と、枝垂れる藤の花と、紫の蔓バラのかごのようにして、自分たちを護るように取り囲む。

 それによって、

 ――シュ、ワァァ……

 と、翁の術か――? 彼らを侵襲せんとする黄色の煙のごときオーラが、籠の手前で消失していく。

「なッ!? 何とッ……」

 翁が、思わず驚く中、

「てか? アンタさ? ぽよ? 最初から、“それ”使えば良かったんじゃない? ぽよ?」

 ジトッ……とした目で見てくるパク・ソユンに、

「あっ? そっk――、ふぐッ――!?」

 と、ドン・ヨンファは「うっかりしてた」と答えかけた途中で、唐突に尻の穴のナニカに反応し、

 ――ド、サッ……

 と、膝から崩れ落ちる。

 すなわち、またここで、パク・ソユンがドン・ヨンファにカンチョーを見舞っていた。

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