36 結果的にコミットしたことになる
「私の夢ではないッ!」
「――!?」
一喝する綾羅木定祐に、上市理可は驚く。
「私だけの夢でなく、これは、全人類男性の夢だ……。この世は、実は仮想世界の写像だという説があるが、そのとおりだ……。私は、うたた寝をしていたのではない。その、2045年の来たるシンギュラリティに向け、仮想世界にアクセスする実験を行っていたのだ。その技術こそ用いれば、すべての女性とアクセスし、エッチをするVRの開発も可能になる。いわゆる、VR業務用セッ○ス産業の夢を、先ほど君は壊したのだ! カンチョーを、口に垂らしてな! ゆめゆめ忘れるな!」
「うわー、気持ちわるー! てか、シンギュラリティ、壊れちゃーう!」
ーーー
※※『シン屋根裏の散歩者』より
「ぐぐぅ……」
と、ドン・ヨンファが、パク・ソユンの腕の中で藻掻いていると、
「あっ――? ぽよ……」
「ん――? どした、の? ゲホ、ゲホッ……!!」
と、パク・ソユンは何かを思い出した様子で、ドン・ヨンファをホールドしていた腕を解いた。
「うんこ、って言ったけど……、さ? ぽよ。そ、の……、もしかしてのもしかして――、かもしれないぽよ」
「いや、何だよ? その、もしかしてのもしかして、って?」
と、ドン・ヨンファが、怪訝な顔をして、
「その、アレよ、ぽよ。ちょ、っと……、首輪が爆発したときに、身体が虚脱状態に、なって、さ……? ぽよ」
「ま、まあ、そうだろうね……。もしかして? お尻の力が、抜けちゃった――、とか? かい」
「うん、それ、ぽよ……。だから、二分の一で、ちょっと……、ウンコを、漏らしているかもしれないし……、ウンコを漏らしてないかもしれない的な、ぽよ。アレよ、一部の趣味のマニアがいる、シュレーディンガーのウンチ付きパンツ的な――、ぽよ」
「いや何を言ってんの!? てか、ほんとやめて!! そのネタは完全アウトだから、マジでやめて!! ソユン!!」
と、確かに完全アウトな、アッチ系のネタをのたまうパク・ソユンに、ドン・ヨンファが慌ててつっこみ、
「ん? 何、確認してみる、ぽよ? パンツを? ぽよ? もし、ウンコを、漏らしてなければ……、それで良し、だし……、ぽよ。万一、漏らしてたとしても、ぽよ……、それは、結果的にコミットしたことになる……、ぽよ……」
「いやッ!! 確認しないから!! てか、ほんと、どんな状態どんな状況でどんなこと言ってんの!?」
と続けて、混乱と錯乱気味につっこんだ。
そんな、ふたりのドタバタを目にしながら
「……」
翁がまた、呆気に取られたように、目を見開いていた。
あまりにも、理解不能なやりとりに、光景――
(バカ、な……?)
と、翁は心中、動揺していた。
“いつも”であれば、この『黄色の壁』の空間に連れてきた“被験者”に、精神構造分析のごとく――
自らの術・異能力を“施して”やれば、たちまちに被験者は、内面の深層に潜む黄色の怪物に呑まれてしまうのだが……、今回は、全く予想外のことが起きていた。
そのようにして、動揺とともに生じるのは、“油断”というものである。
そこへ、
「すぅーき、ありぃぃー! ぽよぉー!」
「くッ――!?」
と、いつの間に動いたのか、パク・ソユンは瞬間移動のごとく、翁の背後を取っていた。
流れるように、先日のキム・テヤンの屋台でドン・ヨンファに喰らわしたのと同じく、尻に手を回す。
そして、
「私も、ウンコに耐えたからさ――? ぽよ? アンタにも、一発、あげるぽよ」
と、尻に回した手の指を、穴のほうに入れんとする――!!
パク・ソユンの手が、ブスリ――!と、翁の、尻の穴を突き上げるように襲う。
「ぬッ――!?」
尻の穴が侵襲される、その刹那、
「う、ぐぅぅッー!!!!」
と、翁は断末魔のごとく、大絶叫をあげていたが。




