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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第四章 調査、黄色の壁

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33 灰色の混じった、まるで、【カオスに揺れる炎のような黄色】




          (2)




【黄色の壁】の、異空間――

 少しビビりながらも、緊張感のあるドン・ヨンファと、異次元レベルに緊張感の無いパク・ソユンのふたりであるが、『ああでもないこうでもない』とやりとりしつつ、【翁】と対峙していた。

 パク・ソユンを喋らせても、ふざけて余計な事しか言わないので、

「その……、内面と向き合うってのは、日本で言うところの、【禅】――的なもの、なのかい?」

 と、翁に聞いた。

「……」

 翁は、ジッ……と、ドン・ヨンファのほうを見ながら、ゆるりと、

「まあ……、あながち、間違ってもないが……、内面――、それも、表層の内面でなく、【深層】の内面のこと、だ……」

「あの、深層心理とか、深層意識とかいう……?」

「【深層意識】――、それは、自分にも、誰にも分からないもの……」

「自分にも、分からない……? その……、『これが自分の深層心理だ』と思っているものが、実は、ただの思い込みだったり……、あるいは、よくある、【深層心理実験などの結果で見るようなもの】とは、また違うものだと……?」

「ああ……。自分で、【深層心理と思っているもの】は、だいたいが、ただの思い込みだ……。表層心理に近い、具体的な欲望だったり、願望を……、それらしく、言葉にしてみせているに過ぎない……」

 翁は、いったん、そこまで話して、


 ――スッ……


 と、【壁】を――、この、【黄色の空間】を指さした。

「ん……?」

「ぽよ」

 と、ドン・ヨンファとパク・ソユンのふたりが、【その先】に、注目する。

「この、【黄色】は……、まるで、【ゴッホの黄色】のようではないか?」

 翁が、ふたりに問いかけるように言うと、

「――!?」

 思わず反応するドン・ヨンファと、

「ぽよ」

 と、たぶん、その半分も反応してないパク・ソユンが、相づちする。

「君たちは、ここへ来る前に……、見てきたのだろ? 同じく、【黄色の壁】を――」 

「あっ、ああ……」

 ドン・ヨンファが、すこし動揺しながら答える。

 何故なにゆえ――? “それ”を、知っているのか?

 まあ、【内面の投影、写像】の空間とのたまうからには、そのように、【記憶】なども見通せるということだろうか?

 それはさておき、ふたたび翁が続ける。

「ファン、ゴッホ――」

 と、出された画家の名に、

「う、ん……?」

「ぽよ」

 と、ふたりは反応する。

 翁は、続けて、

「彼の、不安な、複雑な内面の投影――。それが、彼が、多用した【黄色】にも表れているのだろう……」

「……」

「ぽよ」

「灰色の混じった、まるで、【カオスに揺れる炎のような黄色】――」

「……」

 ドン・ヨンファは、静かに沈黙して聞きながらも、ここで、

「それで……? この【黄色の壁】の、空間も……、ゴッホの黄色と同じようなナニカを、内包していているって、ことかい……?」

「ぽよ」

 と、聞いた。

「ああ……」

 翁は、うなづく。


 そこへ、

「――で、さ? ぽよ? そんなの、どうだっていいんだけどさ、ぽよ? どうやったら、ここから出れるぽよ?」 

「(そ、ソユンっ……!?)」

 とここで、話の流れなどおかまいなしに、容赦なく話をぶった切るパク・ソユンに、ドン・ヨンファが慌てる。

「いや、【自分に向き合う】とか、いうけどさ? ぽよ? むしろ、“アレ”じゃない、ぽよ? 自分に向き合いすぎて可笑しくなっちゃった系じゃない、ぽよ?」

「ちょっ!? そ、ソユンは、いったん黙っ、――!?」

 と、ドン・ヨンファはパク・ソユンを制止しようとした時、ハッ――と気がついた。


「……」


 と、無言で、ジッ……と、こちらを見る翁の目。

【能面のような男の目】と、【聖女のようだった女の目】が、ともに、恐ろしい“それ”へと変わりながら、

 ――じぃっ……

 と、こちらを凝視していた。

 そして、薄いながらも【黄色いオーラ】が、翁から沸き立つのも見える。

「ふぅ……、理解しようとしないなら、仕方ないな……」 

「――!?」

「ぽよ」

 やや怒気のこもったように言う翁に、ドン・ヨンファが、ビクッ――!? となる。

 まあ、パク・ソユンのほうは、言わずもがであるが。

 また、翁は続けて、

「それなら……、具体的に、この空間の力を――、【黄色の壁】の力を、実際に君たちに、見てもらおうか?」

「え――?」

「ぽよ?」


 ――スッ――、パッ……


 と、ふたりの眼前、翁は【合掌する】や否や、その両手を大きく開く。

 まるで、何かの儀式のような動作――

 すると、


 ――ギュ、イーン……!!


「なッ――!?」

「ぽよ?」

 と、ドン・ヨンファが驚く中、なんとあろうことか――!! パク・ソユンの首に、冷たくも機械的な、【首輪のようなもの】が具現化される!!

 “それ”を見るなり、

「そっ、ソユン? それって……、ま、まさかッ――!?」

「うん? これが、どうしたぽよ?」

 と、ドン・ヨンファはすぐに、“それが何であるか”を察する。

「ああ……。その、【まさか】だ……。世にも悍ましき、【首輪爆弾】だ――」

 と、能面のような翁の表情が、どこか不敵な笑みのようなもの帯びる。

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