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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第四章 調査、黄色の壁

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32 普通でない異常な者の言う【歓迎】や【招待】などの言葉を、性善説のごとく、言葉どおりに受け取ることはできないのは当然

「は? 何故ぽよ?」

「だ、から……、何故ぽよ、じゃなくて……]

 と、逆ギレほどではないものの、何故かイラっとして返してくるパク・ソユンに、ドン・ヨンファは呆れつつ、力が抜けてしまう。

 すると、

「……」

 と、ジッ……と、こちらを見る翁に、

「ッ――!?」

 と、ドン・ヨンファは、ハッ――!? となって慌てる。

「し、失礼……」

 恐る恐る、詫びて、

「フゥ……」

 と、翁はすこしばかり、ため息のようにしながら、

「話を続けると、だ……。別に、【制裁”】という、わけではない……」

 と、その言葉に、

「え……?」

「ぽよ」

 と、ドン・ヨンファとパク・ソユンが反応する。


 また続けて、翁が話す。

「君たちに、特に、敵意などいうものは感じてはいないよ……。むしろ、少々……、歓迎に近いものを、感じているというべきか……」

「へっ……?」

 ドン・ヨンファが、ポカンとする。

 そこへ、

「ぽよ」

 と、パク・ソユンが、またしても【ぽよ】を挟んでくるも、

「――だと、すると?」

 と、ドン・ヨンファはそれをスルーし、疑念とともに翁に聞き返す。

 歓迎に近い意志、もしくは意志のようなナニカ――

 しかし、そう宣うわりには、唐突かつ半ば強引な形で、自分たちはワケも分からずに【この黄色の壁】の異空間連れてこられたわけである。

 また、それに以前の事件でも、【招待状】などと言いながらも、相方のパク・ソユンが悍ましくも悪趣味な【茶会】に、強引に招かれた――、すなわち、拉致されたことも記憶に新しい。

 なので、普通でない異常な者の言う【歓迎】や【招待】などの言葉を、性善説のごとく、言葉どおりに受け取ることはできないのは当然である。

「――だとすると、とは?」

 翁も、聞き返してくると、

「いや、ふつーに考えてわかるじゃん? ぽよ? いきなり、変な空間に連れてこられて、歓迎って言われてもさ? ぽよ? 【SAW】じゃあるまいし、ぽよ」

「(ちょっ!! ソユン!!)」

 と、答えるパク・ソユンに、ドン・ヨンファは、『あまり刺激するな』と小声で注意しながら、

「ま、まあ、確かに……、この、ソユンの言うように、いきなり変――、いや、このような空間に連れてこられ、僕たちも正直、戸惑っているのもある。なので、その……、貴方の、【黄色の壁】の空間に連れてくる目的や、意図するところは何なのか――? よければ、教えてほしいのです」

 と、『変な空間』と言ってしまちそうになりかけたのを訂正しつつ、やや交渉気味の態度で、丁寧に尋ねた。

 その横から、

「そう、ぽよ。もうちょい、具体的に教えるぽよー」

「……」

 と、パク・ソユンが言ってきたが、もはやつっこむ気力を無くしつつ。


 話を戻して、

「具体的に、だと――?」

 と、また翁が聞き返して、

「え、ええ……。まあ、よければ」

「ぽよ」

 と、説明を促してくるふたりに、

「ふぅ……、まあ、単純に……、君たちがいうように、目的や意図というのを答えてもいいが……、まずは、考えてもみるがいい」

「うん。やだぽよ」

「もう!! やめて、ソユン!! そこで、いちいち余計なこというの、ホントやめてくれって!!」

「何故ぽよ?」

「いや、だから、何故ぽよじゃなく、って!! 話が、進まなくなるだろ!!」

 と、ドン・ヨンファとパク・ソユンが、半ばヒートアップしそうになっていると、

「……」

 と、またふたたび、ジッ……とこちらを見る翁の視線に気がついて、

「うっ……!!」

「ぽよ」

 と、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりは、否――、少なくとも、たぶんドン・ヨンファだけが、ビクッ――! と反応する。

「す、すまない」

 ドン・ヨンファは詫びつつ、

「続きを、話してもいいか?」

「あ、ああ……」

 と、翁はその言葉どおり、話の続きをする。

「まず、壁とは、“絶対的”なもの――」

「絶対的なもの、だって?」

「いや、壁は壁でしょ、ぽよ」

「いや! もうッ、いいから! ほんッと、ソユンはしばらく喋るのやめて!」

 と、傍らからうるさいパク・ソユンに、ドン・ヨンファもさすがに苛立つ。

 また、話を戻して、

「その、壁という絶対的なものに囲まれた、茶室や庵という空間――」

「……」

「ぽよ」

「“それ”は、古来より、茶道が築いてきたように……、自己の、深層的な内面と向き合う空間――。すなわち、没入することで、自身を写像させる空間とでもいうべきか……」

「何ぽよ? 写像って? ぽよ」

「もう! ほんとに、いい加減にしてくれって! ソユン! ふざけすぎだって!」

「は? ふざけてないぽよ。だから、言ってるじゃん? ぽよ。ふざけているようで、ふざけてないかもしれないし、ぽよ……、ふざけてないようで、ふざけているかもしれないって、ぽよ」

「もう、その『ふざけているようでふざけてない』理論はいいから……」

 ドン・ヨンファはやれやれと言いつつ、やはり、「もう、だめだこいつ」と内心、呆れざるを得なかった。

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