31 【まるでシンゴー、シンゴーのような語感】で
「……しかも、そんなもの飲んだら、死んじゃうんじゃない?」
「いえ……」
と、至極当然のことを抗議するパク・ソユンに、主人の者は、
「……たぶん、貴女は死なないと思いまして――」
と、間を置きながら、柔和な声で、冗談のような答えを言ってみせた。
「は? 何言っ――!? うぐっ――!?」
パク・ソユンは、イラっとして抗議しようとするも、スッ――と寄せられたティーカップによって口をふさがれる。
そのまま、
「どうぞ、パク・ソユン様――♪」
と、主人の者は、流麗にして強引な様で、パク・ソユンにウェルカムティーというべきか――? “ウェルカムドリンクなるもの”を飲ませてみせた。
ーーー
※※ 『激痛茶館』より
昨夜の――、もんじゃやら、ごま油海苔塩のポテトチップスに、オレンジジュースやらの記憶がよぎりながらも、
「ああ……。その、“もしかして”、だ――」
と、ドン・ヨンファが言葉にする前に、翁が口を開いて、
「お前たちは、ここに来るのに……、何か【仮説】を、考えていただろ?」
「――!?」
と、ドン・ヨンファは、ハッ――!? と驚かされつつ、
「ぽよ」
と、相づちしたパク・ソユンのほうを、
「……」
と、苦虫を嚙み潰した顔になりながら、ちらり……と見た。
その、思うところ――
この人間は、いつまで【ぽよ】をつけるのをやめないのか?
というか、何故? こんなにも、緊張感がないのか――?
まあ、いつものことだが……
――それは、さておき、
「そう……、お前たちの【仮説】は、【合っている】よ……。お前たちを、ここに【誘った】のは、他でもない……、庵の、【黄色の壁】そのもの――」
「――!?」
「ぽよ」
ふたたび驚くドン・ヨンファと、たぶん驚いてないパク・ソユンの相づちを挟みながら、
「す、すると……、【壁】が、何か、【情報思念体のような存在】だという、僕たちの説は合っていたってことになるのか」
「ぽよ」
「ああ……」
と、翁が答える。
ただ、そうすると、
「そ、それじゃあ? あ、貴方は……?」
ドン・ヨンファは、新たに疑問になって聞いた。
すなわち、この【黄色の空間】に自分たちを連れてくるという、【謎の力】を発動した主は、【壁】などという、“人”でも、生物ですらない存在――
だが、自分たちの目の前にいて対峙するのは、確かに、この【翁】という、人間もしくは怪人と思しき者の姿をしているのは間違いない。
そう、考えていると、
「何か、アレぽよ? 【Vチューバー的な、インターフェース】的な、ぽよ?」
とここは、パク・ソユンが、簡潔に聞いてくれた。
「フン……。まあ、“そういったもの”だと……、思ってくれても、いいだろう……」
翁は、相づちしつつ答えた。
また、続いてドン・ヨンファが、
「そ、それで、」
「う、ん……?」
と、翁が、その能面のような片方の顔と、聖女のような柔らかい表情で反応するも、
「ぽよ」
と、間で【ぽよ】を挟むパク・ソユンに、
「……」
と、ドン・ヨンファが戦慄気味に、表情を凍らせた。
「(いや……、だから? 何で、そこで【ぽよ】を挟む?)」
と、ドン・ヨンファは、半ばつっこみたくなるのを堪えながらも、
「そ、その……? 【目的】は、一体、何なんだい? 僕たちを、壁の向こうの――、この、【黄色の空間】に連れてきたのは?」
と、翁に尋ねた。
「目的、か……?」
確認するように聞く翁に、
「ぽよ」
と、またしても、パク・ソユンが【ぽよ】を挟む。
「……」
ドン・ヨンファが、再び沈黙する。
仏頂面と、苦い顔を混ぜたような表情で、
「(いや、本当に……、いちいち、ウザいんだけど、こいつの相づち……)」
と、憤りを口にしたいのだが、それでは話が進まなくなるという、“悶々とするナニカ”を耐えつつ、
「あ、ああ……。僕たちや、おそらく、庵に来た者たちを……、こうして、黄色の異空間に、連れ去っているんだよね? その、目的だよ」
と、ドン・ヨンファは疑問を、何とか言葉にしきった。
「……」
沈黙しながら、まだ返答しない翁に、
「もしか、して……? その……? 例えば、この庵に足を踏み入れた、【侵入者に対する制裁】――とか、なのかい……? もし、そうだとすれば、ちゃんと謝りますよ」
と、ドン・ヨンファは補足して聞くも、
「うん、謝るぽよー。めんごーめんごー、ぽよ」
「もうっ!! ちょっと!! ほんと、ソユンは黙ってくれって!! 頼むから!!」
と、まるで【シンゴー、シンゴーのような語感】で言うパク・ソユンに、ついに耐え兼ねて爆発してしまう。




