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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第四章 調査、黄色の壁

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30/44

30 1000人中1000人が美女と答えるであろう、絶世の美女の顔

 


 そこへ、今度は綾羅木定祐が入って話す。

「言葉のままだ。最初、私らは犯人を、人間の異能力者か、それともラブホにいた怪人のように、一定の大きさを持った怪人・怪物だと想定していたのだが……、ラブホの怪人たちが言うには、そんな怪人の見聞はないとのことだ。それから、異能力者の可能性もまだ残っているが、そのような異能力者なら、あのクソどら焼きクソダヌキの妖力で調べたときに、引っかかる可能性が高いだろう」

「クソが、二回ついてますやん」

「てか、タヌキじゃなくて、妖狐じゃないの? どんだけ嫌いなの」

 と、碇賀元と賽賀忍がつっこむ。



   ーーー


※※ 宣伝『シン屋根裏の散歩者』より







 黄色からオレンジがかった午後の太陽光、それが作り出す陰影は青紫である。黄色と紫、一般的に補色、反対色などと呼ぶが、おたがいに相手の色を最も強く引き立たせる関係にある。完全な補色同士であれば、混色すると無彩色になって色味を失ってしまう。

 ――中略――

 アルル時代のゴッホの作品の根底には根強く補色の意識がある。原点はオランダ時代に遡るが、補色同士を混色していくと濁った感じが少ない状態で色味を失っていく。ゴッホは、補色関係にある二色を、色味を失う直前の段階でとどめて対比させると、鮮やかな色では出せない深みや渋さを伴って、なおかつお互いに輝かせあう性質を熟知していて、アルルでも少し彩度を落とした色を輝かす補色の効果を最大限活用している。


**『先駆者ゴッホ 印象派を超えて現代へ』(小林英樹)より




          (1)





「えっ――?」

「ぽよ」


 と、ドン・ヨンファとパク・ソユンの、驚いて見た先――

 まあ、パク・ソユンのほうは驚いてないというか、『ぼーっ』としているだけだろうが、その先には、【茶室の亭主】のような、【芥子からし色の和装の者】の姿が……

 ただ、その風体は、何とも“奇怪”なものだった。

 まるで、漫画か映画のキャラクターかのように、何とあろうことか――? “左右”で、姿が異なっていたるのだ。

 顔の半分のほうはというと、まるで、映画【SAW】の、デスゲームの仕掛け人というか主宰者こと【ジグソウ】の仮面の下の、初老の男のように……、まさに、【不気味な雰囲気の翁】とでも言うべき顔。

 だが、もう片方はというと……、こちらは顔と身体ともに、不気味な翁の“それ”とは【正反対】なものだった。

 和装を、まるでファッション・ショーの奇抜な衣装のようにはだけさせ、その顔はというと、清らかなベビーフェイスながら、1000人中1000人が美女と答えるであろう、絶世の美女の顔という……

 そのような、【左右で異なる顔、身体、衣装】が、鼻から鳩尾みぞおちを通る【中心線】で交わり、融合していた。

 そして、そんな【翁】の風体と雰囲気に、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりは、何か得体の知れない感覚を覚えるのも無理はなかった。

 まあ、【ぽよーん人間】と化しているパク・ソユンのほうは、たぶん、何も感じていないのだろうが。


「あっ……、貴方は、いったい……?」

 ドン・ヨンファは、恐る恐ると聞いてみた。

 もちろん、警戒も含めながら。

「ぽよ」

 と、パク・ソユンが、おまけ程度に【ぽよ】りつつ。

 そんなふたりのほうを、【翁】は、ジッ……と見て、

「私、か……?」

「え、ええ……」

「ぽよ。アンタ以外に、誰がいるぽよー」

「(ちょっ……!? ソユン!?)」

 と、半ばローテンションで、緊張感ゼロで言ってくるパク・ソユンに、ドン・ヨンファは小声で慌てる。

 それを、

「……」

 と、半分はジグソウのように、恐ろしくもおぞましい顔で、半分は美しい聖女のような顔で、翁は、ジッ……と、見ていたが……

 また、ドン・ヨンファが翁に尋ねる。

「その……、もしかして、この、【庵】の持ち主……、とかですか?」

 恐る恐る、口に出される質問に、

「……」

 と、翁は沈黙し、まだ答えない。

「……」

 ドン・ヨンファも、沈黙して待つ。

 その間、

 ――バクン、バクンッ――!!

 と、心拍数が上がり、何か気持ちの悪い汗が、タラリ……と出そうになるのを耐えつつ。


 そこへ、

「ちょっと、さ? ぽよ。意味深に、間を置かなくていいから、さ? ぽよ。なる早で、答えるぽよ」

「(だっ、からッ……!! や、やめなって!! 余計なこと言わないでって!! ソユン)」

 と、またもや緊張感なさそうに、半分煽りともとらえられないことを言ってくるパク・ソユンに、ドン・ヨンファは心底慌てる。

 そのように、ドタバタしながらも、ふたたび翁のほうを見ると、

「ふぅ……、仕方ない……」

 と、翁は、その表情をほとんど変えずも、『やれやれ』と言いながら、

「まず、だが……、私は、庵の、持ち主などではない……」

「え――?」

「ぽよ」

 と、翁の答えに、少なくともドン・ヨンファのほうは軽く驚きつつ、

「いや、ある意味――、私は、【この庵そのもの】、とでも言えよう……」

「【庵そのもの】、だって……?」

「ぽよ」

 ドン・ヨンファだけは、翁の言葉を復唱する。

 すると、

「はッ――!? もっ、もしかして、――」

 と、ドン・ヨンファはすぐに、【あること】を察した。

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