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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第三章 調査、深淵の庵

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29/44

29 そうして宿を出ては、【山手線】に乗り、【目黒】へと




「日子の島――、彦島」 

「日子の島……、ですか?」

 と、西京の言葉に、瑠璃光寺が聞き返した。

「まあ、『寄せる・引く』の引島からきたという説もあるけどね、日子の島――」

「……」

「つまりね、太陽神に関係がある――と、陰謀論やオカルト的な文脈で考えると、そういった仮説も立てることが、できるんじゃないかな?」

「そうですね。何か、そういうの、好きそうですよね。その、オカルト界隈の人たち」

 と、瑠璃光寺は答えつつ、続けて、

「すると、日本でいうと天照大御神、エジプトだと、ラー……でしたよね? 太陽神つながりで考えると、古代の日本と、古代エジプト王朝に、何らかのつながりがある――、と?」



   ーーー


※※宣伝『赤間・下関怪事変 怪石の呼び声』より








          (3)




 時間は、少し前後して――

 SPY探偵団のリーダー、某PVが10億再生されたオッサンに若干似たカン・ロウンだが、【ナニカの予感】がしていた。

 そうして宿を出ては、【山手線】に乗り、【目黒】へと向かった。

 すなわち、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりが泊まっている、Gホテルへと足を運んでいたのだ。

 その、坂を向かう道中も


 ――プル、ルルル……、プル、ルルル……


 と、ドン・ヨンファとパク・ソユンの両方に何度か電話をしてみるも、出ることはなかった。

 そのことが、少し気がかりではあった。

 もし、メシであれ、ポーカーであれ、はたまた情事的なナニカの最中だとしても、しつこく電話をすればたいてい、「は? 何? さっきから?」などとの、パク・ソユンの不機嫌そうな声が返ってくるはずである。

 たが、今回は、そうでなかった。

「……」

 カン・ロウンの表情が、すこし険しくなる。

 案の定というか、連絡が取れないパターンである。

 とりあえずら、Gホテルの、エントランスに入っていく。

 日本の、和の、【安土桃山】にも通ずる美を、そのまま、【世界】にしたような空間。 

 ただ、そんなホテルの、フロントへ行ったところで、

「宿泊されているお客様の、情報の守秘義務がありますので、お答えはできかねます」

「そう、ですか……」

 などと、返って来たのは、そのような返答だった。

 まあ、当然といえば当然のことだろう。

 いくら知人と名乗ったところで、パク・ソユンとドン・ヨンファの情報を、得れることはなかった。

 まあ、そんなことなど、いくら変わった人間とはいえ、カン・ロウンも分かっていた話ではあった。

 ただ、何となくの直観だけで、足を運んだのだ。

 そもそも、ふたりの身に何かが起きているという心配自体が、取り越し苦労の可能性も、ある。

 しかし、先の、【トランス島】などという得体の島に招待されたりするふたりのことを考慮するに、たとえ【異空間に誘われた】としても、不思議ではない。

「直観が、頼り、か……」

 カン・ロウンは呟く。


 いや、【それ】しか、いまは頼れるものがない。

 そうして、館内を歩いているうちに、自然と、【黄色の壁】の間にたどりついていた。

「おおっ……、これは……!?」

 カン・ロウンが、思わず息をのんだ。

 このカン・ロウンも、パク・ソユンとは違うベクトルで、物事にあまり動じることのない人間なのだが、その表情が、若干だが動いていた。

 まさに、ラグジュアリーでありながらも、荘厳さも兼ね備えた、ホテルに合うべき空間か――

 囲う【版築壁】の間と、中央に鎮座する、二畳ほどの【黄色の壁】の茶の間。

 田舎の荒壁風でいながらも、名だたる茶室の聚楽壁のように格式高い、【黄色の壁】――

「……」

 と、ふたりを探していることも忘れ、無意識にも、カン・ロウンは惹かれるように壁を観ていた。

 そうしながらも、流石に今は、ずっと壁をみているわけにはいかず、

「はっ――?」

 と、カン・ロウンは、まさに我に返った。

 その、忘却の間をおいて、

「いかん、いかん……。しかし、黄色の壁、か……」

 と、呟いてみた、【黄色の壁】というキーワード――

 その単語に、昨夜のもんじゃ焼き屋でキム・テヤンと話していたことが、フラッシュバックしてくる。

 確か、あのふたりは、この【黄色の壁】の間で、誰かに、会っていなかったか――?

 そのことが、今回の音信不通と、何か関係があるのだろうか?

 半ば、そのように考えていた。

 その時、



「ん、ん~……? おい、丸サングラスのおっちゃん? ドン・ヨンファと、パク・ソユンのふたりでも探しとるんけ?」



 と、背後から声がした。

「――!?」

 カン・ロウンが一瞬、驚きながらも、

「う、む……?」

 と、ゆっくりと、振り向いた。

 そこには、自分自身もいい歳したオッサンこと――、作務衣の上に黒のコートを羽織った、る・美祢八の姿があった。

「あ、アナタは――?」

「あん? 俺け?」

 カン・ロウンが、思わず聞いた。

 同時に、不思議な感覚もしていた。

 何故に? 自分が、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりを探していることを分かったのか――? 、と……

 まあ、この男が、ドン・ヨンファのいう、【る・美祢八】なる人物には間違いなさそうだが。


 そのように、思考する間をおきながら、

「アナタが……、ドン・ヨンファの知り合いの、美祢八さんか?」

「あ? あ、ん。俺が、その、【る・美祢八】やっちゃ」

 と、美祢八が名乗って答えるより早く、カン・ロウンは【美祢八】の名を出して聞いていた。

 その流れで、

「で? アンタは、あのふたりの、ドン・ヨンファとパク・ソユンの仲間け?」

「え、ええ。遅ればせながら、カン・ロウンと申します」

 と、カン・ロウンのほうも名乗った。

 そのように、互いに挨拶はそこそこに、

「――で? ロウンさんけ? ふたりが、どこに行ったのか知りたいんけ?」

「あ、ああ……」

 と、美祢八はカン・ロウンに聞きながら、メモ紙を差し出していた。

「ふたりは、【ここ】へ行っている――」

「ここ、は……?」

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