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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第三章 調査、深淵の庵

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28/44

28 特殊柔術のような形で拘束し、立ったままの状態で行うという、【高度なスタイルのカンチョー】




          (3)





 ――ファ、ァァン……


 として、まるで夢から目覚める時のように、場面は変わる。

 いや、むしろ、【時空】すらも、変わっているかもしれない。

 すなわち――

【黄色の壁】に溶けていったパク・ソユンとドン・ヨンファのふたりだが、現れてみたのは、【異空間】とでもいえる場だった。

 柱もなく、すべてが、【黄色の壁】に囲われた空間――

 また、その壁はというと、合わせ鏡のように無限に続く。

 幾何的にも、錯視効果や【だまし絵】のごとく、【異常な次元】。

「な、何だこれは……」

 ドン・ヨンファが、心底驚いて言った。

 その傍らから、

「ん? これが、どうしたの、ぽよ?」

 と、パク・ソユンが相変わらずの、すこし眠そうな顔で反応する。

「いや、ねぇ……、どうしたぽよって……、これが、どうもしてないように見えるかい?」

 と、まあ普通は、このドン・ヨンファのような反応をするものだろう。

 だが、以前の【Xパラダイス】の時でも、部屋に突然クリーチャーが現れた時でさえ、「ん? これがどうかしたの?」などとの反応をするくらいだから、今回も、そのような反応をしても仕方はなかった。

 まあ、良くいえば動じない、悪くいえば吞気すぎるというところだろうか。

 そうしていると、



「アッー――!?」



 と、突発的に、ふたたび、ドン・ヨンファが嬌声まじりの奇声をあげた。

 尻の、【尻の穴】に走る感触に崩れかけてしまいそうになりつつ、

「ぐぅぅ……!!」

 と、【痛気持ち良さの狭間】に耐え、なんとか振り向いてみる。

 見ると、そこには――、今回で二回目のカンチョーをする、パク・ソユンの姿があった。

 それも、こんどは、いつの間に背後をとったのか――? 

 特殊柔術のような形で拘束し、立ったままの状態で行うという、【高度なスタイルのカンチョー】である。

「も、もうっ!! まッ、た、何をするだッー!! ソユンッ!!」

 憤るドン・ヨンファに、

「ん? これでも、“もと”に戻らないぽよ」

 などど、パク・ソユンは言う。

「元に戻らないって、ねぇ……。何だい? 僕が、幻覚や何かを見てるから、【現実世界に引き戻す的なカンチョー】をしたわけかい?」

「そうぽよ」

「そうぽよって、ねぇ……。いや、君も、たぶん同じ、“これ”を見ているんだろう? この、無限回郎みたいな、【黄色の壁】を――。そしたら、僕だけ戻そうとしても、あんま、意味ないんじゃないかい? まあ、どっちかが、幻覚を見てない前提じゃないと成立しない魔法的なものなのか、別に両者が幻覚を見てても成立する魔法的なものかは、知らないけど」

「あっ? そっかぁ……、ぽよ」

「あ、そっかぁ、じゃないよ。もう」

 ドン・ヨンファは、やれやれと呆れる。 

 そうしながらも、この、【壁に溶けていったら異空間にいる】という状況は、考えるべきものであることには変わりなく、

「しかし、う~ん……? これは、どうしたことか?」

「どうなんだろね? ぽよ」

「どうなんだろね、じゃなくて……、ソユンも、ちゃんと考えてくれって」

 と、ドン・ヨンファはつっこんで、真面目に考える気の無いパク・ソユンを促しつつ、

「【何らかの異能力】によって、【幻覚】を見せられているというパターン……、まあ、それは、さっきのカンチョーで”否定された“”――、ことになるのか?」

「だから、意味あったじゃん、ぽよ。私が、アンタに【カンチョーをした意味】は、ぽよ」

「何だよ、その、【カンチョーをした意味】って……。まるで、【生きる意味】的な。それに? 異能力を解除できる力があるのかよ? 君のカンチョーには」

「ぽよ」

「……」

 と、例の【ぽよ】で返すパク・ソユンに、しけた顔でチーンと沈黙した。

 沈黙を挟んで、再び、

「まあ、幻覚の可能性は、たぶん低いとして置いておき、」

「ぽよ」

 と、相づちするパク・ソユンに、

「その、もうひとつの、仮説かな――? 本当に、【壁の力】によって、異空間に誘われた、のか――」

 と、ドン・ヨンファは言った。

「……」

 パク・ソユンが、今度は“ぽよ”らずに、沈黙する。

 昨夜に話したことが、ふと、フラッシュバックする。

【壁】が、【情報思念体のようなナニカ】である説。

 以って、【壁】が、異常な事象の【犯人】であるという説を――

 そうして、

「……」

「……」

 と、パク・ソユンとドン・ヨンファにふたりは、ともに沈黙した。

 その時だった。

 


「――ようこそ、お越しくださいました」



 との、背後からした声に、

「え、っ……?」

 ドン・ヨンファと、

「ぽ、よ?」

 と、パク・ソユンが、ゆるり……と振り向いた。

 そこには、


 ――ス、タッ……


 と、茶室の亭主とでもいうべきか――? 和装をした、【謎の者】の姿があった。

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