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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第三章 調査、深淵の庵

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27 その、【カンチョーのわけ】を話す


「松もっちゃんも、こんなところに、食いに来てるのか?」

 西京太郎が、こんなところ呼ばわりしつつ聞く。

「ああ、私も、瓦そば好きだかんね」

 と、松本清水子は答えつつ、通りかかった店員に、

「あっ? 私も、同じのちょうだい。それと、ドクターペッパー」

「かしこまりぃ!」

 と、注文を伝えた。

「ほんと、ドクターペッパー、好きだね。松もっちゃん」

「まあ、ね」

 松本は相槌しつつ、

「……」

 と、ジッ……と、西京太郎と瑠璃光寺玉のふたりのほうを見た。

「……?」

 瑠璃光寺と、

「ん? どうしたんだい?」

 と、西京が、キョトンとして聞くと、

「いや、さ? ほんと、パパ活してるみたいに見えるよな、てめぇら」



   ーーー


※※宣伝『赤間・下関怪事変 怪石の呼び声』より




 それで、【そんな壁】を見続けていると、


「ふぅ……、まるで、溶けてしまいそうだ……」


 と、何を思ったのか――? 

 ふと、ドン・ヨンファが、そうのたまわった。

 その顔はというと、まるで、半ば何かに、心というか魂というかを奪われるように、すこし虚ろな感じだった。

 いっぽう、相方のパク・ソユンはというと、

「ぽ、よ……」

 と、普段どおりの、すこし眠そうな、ジトッ……とした目で佇みながらも、ドン・ヨンファの様子に反応した。

「何か、さ? 僕の、【自我が溶けて】――、【壁】へと、一体になって、溶けてしまいそうな感じが、するんだ……」

 ドン・ヨンファが、言う。

 今のところは、その意志は保っている様子ではある。

「はぁ、何、言ってんの? ぽよ」

 パク・ソユンが、眉を動かして怪訝な顔をする。

「いや、何か、ね……? この、揺らめくような【黄色の壁】を見ていると、さ? まるで、【魔術】か、【幻術】にでも、かかってしまいそうな感じが、するんだよね……?」

 ドン・ヨンファは、意志が虚ろになりかけながらも、何とか、客観的に自分の状況をとらえようとしながらも答える。

【壁】に、【溶けてしまう】かもしれないような感覚――

 いや、すでに、溶けかかっているというべきか?

 ああ……、このまま、溶けて……

 壁へと、壁の向こうの世界へと、溶けてしまいたい……

 その結果、自分の【自我・存在が無に帰して】も、良い……

 ――と、ドン・ヨンファが、半ば【催眠状態に近いナニカ】のようになりかけた。

 その時、



 ――プッ、スッ――



「あっ――? ひゅぅぅん――!?」

 と、ドン・ヨンファは突如として!! 自身の尻の、【穴】に走った感覚に跳び起きた――!!

 自身のものでないナニカが、艶めかしくかつ、痛た気持ちよく尻の穴を貫通せんとする感覚――!!

「ぐう、う……!!」

 ドン・ヨンファは、尻をおさえて振り向く。

 すると、姿勢を低くして、【カンチョーの構え】をキメていたパク・ソユンの姿を確認した。

「ちょッ!? 何をするだァッー!? ソユンッ!!」

「何をするぽよーて、見たまんまの、【カンチョー】でしょ? ぽよ」

「いや、そりゃわかってんだいって!! 何で、こんなシチュエーションで、カンチョーするのかって!!」

「こんなシチュエーションって、何ぽよ?」

「いや、こうやって……、いちおう真面目にも調査をしているだろ!? カンチョーをする場面じゃないだろ!? う、ぐぐッ……」

 ドン・ヨンファは言いながら、尻の、穴のほうをおさえる。

「何、ぽよ? もしかして、ちょっと、うんこ漏らしたとか、ぽよ? 私の指に、匂いがついちゃうじゃない、ぽよ。やめてくれない、ぽよ」

「やめってくれないかって、君がッ!! やったんじゃないかッ!! いい加減にしろってんだよッ!!」

「あら、何、ぽよ? 何か、テヤンみたいな怒りかたしてる、ぽよ」

「いや、テヤンじゃなくても、誰だって怒るっての!!」

 ドン・ヨンファは憤りながらも、

「で? 何で、カンチョー何てしたんだい?」

 と、【カンチョーのわけ】を聞いた。

 パク・ソユンが、その、【カンチョーのわけ】を話す。

「いや、アンタが【溶けて】さ? 【壁の向こう】にでも、行っちゃいそうだからさ、ぽよ」

「何だい? そのための、カンチョーなのかよ?」

「ぽよ」

 と、頷くパク・ソユンに、

「まったく、何だよ、そ、――てッ!? そ、そう言うソユンもッ――!?」

 と、ドン・ヨンファは「何だそりゃ?」と、やれやれと呆れかけようとした時、【気がついた】――

「ぽよ?」

 キョトンとする、パク・ソユン。

 何とあろうことか――!? 

 そのパク・ソユンと、自身の身体が――!! 【黄色の壁】に、半分ほど【溶けこまん】としていたのだ!!

「ん? あっ――? ほんとだ、ぽよ」

「あ、ほんとだって、何!? その緊張感のない反応――!?」

 驚き慌てるドン・ヨンファが、言葉どおり緊張感というものを全く感じさせないパク・ソユンにつっこむ。

 ただ、その間にも、ふたりは【黄色の壁】へと溶けていく。

「うっ!? うわぁぁんー!!!」

 ドン・ヨンファが叫び声を上げ、【壁の中】というか、【向こうの世界】に連れていかれてしまった。

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