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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第三章 調査、深淵の庵

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24/44

24 【肩掛けをした、筋骨隆々でセクシーな市長】

※※ 宣伝『トランス島奇譚』より



「まあ、話を戻すと……、方法論の違いやセンスの違い、エロ・グロとかのアンモラルが許容されているかの違いこそあれど、文明としてやってるいることは一緒じゃないかな? 資本主義も、社会主義も?」

「ああ、エロ・グロと堕落は重要よ!」

「――!」

 と、パク・ソユンの強調に、ドン・ヨンファがビクッ――! となる。

「冷戦で、ソ連側が負けたのは、たぶん、エログロのアンモラルがあまり許されなかったからよ。わりといいかげんに計画経済してたくせに、禁欲的な建前だけは融通が利かないという」

「う、うん……、そうだね」







 飛濤亭の壁は引き摺った跡がよくでています。なぜ引き摺り鏝で塗るかというと、これは左官の逃げですけど、こういう寸法の長いすさが入っていると、お座敷の壁のように真っ直ぐきれいに塗れませんから、ごまかすために引き摺っているんです。引き摺りの模様をつけて、わざと壁の表面をでこぼこに仕上げます。定規を当てたらよくわかります。「壁を真っ直ぐに塗れ」という定義に背いているんです。しかし、侘びの気持ちによくあっていると思います。


**『京の左官親方が語る 楽しき土壁』(佐藤嘉一郎)より



     ―――――



 このようにして神を殺して、神の座についたはずの理性は、その背後に隠し持っている欲望の無意識的な力によって、その至高の地位から追い落とされた。それではこの理性に代わって人間の心を支配しているものは何だろうか。フロイトはそれを無意識と名づけた。フロイトの提起したこの無意識という概念は、それまでの伝統的な近代哲学を揺るがす力を以っていた。

 デカルトがもっとも確実なもの、ただ一つだけ人間が確実であると確信することのできるものだった「コギト」、すなわち「考えるわたし」の確実さは、フロイトによると人間の自己のごく一部にすぎず、わたしたちは「考えることのできないもの」によって支配されているのである。


**『フロイト入門』(中山元)より




          (1)



 

 翌日になって――

 パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりは、午前から、例の、【噂の茶室】というか【庵】のあるとされる場所へと出かけていた。

 Gホテルのある、目黒からも近い、超高層に囲まれた都心。

 そんな中にありながらも、幽谷谷や、【市中の山居】とでもいうべき、知る人ぞ知る空間――

 “そこ”へ、足を踏み入れていた。


「はぇぇ……」


 まず、ドン・ヨンファが感心して、言葉にならない声を漏らし

「ぽよ……」

 と続けて、【ぽよーん人間】ことパク・ソユンが、いつものジトッ……とした、すこし眠そうな目で、あいかわらずの【ぽよ】を発する。

「こんな場所が、東京の真ん中にあるなんてね」

「ぽよ」

 ドン・ヨンファが言って、パク・ソユンが相づちする。

 目の前には、やや薄暗くも、白壁と竹林で囲まれた空間が――

 苔むした中に砂利が敷かれ、さながら、名のある神社の参道のようでもある。

「何か、【ラスボス】でも居そうな感じがする、ぽよ」

「へ? ラスボス?」

 と、いきなり言ったパク・ソユンに、ドン・ヨンファがキョトンとしつつ、

「ほら? 昔あったじゃない、ぽよ? 【歩いて、スクロールして戦う系のゲーム】、ぽよ」

 と、ゲーマーというほどではないがゲームはするほうの人間、パク・ソユンが答える。

「歩いてスクロールして戦う、某C社のFのゲーム、ぽよ」

「ん、ん~……? ああ……? 何か、あった気がするね。そんなゲーム」

「ほら、いたじゃない? ぽよ。【肩掛けをした、筋骨隆々でセクシーな市長】の、ぽよ」

「ああ、いたね。しかし、セクシー、なのかい? それは?」

「ぽよ」

「……」

 と、ドン・ヨンファは聞くも、【ぽよ】の返答に、ふたたび沈黙する。

 その思うところ、「だから、ぽよで相槌やめてくれって。どっちか分かりづらいんだって」と言いたいところだが、もうたぶん【ぽよ】をやめることはないので、諦めて黙ることにした。


「しかし、ボスキャラの、いそうな場所か……?」

「ぽよ」

「和の、格式高い空間――。でもまあ、日本の、【暴れん坊将軍】だったかい? だいたい、そんなボスや悪代官ってのは、【こんなとこ】に住んでたりするもんな」

「ぽよ。世の黒幕だったりというのは、案外、【こんな場所の深淵】に潜んでいるものかもね、ぽよ」

「ふぅーん……」

 などと、ふたりは軽く会話を交わしつつも、進んでいく。

 すると、相変わらず少し鬱蒼としながらも、【侘び寂のある幽谷谷の庭園】とでもいうべき場所に出る。

 苔むした中に、面白く配置された【飛び石】や、石灯篭。

 まさに、名のある【茶室】が、奥にでも佇んでそうな雰囲気がある。

「へぇ……。ちゃんと、手入れされているね。人の気配は、なさそうだけど」

 ドン・ヨンファが、また感心して言う。

 すると、


「ぽ、よ……」


「ん? どしたの?」

 と、パク・ソユンが、何か意味深そうに呟いた。

 まあ、相変わらずの【ぽよ】だが……

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