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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第二章 東京、Gホテルにて

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23/44

23 【ほんの~じ~】

※※ 宣伝『シン屋根裏の散歩者』より。本作よりこっちを読んでくれ〜い。


     ーーー


 とはいえ、ちょこちょこと虫歯もできているのだが、これも最近通い始めた歯科により治療、ひと目見ただけでは健康で正常な歯と全く分からないように”施工“されていた。

 その歯科の名は、GOGO郷田歯科医院ーー

 都内でも、有名な歯科医院だ。

 理事長の郷田という男だが、サーファーのような色黒で、かつロン毛のイケメン。

「へーきへーき! すっげぇ、白くなるから!」との安心感あふれる言葉とともに、技術面と、経営面でもなかなか腕の立つカリスマだった。





 すると、



「ほんの~じ~……、ぽよ」



 と、突然に……、パク・ソユンが【謎の言葉】を発した。

「は?」

 ドン・ヨンファが、キョトンとする。

 まあ、たぶん、【本能寺】と言ったのだろうが。

「へ? 何て?」

「本能寺って言ったの、ぽよ」

「いや、何でよ?」

「ぽよ。この中の、動画にあるぽよ」

 と、パク・ソユンは指す。

 確かに、焼殺、【炎上】系の動画の中に紛れて、歴史コンテンツの、【本能寺の変】の解説動画があった。

 そのカリスマ性から天下を取った、誰もがその名を知る、織田信長。

 商業とともに、茶の湯の文化の発展にも貢献をしたそうだが、豪奢で見せびらかすような趣味であったようで、“それ”が、京都の茶人や文化人からはひんしゅくを買ったらしい。

 まあ、そんな信長だが、本能寺の変にて、炎に包まれ、暗殺されることになる。

「この信長は、本能寺の辺の際、周囲を……、恐らく四方を、さながら【壁のような炎】に覆われたのかもしれないね」

「ぽよ」

「【壁】というものが、もし、その人物の、内面深くの【写像】だとすると……、まるで、織田信長という人間の業が、信長自身を吞み込もうとしている――、と例えることもできようか」

「だから? 何、ぽよ? 【写像】って、ぽよ?」

「ああ、もういいって……、その、論破の人の真似のナニカは」

 と、ふたたび、【何すか? 写像って?】のネタをするパク・ソユンを、ドン・ヨンファは鬱陶しがる。


 また、こんどは、

「じゃあ、もし、ぽよ? その、【黄色の壁】っていうのが、さ? ぽよ。本能寺の炎のように、入って来た者たちを吞み込もうとするなら、さ? ぽよ。【紫色の炎】で、それを打ち消すことができるんじゃない? ぽよ」

 と、パク・ソユンが、疑問を言葉にして聞いてきた。

「紫で打ち消す――、ってねぇ……。あ、あ……? 【補色】だから、かい?」

「ぽよ」

「それで、【ほんの〜じ〜】とか、言ったのかい?」

「ぽよ」

「……」

 と、ドン・ヨンファは、沈黙した。

 そうしながらも、

「まあ、いいや……。明日に備えて、僕は、そろそろ寝るよ」

「ぽよ」

 と、ドン・ヨンファは言葉どおり、やわやわ、寝る準備を始めようとした。


 そのドン・ヨンファは、また言う。

「とりあえず、『ああでもない、こうでもない』と話はしたけどさ……、特に、何も起きないとは――、いや、起きなければいいんだけど、と思うね。まあ、それはそれで、“つまらない”かもしれないけどさ」

「ぽよ」

「まあ、何も起きてほしくなければ、そもそも、【行かない】という選択肢が、いちばん、【期待値が高い】んだろうけどね」

「そうね、ぽよ。でもまあ、私は、“何か起きてほしいほうの期待値”を追う、ぽよ」

「何か起きてほしい期待値って、ねぇ……。それで、いままで、散々な目に合ってきたじゃないか」

 と、ドン・ヨンファはつっこんだ。

 確かに、直近の記憶にあるだけでも、チェーンソーで手首をぶった切られたり、ギンピギンピの茶やフッ酸、硫酸を飲まされたり……、またここ最近では、【人体を変形させる力】によって肋骨を折られたり、腕が【クパァッ】――と、逝ってしまったりと……、確かに、散々な目にあったきたわけである。

「確かに、ぽよ」

「まったく。次は、【どんな目に合う】つもりだよ? ソユンは?」

「そうね? ぽよ。たぶん、首が“あぼーん”したりする、とか――? ぽよ」

「いや、それ? 自分で【フラグ】を立てないかい?」



          ******



 だいたい同じころ――

 同じく都内の、【深淵】から【望むもの】が居た。

 江戸のころより、山谷で構成される東京。

【幽谷の深淵のような場所】が残っていても、不思議ではない。

 高層ビルの溢れる大都市となった現代でも、【市中の山居】を体現するべき茶室や庵のある場所として、理想的ともいえる。

 そして、その深淵から望むものは、“思う”。

 さて、また、【客人】が来るだろう。

 すると、私は、“そのため”の準備をしようか――?

 いや、そんなものは、いらないか……

 ただ、“迎えてみる”だけだ。

 そして、我が“【壁】に適う者”であるかどうか――? 

 ただ、それだけである。


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