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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第二章 東京、Gホテルにて

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22 何ぽよ? 【写像】って?

 なお、つまみには、【ごま油をかけた海苔塩ごま油味のポテトチップス】と、ハーゲンのストロベリー・アイスという謎の組み合わせという。

 そうして、グイグイと飲みつつ、


 ――スッ、コーン……!!


 と、飲み干して、冷蔵庫にもう一本取りに行く。

「え? もう、一本開けたの?」

「ぽよ」

 キョトンとするドン・ヨンファに、パク・ソユンは答えながら、栓を開ける。

 まあ、さすがに、今度はゆっくり飲むようではあるが。

「……」

 ドン・ヨンファは、その、パク・ソユンのほうを見た。

 少しはだけたガウンから、グラマラスというほどではないものの、スタイルの良いパク・ソユンの肌がのぞく。

 さすがは、DJ兼モデルというべきか――

 いまは、【ぽよーん人間】と化しているものの、トップクラスの美人には間違いない。

 ただ、

「ん? どうした、ぽよ?」

 と、ストロベリーアイスを咥えたパク・ソユンが、視線に気づいた。

「いや、あんまり、エロくない……、と思って」

「どゆこと、ぽよ?」

「まあ、その、美人は三日で飽きるといったもので……、確かに、顔が良いと、かえってあんまりエロくなくなるものだな……と、実感して」

「ぽよ、」


 そのように、パク・ソユンはビールを飲みつつ、ドン・ヨンファはオレンジジュースでも飲みながら、ダラダラと過ごす。

「しかし、さぁ……?」

 と、ドン・ヨンファが話を振る。

「ぽよ?」

「もし、その、【黄色の壁】の力ってのが……、何か、人を狂わせるような力なのか――?」

「……」

「それとも、何か、【情報思念体というべきたぐい】のものなのかな? ナニカ【異質な存在】の力によって、異空間に連れ去れる――、とかいう代物だとしたら……」

「ぽよ……」

「そもそも、【そんな場所】に、足を踏み入れて大丈夫なのか?」

 と、ドン・ヨンファは疑問を言葉にするとともに、そえ懸念した。

「さあ……? どう、ぽよ? 行ってみてからじゃないと、分からないぽよ」

「まあ、そりゃそうだけどさ……、【仮に】の話なんだけど、もしさ?」

「ぽよ」

「美祢八と話したみたいに、その、【壁】が、噂の怪現象の【犯人】だとしたら……」 

「……」

「どういった経緯で? 壁が、その、情報思念体のようなナニカになって……、そのような力を持つに至ったのか――?」

「ぽよ」

「それから、僕は、ね? この【黄色】っていうのが、気になってね。ソユンも、【ゴッホ】の作品くらい見たことあるだろ? 美術館にしろ、ネットや本にしろ」

「ぽよ」

「……」

 と、話そうとした矢先、すべて【ぽよ】で返すパク・ソユンに、ドン・ヨンファは沈黙しながらも、

「どっちの【ぽよ】だよ……。それに、さっきから全部【ぽよ】で返してるじゃないか、ソユン」

「あと、さ? ぽよ。何か、【檸檬が爆発する】とかいう、【日本の小説】が無かったぽよ?」

 と、呆れるドン・ヨンファをスルーしつつ、パク・ソユンは話を展開させて、

「ん……? ああ、何か、あったね。そんな作品」

「まあ、今回は、あっちの、【檸檬系の黄色】じゃなさそうだけど、ぽよ」

「うん。とりあえず、ゴッホの黄色についてだね」

 と、ふたりは話を進めていく。


「ちなみに、ゴッホって、あの色彩に、さ? 【グレー】をけっこう用いているらしくてね」

「じゃあ、ぽよ? あの、【ひまわり】とかの黄色も、グレーを混ぜてあるってこと、ぽよ?」

「たぶん、そうだろうね」

「【黄色】という、明るく陽気な色にも関わらず、何ともいえない【陰鬱感】――。内面の、深層と表層の、言語化するにも複雑な心理状態の【写像】のような黄色だね」

「何ぽよ? 【写像】って?」

「何だよ、その、どっかで聞いたようなツッコミは……」

 と、ドン・ヨンファは、ツッコミにつっこみつつ、

「しかし、もし、噂の【黄色の壁】というのが、ゴッホの黄色に通ずるような壁だとしたら……、ある意味、自分の内面と向き合う茶室、庵の【壁】としては、整合しているのかもしれないね」

「ぽよ」

 と、ポテチの海苔が口周りにつきながら、パク・ソユンが答えた。

 また、ドン・ヨンファは、そんなパク・ソユンのそばに寄って、

「てか? また、何視てんの?」

 と、気づいて見た先――

 開いたパソコンの画面の、多重に開かれたウインドウには、今回は【燃える系】の動画――

 火事や大火、焼殺や焼死などのグロ動画や解説動画と、【ある意味で炎上系】のコンテンツが流れていた。

 中には、火炎放射器の解説などもあったが……

「何で? また、こんな、【炎上系】のコンテンツなんか見てんの?」

「ぽよ? 視てたら、たまたま、この【火炎放射器】の動画がでてきてさ、ぽよ」

「はぁ、」

 ドン・ヨンファは顔をしかめながらも、動画に映る【炎】を見た。

 ジッ……と、見ているうちに、視界がゆらゆらと揺らめいてくる。

 酒が残っているせいもあるのだろうか――? 

 ぐわんと頭が揺れる感じがしつつ、脳内で自動的に、動画の【炎】と、いびつうごめく【ゴッホの黄色】とが重なった。

「うっ……」

 ドン・ヨンファは思わず、声に出す。

「どした、ぽよ?」

「いや……、動画の炎を、観てたらさ……? その、錯視の効果、みたいなものかな? ちょっと、変な感じになってきて」

「いや、アンタはいつも変な感じじゃん、ぽよ」

「うるさいな」

 と、ドン・ヨンファは答えつつ、

「でも、さ? ゴッホの黄色ってのも、こんな、炎みたいな感じじゃない?」

「ぽよ」

 と、曖昧な相づちするパク・ソユンのパソコンを触って、ゴッホの作品を検索し、画像を出してやる。

 確かに、そこに映るは、揺らめく炎のような黄色――

「まるで、黄色に飲まれそうだ……。もしかすると、その【黄色の壁】ってのも、そんな感じなの、か……?」

 ドン・ヨンファが、そう言ってみた。

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