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【黄色の壁】  作者: 石田ヨネ
第二章 東京、Gホテルにて

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18/44

18 じゃあ? ゲゲゲの鬼太郎の【ぬりかべ】は、あいつは何なんよ?

 

 ――昼のこと。

「――【黄色の壁】、だって?」

 と、黄色の壁を前にして、ドン・ヨンファが言って、

「ぽよ」

 と、パク・ソユンが続ける。

「ああ。“こんなもん”でなくて……、もっと、深みと、【謎】のある代物のな――」

 る・美祢八が、“こんなもん呼ばわり”しつつ答える。

 その美祢八が、彼らに伝えること――

 このGホテルからも近い都内の某所、とある竹林の中の【数寄屋】に、このGホテルの大広間と同じく、黄色の壁があるとのことだった。

「謎、ねぇ……」

 ドン・ヨンファが、【謎】とのワードに反応し、

「どんな謎、ぽよ?」

 と、パク・ソユンが、続けて聞いた。

「ん、んー……? まあ、噂レベルでしか聞いてないんやけどね、奇妙な噂があってな」

「奇妙な噂、だって?」

「ぽよ?」

「ああ……。たぶんに、アンタたち好みの、都市伝説的な噂やっちゃ」

 と、美祢八はそう答えながら、続けて説明する。


「どうやら、その数寄屋の壁というのは、一面すべて、【黄色の壁】のようでねい、」

「うん」

「ぽよ」

「まあ、その壁に取り囲まれた中にいると、まるで幻術のようにしてな――、【壁の向こうの異界】に、神隠しのように取り込まれてしまい、帰ってこれなくなるっちゅう噂よ」

「はぁ、」

「ぽよ」

 と、相づちして、いったんの間を置いて、

「それは、その数寄屋の持ち主が、かな? 何か、怪人のような異能力者で、ヤバいヤツとか、かい?」

「さあ、のう……? そういうパターンかもしれぬし……、もしくは、【壁自体】が、まるで、何け――? その、【情報思念体】やったっけ? 何か、そんなSFに出てくる感じの【存在】で、数寄屋に足を踏み入れた人間を、まるで、異世界に連れていくかのように……、【壁の向こう】に連れて行ってしまうのかも、しれんのう」

「スキヤに足を踏み入れた人間を、異界に連れていく――、ぽよ」

「うるせぇぞ、ぽよーん人間。牛丼のほうじゃねぇんだよ」

 美祢八が、つっこみながらも、

「まあ、異界に連れていく神隠し的なものなのか――? もしくは、訪れた人間を狂わせてしまい、“それ”を以って、『壁の向こうから帰ってこれなくなる』って表現しているだけなのか――? 知らなんだ、けどな」

 と、続きを話して、補足した。

「うーん……?」

 ドン・ヨンファが、何か考える仕草で、口に手を当てる。

 その傍らから、

「ぽ、よ……?」

 と、パク・ソユンが言うと、

「……」

 ドン・ヨンファと、

「……」

 と、美祢八が、振り向きながらに沈黙した。

 その仏頂面の云わんとするところ、「だから、その【ぽよ】は、相づちの【ぽよ】なのか、何か引っかかることがあるときの【ぽよ】なのか、どっちだよ……」と、つっこみたかったが。


 仕方なく、

「何か、あったのかい? ソユン?」

 と、ドン・ヨンファが、パク・ソユンの【ぽよ】を中継ぎして聞く、

「ぽよ。何か、さ、ぽよ? 【どっかで見たネタ】じゃない、ぽよ? その、【壁】が、訪れた人間に、怪異だったり……、いや、怪異じゃないぽよね。その、【スタンド能力的なナニカ】を使って、殺そうとするとかいう、マンガ……、ぽよ」

「あん? スタンド能力け? そんな、もろにジョジョの、」

 と、美祢八は怪訝な顔で反応しつつ、 

「ああ……? 短編で、何かそんなネタ、あった気がするのう」

 と、思い出した。

 流れで、スマホという、現代文明の利器で検索してみる。

 短編の主人公氏が、ある噂を聞いて、訪れた集落。

 そこで、それこそスタンド能力と思しき異常現象や使いの怪人が主人公たちを襲うのだが、その力を発動した主というのが、普段われわれが想像するような人間タイプの敵キャラなどではなくて、どうやら【壁】だったらしいのだ。

「ほうほう……、すると、すなわち、【敵は壁】――という、たぶんに、稀有な話だね」

 と、ドン・ヨンファが感心するも、

「まあ、そうやけど……、じゃあ? ゲゲゲの鬼太郎の【ぬりかべ】は、あいつは何なんよ? って話になってこんけ?」

「あっ……? そっかぁ……」

 と、美祢八に言われ、思い出した。

「何、ぽよ? 実態が在るのか、無いのかの違いとかじゃ、ないぽよ?」

「それに、鬼太郎のほうは、けっこうパワー系だった気がするしなぁ……。ジョジョのほうは、幻術系とか、スタンド系――? に、なるのかな? よく分からないけど」

 などと、ぬりかべについて話しながらも、

「まあ、いずれにしろ、やっちゃ……、アンタらが、この【黄色の壁】の噂ってのが気になるなら、行って、見てみるしかなかろう。とりあえず、場所は、ここみたいだ――」

 と、美祢八は、何かの裏紙に書かれた地図のメモを、ふたりに渡した。

「あれ? けっこう、ここから近い場所なんだ」

「ああ、そうなんよ」

 と、メモにかかれた場所を見るに、その【黄色の壁】の場所は、このGホテルから遠くない、山手線圏内だった。

「まさか、こんな場所が、都心の近くにあるなんてね……」

「まあ、都会の中にも、意外な場所があるんやろうね」

 ドン・ヨンファは、美祢八と話しつつ、

「そう言えば、さ? 美祢八」

「ん? 何け?」

「たぶん、韓国の近く――、になるのかな? その、【Ⅹパラダイス】って島の、ホテルの壁を手掛けたかい? いや、全然、違うならいいんだけど」

 と、ふと思い出したのか、話題を変えて聞いてみた。

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