表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぬとっと何かを


ぬとっと何かを踏んだ。

「ひゃっ!」太郎は慌てて飛び退く。


午後7時。もうあたりは真っ暗。

匂いはしないからアレではないようだが。


普段は暗くなってから外へは出ないようにしているが、

町内会の役員を押し付けられ、無料での労働を

やらなくてはならなかった。


太郎は大阪の人口密集地に生まれ育ったが、

周りの柄、治安の悪さに嫌になって

田舎に引っ越した。


しかしアパートでは周りの騒音がうるさかった。

そこで静かな地区の古民家を格安で借りた。


条件として役員を引き受けて雑用をすること。

舗装されていない田舎道を歩いて自宅に帰ろうとしていた。


2 


暗くて何を踏んでしまったかは見えない。

太郎は近眼で鳥目。メガネをかけると頭痛がするのでかけない。


自動車の運転もできないし仕事で失敗ばかりでクビになっていた。

すっかり世の中に絶望していた。


生きていくための第一条件、お金を稼ぐ事ができなかった。

早く死んで楽になりたい、が口癖の超暗い性格。


結局、横に寄って歩き出した。

自宅の古民家に到着。


まずは虫が侵入していないかを点検して。

田舎に望んで住んだくせに反風水師、自然大嫌いだった。


サラダ、弁当、インスタント味噌汁で夕食。電子レンジで温めるだけ。

図書館の本を読んでると。


トントントン、とドアがノックされる。

インターホンは付いていない。


町民からの相談だろうか。

「あ、はい。どちらさまでしょう?」

太郎は自分を貴族と思い込んでるので、ていねいに応対した。


大阪の人口密集地のスラム街では悪人が多いので

不用意にドアを開けることは無い。


しかしここでは町民全員が顔見知り。

太郎がよそ者。ここは親切に振る舞うべき。


ドアを開けて驚いた。

目の覚めるような美女が立っていた。


まるで小沢真珠とジェニファー・コネリーを

AI合成したような絶世の容姿。25歳バージョン。

服も個性的で素晴らしい。まるで薔薇の妖精!



私「どうしました?」


美女

「私は近所に住んでいるものです。

実は夫が、煙草を買ってくる、と言って昼ごろに家を出て

夜になっても帰らなくて探し歩いているのです。

夫の行方をご存知ありませんか?」


「いえ、知りませんが」

「あら、でも夫の匂いをたどってきたんですが」


「え?」

「やはり。あなたから夫の匂いがします、しかも血の臭いが」


すぐ近くに美女が寄ってきた。

すばらしい香りがして。


「えーと、近いですよ。私は嬉しいですが」

伸ばしてきた相手の手をどかそうと、手で触ると。


ザワッ

まるで濡れ雑巾をさわったような不気味な感触。


「あれ?」

急にひどい悪臭。


カーテンを開けたように視界がゆがんで。

目の前にいるのは人より大きいどぶねずみ!


牙が並んだ大口を開けて太郎の顔にがぶりと噛み付き、

首のところで食いちぎった!



「うわあああっ・・・・あれ?」

古民家の天井が見える。

チュン、チュン、と雀の声。外は明るい。


いつのまにか朝。

居間で眠ってしまったらしい。

どこにも怪我はしていない。


「今のは夢か。なんと水鳥拳、いや、なんという事か。

 つまりは・・・」


外に出て、何かを踏んだ場所へ急いだ。


そこには無残に潰れたネズミの死骸が・・・

無くて、潰れた蜜柑ミカンが落ちていた。


「・・・・・」

隣家の敷地から枝が伸びていてそれに

成ったミカンが落ちたらしい。


「・・・・・・えーと・・・・これは・・・

 配偶者の女性は、妻、女房、夫人・・・すると

「ブルース・リーの奥さん」、だな。

リー婦人、りーふじん、理不尽っ!」

手本は小学館文庫「超短編!大どんでん返しスペシャル」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ