悪意を暴く
その後、戻ったアレクシはルーヴルナの件で宰相を調べ、その中で他の数々の不正も明らかになり大手柄となった。
「くそっ…今までバレなかったのに、なぜ急に!」
「色々と裏で手を回して、悪事を働いてくれたようだね」
「私の手口は完璧だったはずなのに…!」
「そうだね、なかなか闇が深い事件だったよ。本当によくもやってくれたものだ。許さないよ」
「ぐうぅっ!!!」
宰相を断罪し牢獄に入れると新しい宰相はアレクシが選び抜き、不正の横行は綺麗さっぱりと無くなった。
「兄上、本当にこれで大丈夫か?」
「今度こそ大丈夫だよ。新しい宰相は潔癖と言えるほど不正を嫌う男だからね」
「政治的な話もそうだけど、ルーヴルナのこと」
「そうだね…ルーヴルナは騙されやすいというか、純粋過ぎる子のようだから」
「心配だよな」
アレクシはその後もルーヴルナにきちんと使用人がついているか監視のつもりでアロイスと共にルーヴルナの元へ通うことにした。
だがそのうちにルーヴルナの余りの無邪気さに段々と絆されていった。
「アレクシお兄様、アロイスお兄様、大好き!」
「私もだよ、ルーヴルナ」
「俺も俺も!大好きだぞ、ルーヴルナ」
「えへへ!」
ルーヴルナは大好きな家族と共に穏やかなおやつの時間を過ごせるようになって喜色満面だ。
そこにアロイスが乳母の話も持ち出す。
「ばあやも元気になってよかったな」
「うん!ばあやを治すのに、アレクシお兄様とアロイスお兄様が頑張ってくれたんでしょう?ありがとう!」
「私は腕のいい医者を紹介しただけだよ」
「俺も金を出しただけだしな」
「でもばあやはお兄様たちのおかげだって喜んでたよ!」
乳母を助けてくれた兄二人にニコニコのルーヴルナ。
そんなルーヴルナに褒められて満更でもないアレクシとアロイス。
少しずつ少しずつ距離を縮めていく三人。
一度受け入れてしまえば、腹違いとはいえ末の妹というのは可愛い。
少しずつ妹に甘い兄になるアレクシとアロイスだった。
「でも、アマデューお兄様は来てくれないね」
「まあ、あいつも色々複雑だしな」
「アマデューも混ざってくれればもっと楽しそうだけど、無理強いはできないからね」
「そっかぁ」
無理強いはできないと聞いて、無理に呼びたいわけでなく仲良く過ごしたいルーヴルナはしょぼんとしつつも仕方がないと飲み込んだ。
そんなルーヴルナにアレクシとアロイスはアマデューも近々誘うべきか、でも無理強いはできないし…と頭を悩ませた。
そんな二人に気づかないルーヴルナは、のんびりとアマデューが来ないものか待つことにした。
来ないだろうとは思ったが、期待は捨てずに待つことを決めたルーヴルナ。
アマデューは来てくれるだろうか。