街に出てみたらとある部族の人が困っていたので助けてあげたのに嫌われるが、またも押せ押せでゴリゴリに行ったら信用を勝ち取った
ルーヴルナがあんまりにも優秀すぎて教えることが早々に無くなってしまうことを懸念したパラケルススは、ルーヴルナに広い世界を見せることを授業とすることにした。
「じゃあルナ姫殿下。今日は授業として街の様子を見に行ってみよう」
「うん!」
「まずは王宮付近の街からだね」
「はーい!」
ということでパラケルススに連れられて、ルーヴルナは街を見に行くことになった。
「わあ、街ってこんな感じなんだ」
「活気あふれるだろう?」
「うん!」
「王宮付近の街は、この国で一番栄えているんだよ」
「わあ、すごい!」
お忍びとはいえ、フェリクスとニュイ、ギルベルトを連れてのお出かけだが…幸い誰にもバレずに観光…もとい見学ができたルーヴルナ。
出店での食べ物や商品の買い方や、街の雰囲気など様々なことをルーヴルナなりに学んだ。
そこまでは良かったのだが、十分に色々学べてさあ帰ろうという時に事件が起こった。
どうにもリコリスという部族の人が、差別を受けたらしくキレてお互い喧嘩になったらしい。
ルーヴルナは自分へ向けられる悪意には疎いが、他人に向けられた悪意には敏感だった。
「あれが〝差別〟?」
「そうだよ、ルナ姫殿下」
「じゃあちょっと止めてくるね」
「あ、待って、私も行くよ」
前に出ていくルーヴルナとフェリクスとニュイ。
ギルベルトとパラケルススも急いで後を追った。
「はい、ストップ」
「なんだいお嬢ちゃん、今お取り込み中だから…」
「私、ルナ。ルーヴルナ・ヴィクトリア・アルヴィア。この国のお姫様だよ」
ルーヴルナの言葉に素早く反応して、ギルベルトが王家の紋章の入ったバッジをかざす。
すると部族のその場にいた全員が平伏した。
「もうリコリス族の人を虐めちゃダメだよ。みんなもダメだからね」
「「「「「はい!かしこまりました姫殿下!!!」」」」」
こうしてルーヴルナの鶴の一言で、騒動はおさまった。
「じゃあみんなもう自由にしていいよ」
「「「「「はい、姫殿下!!!」」」」」
街の人たちは平伏していたのを解き、再び動き出す。
しかし、リコリス族の男の子…コウはその場から動かない。
「…?どうしたの?」
「礼は言わないぞ」
「うん」
こくんと頷くだけのルーヴルナに、コウは驚いた。
「…お前、この国の王族だろう。お前達が勝手にリコリス族の土地を自分たちの領地だとしたせいで、リコリス族は弱い立場に置かれてるんだ」
「そうなの?ごめんね」
「ごめんで済むか!」
困っていたので助けてあげたのに嫌われた。
だがルーヴルナはいつもの如く嫌われていると気付いていない。
それでも部族差別のことで怒られているのはわかる。
だがルーヴルナは、またも押せ押せでゴリゴリに行った。
「でも、リコリス族の人たちとも仲良くなりたいな」
「は…?」
「だって、リコリス族の人ってみんな貴方みたいに素敵な人なんでしょう?じゃあ仲良くなりたい!」
「お前何言って…」
「だって、民族衣装のそれ、素敵だよ!綺麗!」
コウの着ている民族衣装。
コウの家族が機織りして作ったものだ。
コウにとっては大事な誇りだ。
「…お前、王族にしてはいい奴だな。この民族衣装は、リコリス織といってうちの秘伝の織物で作ったものだ。部族の誇りだ」
「そうなんだ、素敵だね!」
「部族の誇りを、家族の頑張りを褒めてくれてありがとう。さっきは失礼な態度をとって悪かった。俺はリコリス族のコウ。よろしくな」
「よろしくね、コウ!私はルーヴルナ!」
「それはもうさっき聞いた。ルナ、本当にありがとう」
こうしてルーヴルナはリコリス族との繋がりを持った。
そして人々の間では、慈悲深い姫君はリコリス族を尊重しているためリコリス族を蔑ろにしてはいけないと有名になった。
結果リコリス族への差別的な言動は意識的に減っていき、コウはルーヴルナに心から感謝することになった。




