魔術の授業
「では姫君。今日は使い魔と精霊と共に魔術を使ってみましょう」
「はい、ディオン先生!」
今日の魔術の授業では、フェリクスとニュイの力を借りて大魔術を使ってみようということになった。
王宮には王族が魔術を練習するための特別な部屋があり、そこでなら強力な結界が張られているためどれだけ大規模な魔術を使っても外に影響は出ない。
「では、まずは幻術から行きましょう」
「はい!」
ルーヴルナはフェリクスを通じて魔力を供給し、ニュイに幻術を見せてもらう。
まるで不思議の国のアリスのような世界観の、異質な空間が部屋に広がった。
「お見事です」
「わーい!」
ディオンは心の中で驚き絶叫した。
こんな短期間でここまで完璧に幻術を扱えるなど前代未聞だ、馬鹿げている!!!
しかし実際、目の前の人物は完璧に幻術を使いこなしていた。
今も幻術のテーブルの上に置かれた幻術のお菓子を美味しい美味しいと独り占めしている。
「姫君、そろそろ幻術を解いて構いませんよ」
「はーい」
幻術が解かれると、元の部屋にあっという間に戻った。
幻術の名残はない。
末恐ろしい、ここまで幻術のON OFFを切り替えられるとは。
「では…次は俺が攻撃しますので、幻術で俺を騙して攻撃を避けてみてください。怪我をしない程度の攻撃にするのでご安心を。そして私に直前まで気付かれないようタッチして見せてください」
「えー?」
「これも授業ですよ、姫君。不安でしたら姫君に結界も張って、絶対怪我をしないようにしますから」
「うーん、わかった!」
これは授業と同時に、テストでもある。
一体どこまで出来るのか…見極めなければ。
これをクリアするなら、幻術系の魔術と身を守る魔術は教える必要がない。
あとは適性のない魔術を少しでも才能を伸ばしていくだけになる。
そしてテストは始まった。
「結界を張りますね」
「はーい」
ルーヴルナに結界が張られた。
「ファイヤーボール!」
そしてディオンはルーヴルナに攻撃を仕掛ける。
しかし狙った的は幻術で、次から次に幻術のルーヴルナが現れて攻撃は一向に当たらない。
幼き天才と呼ばれる自分をこうも完璧に騙す幻術。
やはり末恐ろしい…そう思った時だった。
「はい、タッチ!」
「え」
いつのまにか背後にいたルーヴルナにタッチされてしまった。
「どう?すごい?」
「ほー」
「やっぱり俺様ってすげぇよな!」
「…はい、素晴らしい幻術でございました」
「「わーい!」」
フェリクスとニュイとハイタッチするルーヴルナ。
そんなルーヴルナにディオンは言った。
「幻術系の魔術は完璧です。身を守る魔術も教える必要はないでしょう」
「ルーヴルナには俺様達がついてるからな」
「ほー!」
「二人がいれば大丈夫!」
「ですからここからは、適性のない光や炎、水、風、土の魔術をコツコツと学んでいきましょう」
ディオンの言葉にニュイとフェリクスは不敵に笑った。
「おっけー!適性がなくとも役に立つところ、見せてやるよ!」
「ほー!」
「二人とも、頼りにしてるね!」
ディオンはこの後、このルーヴルナの幻術系の魔術の素晴らしさをアナトールに素早く報告しに行った。
アナトールはあまりのルーヴルナの出来の良さに開いた方が塞がらなかったという。




