絆される
ということでアロイスはルーヴルナのいる離宮に来た。今まで興味もなくルーヴルナのことは何も知らない。
「…ルーヴルナ」
「あ、アロイスお兄様!お帰りなさい!」
「お帰りなさい?」
首を傾げるアロイスに、ルーヴルナも同じように首を傾げる。
「あれ?違うの?家族がお家に来たらお帰りなさいかなって」
「…いや、まあ間違ってないんじゃないか。ただいま、ルーヴルナ」
「うん、お帰りなさい!」
屈託無く笑うルーヴルナにアロイスはなんだか罪悪感に苛まれる。俺はこんな幼い子供にまともに向き合いもしなかったのかと思うと普通に落ち込む。罪悪感を消し去るようにルーヴルナの頭を撫でると、ルーヴルナは初めてアロイスから撫でられたと喜んだ。
「あー。ルーヴルナ、これいるか?」
「なあに?」
「チョコだよ。貰い物だけど」
「食べる!えへへ、アロイスお兄様からの初めての贈り物だね!食べるのもったいないな…」
心底嬉しそうに受け取るルーヴルナ。アロイスはなんとも言えない感情になる。
「腐る前に食べちまえ。こんなもんで良かったらまた持ってきてやる」
「アロイスお兄様がまた来てくれるの!?絶対!?絶対だよ!約束だよ!チョコは無くてもいいから、絶対来てね!」
「…おう!約束してやる。また来るよ」
「わーい!あ、チョコ食べるね」
あまりのルーヴルナの喜びようにアロイスは一瞬可哀想なものを見た時のなんとも言えない感情に苛まれた。もう、アロイスにはルーヴルナは無視できない存在になってしまった。
次の日、ルーヴルナは珍しく離宮に篭った。いつもは兄弟の誰かの所に突撃しに行くのに。それというのも、アロイスが来ることを期待してだ。
アロイスは一週間後くらいに行くつもりでいたが、ルーヴルナが珍しく離宮に篭っているのを知って急いでフォンダンショコラを専属パティシエに二つ作らせて持っていった。
「アロイスお兄様ー!お帰りなさーい!」
「ただいま、ルーヴルナ。待たせたな」
「ううん!全然待ってないよ!」
分かりやすい嘘である。ルーヴルナの近くには沢山折り紙が落ちていた。作って待っていたのだろう。
「あ、あのね!これ一番綺麗に折れた鶴なの!アロイスお兄様に上げる!」
ルーヴルナが可愛い笑顔で折り鶴を差し出す。アロイスはもう限界だった。
「ルーヴルナ!」
ルーヴルナは急に抱きしめられても、初めてのハグだと喜んだ。
「初めてのハグだー!アロイスお兄様大好きー!」
「…今までごめんな。お兄様はルーヴルナのお兄様なのにな。これからはちゃんとお前も愛するよ」
「ルナもアロイスお兄様が大好きー!」
相も変わらずこれからは、とかちゃんと、とかいう部分はシャットアウトして愛するという部分だけ拾って喜ぶルーヴルナ。そんなルーヴルナにアロイスは困った顔で笑い、フォンダンショコラを差し出した。