知らない男の子に馬鹿にされたが、アロイス兄様がキレた
「お前なんか、正妃様の子じゃないくせに!」
いきなりそんな罵声を浴びせられたルーヴルナ。
だが、持ち前の都合の悪いことはシャットアウト機能でノーダメージできょとんとしていた。
こうなったのは、約数分前のこと…王宮にとある貴族がやってきて、国王であるアナトールに謁見していたのだが…その間、一緒に連れてきたらしい長男を放置していた。
長男は勝手に中庭で遊んでいたのだが、咲いている花をむしり取っていた。
それをたまたま見つけたルーヴルナは、一緒に中庭を散歩していたアロイスと手を離してその子に注意をしに行った。
「あのね、そんなことしたらせっかく咲いたお花が可哀想だよ」
そう言ったルーヴルナを、アロイスは離れたところから見守り優しい子だなぁと感心していたのだ。
で、冒頭に戻る。
…当然のように、ルーヴルナを溺愛するアロイスは切れた。
「おい、お前」
「あ、だ、第二王子殿下」
「俺の妹に、傷つけるような発言をしたな」
「あ、ご、ごめんなさい…」
「ごめんなさいで済むと思うか?」
アロイスは背中にルーヴルナを隠して、その子を睨みつける。
「二度と囀れないように、舌を切り落としてやろうか?それとも首を落として飾ってやろうか」
「ひっ…」
その子はキレたアロイスのあまりの恐ろしさに少しお漏らししてしまった。
「アロイス、そこまで。ルーヴルナが怖がっているよ」
「兄上」
「アレクシお兄様!」
アレクシの登場に、アロイスは若干冷静さを取り戻す。
怖がらせてしまったルーヴルナに申し訳なさを覚え、ルーヴルナの頭を撫でた。
「怖がらせてごめんな、ルーヴルナ」
「ううん、いいよ!」
そしてルーヴルナは男の子に興味を失い、今度はアレクシに甘えに行った。
そんなルーヴルナをアレクシは抱っこして可愛がりつつ、男の子に冷たい目線を送る。
「だがルーヴルナの言う通りだ。お花が可哀想だろう?もうやっちゃダメだよ」
「は、はい…」
「あと、君のルーヴルナへの発言は見逃せない。君の家に厳重な処罰を求めるよ」
「!!!」
そしてアレクシとアロイスは、男の子を放置してルーヴルナを連れ帰った。
後日本当に男の子とその親である貴族の男は、不敬罪で処分を受けた。
これが噂に噂を呼び、冷遇されていた姫君が突然溺愛されるようになったと貴族社会で大きな話題になった。
あの姫君を侮るのはまずいというのが、貴族たちの共通認識となった。
またそれと同時に、姫君がとても美しく育っており心優しく優秀だとも話題になった。
これはアレクシの仕込みの噂なのだが、本当のことなので問題ないだろう。




