あんたなんて認めないんだからね!
「お初にお目にかかります、ルーヴルナ・ヴィクトリア・アルヴィアと申します」
可憐に挨拶をするルーヴルナ。
「…ふん」
それを受けた公爵家の姫君は、冷たい目をして言い切った。
「あんたなんて認めないんだからね!」
「?」
当然ルーヴルナは思考停止して意味を理解しようとしない。
「エヴァ伯母様から国王陛下を奪った泥棒猫の娘なんて、いくらエヴァ伯母様そっくりでも認めないんだから!」
ああダメかと周囲にいた使用人たちは、ルーヴルナからローズを引き離そうとする。
だが。
「ルナね、綺麗な赤色が好きなの!」
「は?」
ルナがまだ仲良くなりたいと努力する姿に、使用人たちは一度待つことにした。
「ルナはね、金髪に青い目でしょ。お義母様もお揃いでしょ。お父様は銀髪に赤い目でしょ。アレクシお兄様は金髪に赤い目ででしょ。アロイスお兄様はお父様とお揃いでしょ。アマデューお兄様は金髪に青い目でお義母様とルナとお揃い!だからルナはね、金と青と、銀と赤が好きなの!ローズ様は真っ赤な髪と目でしょ。だからね、ルナね、ローズ様が好き!」
ニコニコしてそんなことを言うルーヴルナ。
しかしローズはそれに半泣きになってキレる。
「ふざけないで!私はエヴァ伯母様みたいな…あんたみたいな綺麗な金髪が欲しかったのよ!」
「どうして?こんなに綺麗なのに」
ローズの髪に手を伸ばすルーヴルナ。
「触らないでよ!」
ローズはその手をはたき落とすが、ルーヴルナはニコニコしたまま言った。
「あのね、ローズ様の赤は、薔薇みたいなの」
「…っ、それはそうでしょうね。名前の由来だもの」
「綺麗な薔薇。きっと大輪の花が咲くよ」
「あんたに何がわかるのよ!」
「ローズ様が綺麗ってことがわかるよ」
ニコニコと笑うルーヴルナ。
その言葉に嘘や方便は見受けられない。
ローズは戸惑った。
母や伯母に似て、綺麗な金髪だったら良かったろうにと散々言われてきたローズ。
でも…ルーヴルナの言葉を受けて、なんだかこのままの自分でも良い気がして…。
「…そうかしら。〝貴女〟本当にそう思う?」
「うん!それにね、ローズ様はとっても綺麗なお顔だから、目立つ赤色はよく似合うよ!」
「そ、そう…」
ローズは黙りこくった。
そして、ようやく言葉を発したのは五分後。
「ま、まあ…貴女の話し相手くらいになら、なってあげるわ」
「わーい!ありがとう、ローズ様」
「貴女は…姫様なのだから、ローズと呼び捨てにしたら良いわ」
「ルナはルナでいいよ」
「…ルナ姫殿下。先ほどのご無礼を謝罪致します。仲良くしていただけますか?」
ルーヴルナはとびきりの笑顔を浮かべた。
「うん、ローズ、よろしくね!」
「はい、よろしくお願いします。ルナ姫殿下」
…こっそり様子を見にきていたアマデューは、仲良くなったのを見届けてホッとしてそっと自分の部屋に帰っていった。
アマデューは勉強の時間に何をしていたのかと懇々と説教をされたが、しらを切り通した。




