本宮へ
ルーヴルナを本宮へ迎えるにあたって、本宮も離宮もてんやわんやになっていた。
本宮はなぜ急にという混乱が起き、離宮はやっと姫様が認められたとうれしい悲鳴が起こる。
ともかく、離宮ではせっかくなのでおめかしして行こうとルーヴルナを着飾った。
本宮ではルーヴルナが姫として迎えられる以上最高の状況でお出迎えしようと張り切っていた。
そしてお昼頃。
「…わぁ!」
ルーヴルナはたくさんの使用人達に出迎えられつつ、本宮へ移った。
「ルーヴルナ、今日からずっと一緒だよ」
「兄様たちが本宮を案内してやるからな」
「兄様たちと手を繋いで行こうね」
「うん!」
「まずは、一応父上と母上に挨拶に行こうね」
ルーヴルナは兄たちと手を繋いで歩いていく。
「父上、母上。ルーヴルナが本宮に移りました」
「お父様、お義母様、来たよ!」
「よく来ましたね、ルーヴルナ」
「さっそくだが、昼だしみんなで食事にしよう」
みんなで食堂へ行き、お昼を食べる。
兄たちはルーヴルナの食べ方が綺麗なのは知っているが、アナトールとエヴァは初めて見るので驚いた。
「…教師はつけていなかったはずだが、綺麗な所作だな」
「ばあやが教えてくれたの!」
「なるほど」
「乳母にはあとで褒賞を与えましょう」
ルーヴルナは嬉しそうに笑う。
ばあやと自分が褒められたのがわかったからだ。
「本宮の食事は口にあいますか?」
「うん、美味しい!」
「それは良かった」
ルーヴルナの笑顔に、兄たちやアナトール、エヴァも自然と笑顔になる。
「ルーヴルナ、お昼を食べたら少し時間をくれるかい?」
「うん、いいよ?なあに?」
「とりあえず本宮の案内をして、その後教養のレベルを測りたいんだ」
「ふーん、頑張るね!」
ルーヴルナは前から兄たちに会いに本宮へ侵入していたので、案内は簡単に済む。
むしろメインはその後の教養のレベルを測るテスト。
食事を終えると、早速兄たちと本宮の中を見て回るルーヴルナ。
そしてそれが終わると、ルーヴルナは本宮に用意された新しい自室に行きテストを受けた。
結果は、驚くべきものだった。
「…読み書きが完璧で、計算も得意?」
「魔術や他の科目は全く身についていませんが、読み書き計算はしっかりしています」
「誰に習っていた?」
「それも乳母が教えていたそうです」
「…ううむ。これはすごい」
アナトールは思わず唸る。
「魔術と科学と歴史と地理…それに、倫理学や哲学、帝王学…覚えるべきことは多いですが、ルーヴルナなら大丈夫そうです」
「そうだな。この年齢で読み書き計算が完璧ならばそちらもすぐに吸収するだろう」
「ついでに調べてみたのですが、ダンスや刺繍も何気に得意なようです」
「年齢を考えたら優秀すぎる」
「そちらも乳母の仕込みです」
ルーヴルナの乳母は、ルーヴルナの母の元侍女だった。
その優秀さは群を抜いており、その乳母がルーヴルナの面倒を見ていたのだからさもありなん。
それと、ルーヴルナの地頭の良さもありここまでできるようになったのだ。
「ともかく、ここまで優秀なのであれば良い家庭教師をつければ化けるな」
「ええ。素晴らしい家庭教師を用意しましょう」
「とりあえず、まずは魔術の家庭教師を決めよう。魔術は王族の嗜みだ」
「確か魔術師の塔に、ルーヴルナと同じ年頃の天才最年少魔術師がいたはずです」
「その者に任せようか」
こうして早速、ルーヴルナの魔術の家庭教師が決まったのだった。




