嫌われ者のお姫様
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ルーヴルナ・ヴィクトリア・アルヴィア。アルヴィア王国第一王女にして、兄弟の中で唯一正妻の子ではない。
母である国王の寵妃ルシールは元々身体が弱かったためルーヴルナを産んだ後亡くなり、国王である父アナトールからは愛するルシールが死んだ原因として遠ざけられる。
正妻である王妃エヴァからは当たり前のように憎まれ、正妻の子である第一王子アレクシ、第二王子アロイス、第三王子アマデューからは特に興味も持たれずにいた。
そんな嫌われ者のルーヴルナだが、本人は至って普通に育った。何故かはわからないが、彼女は人の悪意を完全に意識の外にシャットアウトしていた。それが彼女の処世術なのだろう。
そのためルーヴルナは、自分が嫌われている自覚がまるでない。今日〝家族〟の元へ突っ込んで行く。
「アマデューお兄様ー!」
「また来たの?ルーヴルナ。母上から怒られるよ」
「アマデューお兄様にこれ上げたくて!」
「…これは?」
「ルナが初めて作った編みぐるみ!上げる!」
ルーヴルナは嬉しそうに編みぐるみ…というのはわかるが何をモチーフにしたかさっぱりのそれをアマデューに差し出す。アマデューは困ったように笑った。
「ルーヴルナは優しいね。なんの動物かな?猫?」
「くまさん!」
「くまかぁ」
アマデューはルーヴルナの頭を優しく撫でる。
「さあ、母上に見つかる前にお帰り」
「またね!」
「またね」
ルーヴルナが帰ると、アマデューはゴミ箱に編みぐるみを捨てた。
「バカな子…」
興味なさそうに吐き捨てたアマデュー、次の瞬間頭をど突かれた。
「いったいな…誰!?」
「お前の兄ちゃんで第二王子のアロイス様ですけどぉ?」
「げっ…兄様…」
アマデューが青ざめる。
「あのなぁ、幼い女の子が一生懸命に作ったものをそんな扱いする奴があるか!バカはお前だ!それでも王族か!」
「…それは。でも、兄様だって受け取らないだろ」
「そう。俺は最初から受け取らない。お前は〝優しい顔をして受け取っておいて捨てた〟。どっちが最低だ?」
「…ごめん。余計な怨み買いたくなくて」
「でもダメだ。わかったな」
アマデューは渋々と頷いた。
「わかった。次からは断る。でもさ」
「うん」
「兄様だって、あの子のこと何も知らないのにそんな扱いなんでしょ?」
「…確かに、考えてみれば酷いな」
アロイスはふと自分の所業を振り返り、違和感を感じた。
「まあ、一番酷いのは多分父上だけど」
「…王としては尊敬するんだけどなぁ。正妻以外に寵妃を作って、しかもその相手が正妻の元〝影武者〟とかヤバイよなぁ」
「同じ顔の女に男を取られたら母上も歪むよねぇ」
「とりあえず、王族として振る舞いには気をつけろよ」
「はい、兄様」
アロイスはアマデューが去るのを見て思う。ルーヴルナのことを知ってみようと。
楽しんでいただければ幸いです!