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Lost identity 〜ログアウトするにはライバル作品のプレイヤーを倒さなくてはいけない!?〜  作者: 赤城ハル
一章

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EX-3 定例報告会2

「では、いよいよ明日となりますけど問題はありませんか?」


 葵は全員に聞いた。いつも通りマリーを除いたメンバー全員が揃っている。

 ロザリーは行儀よく手を挙げた。しかし、顔は前と同じで不機嫌。文句があるのが透けて見える。葵は心の中でため息を吐いた。そして努めて丁寧に尋ねる。


「何かありましたか?」

「大あり! マルテ! あのメタルカブキオオトカゲはなんなの? おかしすぎでしょ」


 ロザリーはすぐに啖呵を切り、マルテに怒りの視線を向ける。


「はて? 何か問題でもありましたか?」


 それに対してマルテは知らぬ存ぜぬといったていだ。


「強すぎなのよ! タイタン組なんて最後にこっちが無理矢理通して討伐にさせたんだから」


 ロザリーはマルテにびしびしと人さし指を向ける。


「いや、あれはタイタン側に問題あるぜ」


 そう言うのはセブルス。彼女は別にマルテをかばったわけではないがロザリーにはそう感じとられた。ロザリーは「なによ」という目をセブルスに向ける。


ハイランカーが参戦しなかったのが問題だったな」

「ほら、私のせいではないでしょ」


 したり顔をするマルテ。

 ロザリーは鼻をひきつらせ、


「それでも強すぎたのよ。攻略必須条件が高ランカー全員一斉参加かよ」

「いえいえ、全員という必要はありませんよ」

「それに耐性がおかしいでしょ。なんで銃撃、火炎、ビーム等の耐性があるのよ。メインウェポンが銃のタイタンでどないせいというのよ」

「それはアヴァロン側でも同じように致しましたわ」

「そうよ! そう! そのアヴァロン側もおかしかったわ。なんで剣撃、魔法が無効なのよ。それとどうして瀕死状態時に防御力2倍なのよ。固すぎよ」

「あら、それでもつまんないくらい速攻で倒したじゃないですか。もう少し耐性を増そうと思いましたわ」

「しなくていいわ!」


 ロザリーは声を荒げて反論する。

 アヴァロン側はスゥイーリア率いるパーティーメンバーがなんと素手でタコ殴りにして倒したのだ。しかも防御無視のスキル持ち。


 だからこそ簡単に倒したのだ。だがタイタン側は倒すのに人数も時間も要した。


「やりすぎなのよ。あんたは!」


 ロザリーは怒鳴りながら抗議する。


「明日の制圧戦で変なことしてないでしょうね。例えばモンスターを乱入させるとか」

「してませんわ。制圧戦の舞台となる島の作成には関わっておりませんもの」


 ロザリーはさっと葵に向き、


「本当ですか?」

「ええ。制圧戦は前もって作成されたものですので私を除いてここにいる皆さんは関わっておりません」

「そう。ならいいわ」


 ロザリーは椅子の背もたれに体重を預ける。だが機嫌は悪く目が尖っている。


「皆さん予定通り明日の午前10時に制圧戦を行います。プレイヤーの方で問題はありませんか?」


 その問いにセブルスが答える。


「問題はちょっと二つほどあるかな。一つはストレス値が高くなってること。もう一つはメタルカブキオオトカゲの件でもそうだが不真面目なやつが結構いるな」

「ストレス値が高いプレイヤーにはセロトニンを。特に女性には多めに。不真面目、不誠実なプレイヤーの件は明日の結果でそれが仇となると知るでしょう。アヴァロンではどうですか?」

「こちらも同じく不真面目というよりも不道徳的な方がおりますわ。NPC自警団でもちょっと……」


 ヤイアは悩ましげに答える。


「それも同じく明日で解決できるかと」


 それにセブルスが葵に問う。


「なあ、制圧戦の後、大がかりなアップデートを行うんだろ。大丈夫なのか? プレイヤーも馬鹿じゃあないから解放されないと薄々感づいてはいるけどさ」

「あら解放されないんですか?」


 セブルスの言葉にマルテは驚き、葵に聞く。


「解放人数は制限しています。それと選出は外に出して問題ない方のみです」

()()はまだ見つかってないんですか?」

「はい。まだ発見されていません。もしかしたら眠っているのかもしれません」

「本当にですか? 量子コンピューター『トリニティー』を使用しても?」


 葵は頷いた。

 その答えにマルテは訝しむ。本当はすでに()()がどこの誰かに寄生、もしくは成り済ましているのか解っているのでないのかと。次にマルテは、


「では()は何か行動を起こしましたか?」

「いいえ。今のところ何も。そうでしょセブルス」

「ああ。何かやるかもっていう場面はいくつかあったんだけど何もなしだな」

「警戒を怠らないように」

「おう。わかってるよ」


 セブルスは胸を張って答えた。


「他に何かありますか?」


 葵は皆の顔を窺う。

 誰も発言をしないので、


「ではこれで終わりにします」


 と、締め括った。

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