団結
ラン一人の力で伽耶王国はあっけなく陥落した。
華の皇帝、陽怜はとうとう実の娘の討伐を命じる。
「蘭を討て。すでに奴は陽家の者ではない。」
人々は皇帝がランの討伐を命じたことに安堵した。
しかし伽耶王国をたった一人で陥落させたランをどう討伐すればいいのだろう。
「スミレ・イマガミ、、、、!」
家臣の誰かが呟いた。
それに呼応するように人々がスミレの名を口にする。
その様子はあまりにも妙だった。
陽煌がスミレによって殺されてから一年もたっていない。
「あの人にしか、止められない!」
皇太子を真正面から殺したスミレならランに勝てるかもしれない。
その場の誰もがそう思った。
「風家の者を呼べ。スミレを国を挙げて捜索する。」
皇帝は近くにいた側近に耳打ちした。
本格的にスミレの捜索が始まるのだ。
伽耶はランによって掌握された。
しかし和と洋以外の国はすべて華の手にある。
スミレがのる飛行艇の位置はとうに割れているのだ。
問題はスミレの異能をどう制御するかにある。
しかしそれも時間の問題だろう。
「何も訓練してこなかったものに負けるほど華は軟弱ではないわ。」
皇帝ははなからスミレにランを討てるなどと無駄な期待をすることはなかった。
ただ、国の式が上がる。
そして、月家の再来だと騒がれるスミレを手中に収めている人間が伽耶王国の支配権をもつ。
ランにどんな大義名分とやらがあろうと、スミレがいなければただの侵略者なのだ。
皇帝はその玉座から腰を上げた。
彼が一声発すると国民は勇気づけられる。
一言話すと兵士は自らを奮い立たせる。
彼の言葉には陽家、そして華を背負いたつものとしての重みがあった。
「我が国に歯向かうものの末路は滅亡のみ。だからこそ華は長年、世界の権力者であった。敵は国ではない。一人の小娘だ。」
皇帝がその先を言う前に家臣たちは叫んだ。
「華の安寧を!敵に滅びを!」
皇帝は一人ひとりと目を合わせるように首を動かした。
そして立ち去る。
家臣もそれぞれにできることを、と動き出す。
それらの喧騒を背に漢字ながら王はさっきまでの晴れ晴れとした顔とは打って変わり、瞳からその光を消した。




