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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
国外逃亡編
61/70

打算まみれの純愛

風華の発言に反応した2人は硫酸銅かもしれない青い石を一度、ハンカチに包みました。そして即座に手についたであろう毒物を流しに行きます。



「シルフィ、なんてもの渡してくれてるのよ。一番近い人間、殺すのが目的なの?!」



「、、、、申し訳ないと思ってる。」



「まぁ硫酸銅と決まったわけじゃないから、、、、。」



しおらしい態度のシルフィに、喧嘩腰になっていたココナもたじたじになっています。そんな2人を見ながら、風華は土瀏と作った硫酸銅の結晶を思い出していました。あの結晶を作ってみたいと言った風華に付き合ってくれた土瀏。有毒だと後で知って、怖いね、と笑ったこと。土瀏の部屋に飾るとき、鍵付きのガラスの箱に入れて厳重に保管されていたこと。風華は令瞑の服から手に入れたものを見つめました。使った跡が見えないまま、上着の内側に入っていた硫酸銅の青色が染みた刺繍入りハンカチ。何年も前に風華が土瀏に贈ったものでした。風の異能で少しの情報の断片を集めたとき、わずかに聞こえた兄の穣峰と父の会話。



「父上、風華と連絡はつきますか?」



父が苛立っているのか、机を強く叩く音がしました。



「今、華の国は皇太子殿下を失い、さらに印への進行も進めている。他国の者の安否を確認する暇などない。」



「しかし、令瞑がここ数日風華を追っていました。陽蘭様の失踪は必ずスミレと関係があります。」



緊迫した空気は声だけでも読み取ることができました。風華は父に申し訳ないと僅かに思います。



「その行動があやつの恋慕ではない、と断定できるか?土瀏の死因を偽装した人間だ。打算ではなく憐憫でな!」



また、父の机を叩く音が聞こえます。日々の公務に加え、複雑な外交の増加。伽耶王国を印に吸収させることによる問題の解決。そこに衝動的な若者の感情など、邪魔以外の何者でもありません。



「令瞑は一時の感情に流される人間ではありません。さらに、父上も令瞑と風華の婚約は強行するつもりではなかったですか。」



ここまでで風華の異能が限界に達しました。そして強烈な吐き気を覚えます。異能の使いすぎによる疲労だけではありませんでした。最愛の人が2人の大切な者で身勝手に命を断ち、大嫌いな人は他人に贈られたハンカチを常に上着にいれておくほどに自分に執着してくる。気持ち悪い以外の何ものでもありませんでした。土瀏が手っ取り早く死ねるから硫酸銅を選んだのか、大切な人と作った硫酸銅で自分を思いながら死んだのか。風華は後者であって欲しいと思いながらも、その事実は知りたくなかった。だから、一瞬でもその事実を隠していた令瞑に感謝してしまった。それゆえに、風華はいつまでもいつまでも気持ちの悪い吐き気が止まりませんでした。



ーーココナとシルフィが戻ってくるまでに落ち着かねば。



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