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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
和の国編
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アイラの不安

この大陸には和の国・洋の国・華の国があります。和の国は義理に生き、洋の国は実力を大切にし、華の国は歴史を重んじ、と、それぞれの大切なものを各国で尊重しあいながら存在していました。しかし、事件は起こります。洋の国の暗殺者が和の国の姫を殺そうとし、それに怒った和の国の王が華の国の皇帝と同盟を組み、洋の国に戦争を仕掛けたのです。敗北した洋の国の教皇は身に覚えのない暗殺容疑に対する報復のため、小国から連れてきた奴隷を姫に放ちましたが失敗。その奴隷は姫によって返り討ちにされました。王は教皇の更なる報復を恐れ、姫を離宮に入れることにしました。しかしそれは建前で不思議な力のある姫を城から遠ざけたかったのです。王の不安は当たり、塔からはものすごい冷気が出てきて、塔の下はいつも冬のよう。女官の言霊で眠らせても、夢を見てしまうと姫の力は暴走します。そこで女官は姫をさらに深い眠りに落としたのです。しかし、女官は気付いてしまいました。姫の力は何かを感じることで発動することに。



ーならば、感じさせなければ良い。



こうして姫は女官の言霊によって感情を持たなくなりました。そして、もう安全だと判断した王により、姫は望み通りに城から出ることができたのです。しかし姫の感覚、感情は消え失せており塔の外に足をつけた時の喜びも感動ももう、存在しませんでした。


「姫さま、塔を出た感想は ?」



アイラの言葉に反応しないスミレ。感動のあまりに言葉を失っている訳ではなさそうです。



ー反応がない。普通に立っているし、目も動いている。なのに話さないのは何故かしら。けれどそれは暗殺未遂事件のショックで話せなくなった、と言えば問題ないでしょう。でも話せることを知っている女官の口を封じないといけないわね。それから、王にも伝えなければ。



そんなことを思いながら、アイラはスミレの手を優しく握ります。スミレはアイラに手を引かれますが、自分で歩こうとはしません。アイラは自分が人形を引きずっているように感じました。確かに、スミレは生きている。それなのに何故こんなにもスミレの体は冷たく、目は虚なのでしょう。



ーわかっている。私の言霊のせい。でもこれは彼女のため。16歳になったら嫌でも姫さまは人目に晒されなければいけない。



和の国の王家では16歳になると、一度は必ず社交会にでなくてはいけません。そしてスミレの場合はさらに華の国に挨拶しなくてはいけないのです。病弱であってもそこが魅力的に見えることだってあります。しかし、問題がありました。スミレには和の国と洋の国、それから華の国の作法は覚えていましたが、感情をなくしてしまったことにより、笑顔が無くなってしまったのです。華の国は大陸一の大国。スミレの失態は和の失態。姫の教育一つまともにできない王家は相手にされません。どれだけスミレの容姿が特異だとしても、和の国がスミレを姫と認めたのならば教育をきちんと受けさせること。スミレの暗殺未遂事件で、スミレの容姿が特異であることは全世界に知れ渡ってしまいました。今更代役を立てるわけにはいきません。



ー教皇は本当に嫌なことをしてくれた。王が恐れているのは姫さまを国外の目に晒してしまうことだというのに。



「姫さま。ここが城です。今日からあなたには礼儀を勉強していただきます。といっても、塔の中の本にも書いていましたのでわかるとは思いますが。」



「わかったわ。」



今になって言葉を発したスミレ。アイラは頭を悩ませます。



ー姫さまがどんな基準で話すのか、わからない。何も感じない、に語感は含まれていないはずだし、聴力には問題ないと思うのだけれど。

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