サイドストーリー 奇跡の正体
目の前の景色が浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。伽耶王国を建国した月家の人達。そして、洋の国の大公の息子と駆け落ちして和の国を建国した伽耶王国の姫君。その姫君を月家全ての人間を滅ぼしてまで呪った妹君。呪いにより、和の国では姫君以外の人々が異能を使うことができなくなってしまう。身勝手な自由を求めた人達が目の前でどんどん破滅していく様子をスミレはただただ見ていた。景色はどんどん切り替わっていく。そしてとうとう、スミレの父である王が兄を殺害し王位についたところまで来てしまった。しかも、それをアイラが操っていた事実までも見てしまう。その様子をみた母、レイラが妃にするよう強要したこと。そして自分が生まれたこと。さらに、スミレは自分が殺したと言い聞かされていたレイラの死の真相を知ることになる。
「お母様、、、、?」
声にならない声がスミレの唇を動かした。自分の殺害を依頼する母親の姿に絶望を隠しきれない。しかし、今スミレが生きているということはそれが失敗したということだ。レイラはランによって眠らされ、そのまま放置され、焼け死んだ。死体も見つかっていない。
「何が憎い?」
目の前に急にアイラが現れた。スミレに呪いをかけ、今回の騒動を起こした張本人。そして、とっくに死んだはずの。しかし、スミレはそんなことを気にせずにアイラの質問に答える。
「私がお父様とお母様の子として生まれたことかしら。」
「だけど貴方でないといけなかった。私のしたことの責任を取るには貴方が必要だった。」
アイラが敬語でないこと、話していることに違和感を覚えたスミレは一つの答えを導き出した。
「アイラ・イマガミ、、、、?」
大公の息子と駆け落ちし、和の国を建国した伽耶王国の姫君。類稀な異能の力を持っていたにも関わらず、洋と華の混血達を解放した英雄。何故気がつかなかったのか。しかし誰も思うまい。100年も前の人間が若さを保ち、生きながらえているなど。
「和に被らされた業を跳ね除けるために今のいままで生きてきた。王家の黒い髪は誇りでも証でもない。」
ずっとスミレを苦しめてきた銀の髪。
「銀の髪こそ真の月家、いえ、和の国王家の証。貴方が最後の希望。」
全てが否定された。スミレが10年以上苦しんできたその理由は勘違いであるなら、拘束されることなかった人生が遅れたはずだったのに。
「私は何のために、、、、。」
スミレにとってはなから月家も和の国もどうでもいい。ずっと自分に関心を持たなかった王。殺してしまったと思っていた王妃。その二つによって彼女の人生は縛られていた。
「誰を、何を、どれだけ私は許さないといけないの?」




