呼び出された令瞑
令瞑を呼べ、と言うランの気迫に負けて令瞑を転移させようとするシルフィを風華が止めました。
「令瞑様は危険です。スミレ様の追っ手をわざわざ呼ばずとも、、、、。」
「うるさい。令瞑のような雑魚、私一人でなんとかなるわ。いざとなれば肉片にでもすれば良いだけ。シルフィ、令瞑を呼べ。」
風華は仕方なく引き下がり、シルフィは令瞑を部屋に転移させました。一瞬のうちに令瞑が現れます。
「私を許可なく転移させたのはお前か?」
彼はシルフィを強く睨みつけましたが、ランの姿を見た途端に礼をします。
「これはこれは陽蘭様。このような強引な手段を使わずとも私の方から参りましたのに。」
「ほう、どうやって?」
態度に出しませんでしたが令瞑は目に入った睦已だった土塊を見て背筋が凍るような思いがしました。穣峰を使い、ランの居場所を探り、飛行艇を見つけ出していました。あとは飛行艇唯一の土である睦已を介して飛行艇に潜入しようとしていたのです。ランは飛行艇周りの風がおかしいことに気が付き、念のため睦已を破壊したのでした。そして、潜入され完全に居場所を知られて軍に攻め込まれないよう令瞑だけ呼び出したのです。二人が視線をぶつけあっているなか、風華はココナを庇うようにして部屋を退出します。ココナがスミレの女官だと令瞑は知りませんが、和の者であるため、念の為に隠すことにしたのです。
「ラン様、この度は如何様で?」
顔を上げた令瞑は話を切り替え、ランになんの用か尋ねます。
「この土塊の記憶を見てほしい。和でも洋でも華でもない勢力が関係しているのだ。」
それでしたら喜んで、と令瞑が額についた血を拭い、土塊に手を伸ばしました。
「黒髪に黒眼の女性が見えます。それから、この土塊は動けるようになる。あ、女性が話し始めました。」
「何だ。」
ランの冷たい声が部屋に響きます。しかし、令瞑は気にせずに話し出しました。
「全て元通りにするためには、スミレの力が必要だ。スミレは世界を救うことも壊すこともできる。私はスミレの力を世界を救うために使いたい。君に睦已という名を与えよう。君がスミレを助けるのだ。近くにいるセーラから目を離すな。あいつは過去にスミレを殺そうとしているぞ。目を離すな。」
令瞑が話し終えると、ランは呟きました。
「言うことがかなり抽象的ね。」
ココナを隠し終えた風華は紅茶を手に持ち、ランとシルフィ、令瞑と自分の分を注ぎます。
「私たちの組織は幹部ですら家長の目的がわかりません。分かっているのは華の国から和に来たこと。そして、スミレ様を抹殺しようとしたこと。アイラはその組織の構成員であったことです。」
シルフィが説明しますが、ランは話を無視します。
「この者は王家のはみ出し者か、もしくは廉のような異端者か。少なくとも城では黒髪の女性など聞いたことがない。」
ほうっとランがため息をつきました。
「国内の不穏分子ではないと分かって安心した。」
「それでは私は下がってもよろしいでしょうか?スミレ様の捜索がまだ続いてまして。」
令瞑が身支度を始めます。彼を見るランの唇が釣り上がりました。
「どうやって帰るの?ここは空の上よ。」




