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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
国外逃亡編
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心は痛まない

睦已の正体がただの人形であったことがわかり、背後に令瞑がいないことは確認できました。しかし、得体の知れない存在があることもわかりました。睦已の口からスミレの話ができたことを考えると、警戒するに越したことはありません。自分たちの居場所が知られていないとも限らないのです。



「こいつ、潰したほうが良いかしら。」



ココナが腕をまくり、睦已に詰め寄ります。しかし、風華がそれを止めました。



「得体の知れない相手のことよ。とりあえず、洗いざらい話してもらいましょう。シルフィもよ。」



そこに座りなさい、と風華が椅子を指さします。



「まず睦已からね。家長が言ってたことを全部話して。でないと殺気立ったココナに潰されるわよ。」



名指しされたココナが何言ってるの?と言わんばかりの表情で風華を見ますが、風華は気が付かないふりをします。しかしココナが思い出したように風華に話しかけました。



「あの、風華様。ラン様にお知らせしなくても良いのですか?」



事が事です、とココナは続けますが風華は黙り込んだままでした。しかしココナがなぜ、と聞き返すと重い口を開けます。



「ラン様の命令を優先すべきか、非常時だからと声をかけるか。これが一番難しいのよ。」



「めんどくさいんですね。」



なんだ、そんなことか。とココナが興味を失いました。しかし風華は一言いいます。



「失敗した女官が解雇されたことあるわ。」



「よし、風華様はゆっっくり考えていてください!」



椅子に座ったシルフィと、机に乗せられた睦已が何してんだ、と二人に言ったことでココナも机に戻りました。風華はため息を付き、扉に手をかけて部屋に残った二人と一体に釘を差します。




「ラン様を呼んできます。あなた達は動かないように。何かあったらこの飛行艇はドカンとなって仲良く空に投げ出されますからね。」



「そんなことしません!」



ココナが叫んだのを背に、風華は出ていってしまいました。シルフィは椅子に座り、ぼんやりとしていますが、睦已はじっとしているのが困難なようで、ココナに話しかけていました。



「せや、この飛行艇はどんぐらいの時間飛んでるんや?」



「さぁ、一週間ぐらいでは?洋の安全なところなんて本当に奥の奥ですから。東のあたりは民族同士が複雑だと言うし、西と中央は人が多すぎる。南は貴族街で、各国に招待されるほどの地位を持つ人間が多いからラン様とスミレ様は顔が割れています。行けるとしたら、北の山奥でしょうね。」



ココナが面倒そうにしてると扉が乱暴に開けられました。そこには髪を整える時間すら惜しかったのか、髪をひとまとめにし全体的に軽装のランが現れました。



「おい、土ころ。お前が聞いたすべてを今すぐ話せ。」



挨拶すらせずにランが睦已を睨みつけ、言い放ちました。女官三人はランの変化に戸惑いながらも冷静に座っていましたが身分制度のある世界で生きてこなかった睦已は無遠慮にランに怒鳴ります。



「なんや、娘。お前が土ころと呼んでるわいは神から姫様を守れと言伝られたんや。ワイは神の使い!人間風情が上からもの言うなや。」



怒鳴っていますが睦已は震えているようでした。それもそのはず。今まで怖くてランの前で話せなかったのですから。しかし、ランが睦已の体に上から赤い液体をかけます。



「ぎゃああああああああああああ!!!!」



液体では崩れないはずの睦已が転げ回り、やがて土塊になってしまったのです。赤い液体はただの絵の具ですが、ランの異能は赤いものを操ること。赤い液体を動かし、睦已を苦しめた上で土塊にしたのでした。土塊の中から睦已と墨で書かれた和紙が出てきました。ココナは思わずそれを拾い上げます。この場にいた誰もがランの行動を理解できませんでした。土塊になった睦已を見もせずにランはシルフィに命令しました。



「シルフィ、令暝を呼んで。今すぐに。嫌なことが分かったわ。」

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