自称魔除けの小鬼
睦已をいれた小瓶を囲むように風華、シルフィ、ココナが座っています。睦已がなぜ話すのか。令瞑の目的はなんなのか。わからないことばかりで誰も口を開くことができません。
「おい、水色髪。聞きたいことがたくさんあるのだろう?」
風華のことを言っているのでしょう。しかし風華は睦已を無視し、ココナに話しかけました。
「古代兵器を駆逐しに行ったとき、令瞑と会ったの。あの時はお兄様が教えてくれたと言っていたけど今思うと怪しいわ。お兄様の異能は私よりも弱いはずだもの。」
「そこで睦已が私たちの情報を令瞑に流しているという可能性がでてくるのね。」
睦已がランの前で口を開かないことをみると、令瞑がランを恐れているから。と、とることもできます。
「まぁ、こんな魔除けどころかたくさん魔を運びまくりそうな間抜け小鬼にそんなことはできないだろ。」
シルフィが小鬼を嘲ります。それを風華がたしなめました。
「シルフィも一応は女官なのだから言葉遣いには気を付けてと何度も言ったはずよ。慎みなさい。」
「いいだろ?スミレ様も寝てるんだし。」
ココナの表情が曇ります。自分がスミレにできたことはもっとあったのではないか。そう考えずにはいられなかったようでした。
「、、、、悪かった。けどスミレ様が世間知らずなのは事実だろ。ココナだけが悪いわけじゃない。」
シルフィはココナを元気づけようとしたようですが、周りの空気はさらに重くなりました。睦已も静まりかえっており、もう救いようがないぐらい場の空気は最悪です。
「あなたたち、一応は王家の人間の女官をしているわけでしょう。主への評価が私たちへの評価。私たちへの評価も主への評価。場の空気を凍り付かせるのは女官として褒められたものではないわ。」
とうとう、風華が二人に説教を始めてしまいます。
「女官には公私なんて関係ない。常に気品を持ち、主へ忠誠を誓う。ただの身の回りの世話をするだけならそんなの侍女だけですむわ。けれど、女官がいる理由は?ココナさん、答えなさい。」
ここに広がる風華の独断場。ココナはたじたじになっていました。
「あの、その、主の支えとなるためでしょうか?」
風華は頷きました。
「それもあるわね。では、主が道を外したときは?シルフィ、答えて。」
「そんな主は末代までの恥とならないように自害を促し、私たちも喉を突き、共に死ぬまでだ。」
風華はシルフィの答えを聞き額をおさえました。そこまでの覚悟があるのは美徳なのか風華にはわかりません。
「シルフィ、あなた和の武人みたいなこと言うのね。」
ココナが呟いたのをかき消す風華。
「主を殺すなんて言語道断!死んで解決する問題ばかりじゃないでしょう?!」
「けど、そういう主に何ができるんだよ。」
風華はまた大きなため息をつきます。
「この世で何が悪で何が正義か決めるのは難しい。主君の信じた道なら私たちはついていかなくては。それが女官である私たちの役目。殺すなんて馬鹿な事考えないで。まあ、どうしようもない自堕落ならその人のもとを去るぐらいはするけれど。」
風華の熱弁に若干引き気味の二人。しかし風華は気にせずつづけます。
「私たち女官を女官たらしめるのは、、、、!」
「まだ続くのか、水色髪。」
「女官たらしめるのは家柄、教養、器量、思いやり全てよ!」
睦已が割り込んだのを完全無視した風華。とうとう小瓶が倒れます。そして、中から泣きべそをかいた睦已が飛び出しました。
「なんでそんないけずするんや!わいの正体気にならへんのか!」




