小鬼の仕掛け
一度部屋から退出していたココナとシルフィは風華に呼び出され、元の部屋に来ていました。部屋の真ん中でスミレが倒れているのを見て、ココナは驚きを隠せませんでした。
「、、、、これも考えあってのことですか?」
これまでのランが何かしらの思惑をもってスミレに接していたことを考えるとそう思うのも無理はありません。しかし、ランはココナに驚くほど冷たい声でこう言いました。
「ないわ。でも、安心して。仮死状態なだけだから。洋についたら元に戻す、、、、。」
「安心できるわけがないでしょう?!」
ランの話を遮るココナ。今回は考えすらなくスミレを仮死状態にしたのです。いや、どんな考えがあったとしてもランのしたことは度が過ぎていると風華も含めたこの場の誰もが思いました。いや、考えがあったとしても度が過ぎているとココナは確信していました。
「ラン様、元皇族で王族のあなたは体裁を何よりも重んじられていました。なのに、義娘にこの仕打ちなど、、、、!」
「今日はもう休むわ。あなたたちも下がりなさい。洋に着くまでは皆待機。」
ココナは目に涙を溜め、ランに訴えかけますがランにはそれが全く響きません。それどころか話を最後まで聞くことなく部屋から出ていってしまいます。ココナ達が呆然と立ち尽くす中、瓶のなかに入れられ、動かなくなっていた小鬼の睦已が急に話し出しました。
「仲間割れか、人間ども。」
誰も返事をしません。瓶から出られない小さくて力のない睦已を相手にする余裕などココナ達には残っていません。
「おい、だんまりか?それはあんまりではないか。」
睦已は瓶をなんどもコツコツと叩きますが誰も相手にしません。しまいには風華が瓶に布をかぶせて音を聞こえにくくさせようとします。
「私が話し出したということは私が動く原因が近くにあるということだ。いいのかな?そんな仲間割れをして。」
睦已は土からできた小鬼。睦已の脅しのような一言を聞いた風華は真っ先に令瞑のことが思い浮かびます。しかし、風華の異能で飛行艇の周りを調べますが令瞑の気配はありません。そもそもここは雲の上。伽耶王国の技術があるからこそ飛行艇は飛べているのです。華にも洋にも雲の上に行くための技術は古代兵器をのぞき、存在しないはずでした。睦已のはったりかもしれません。しかし、動いたりしゃべったりするのが常ではない以上、安心できません。風華が警戒する中、ココナがおずおずと話し始めました。
「風華さん、もしかしたらラン様がいらっしゃらないからかもしれない。さっきだってそう。ラン様がいらっしゃった瞬間、こいつは話さないもの。」
「なるほど。その可能性もあるわね。」
風華はココナの意見に同意しました。その場にいたシルフィも納得したように頷きます。令瞑が近くにいるから動くという仮説は否定され、安心した風華は睦已を強く睨みつけました。
「何がしたいの?洋に行くまで私たちは待機という命令が下ってるの。暇だし、あなたには色々話してもらおうかしら。」
睦已はにやりと笑い、一言こういいました。
「睦已太夫と呼べ、と言っただろうが。」




