留守中の出来事
「なんでしょうね。この小鬼。」
「舞姫達の守り神にしては邪悪すぎやしない?異能で作られたのかしら。ほら、ここにくる前に暴れ出したじゃない。」
こんっとスミレが瓶を指で弾く音がします。中の小鬼はびくともしません。
「ここにくる前にも一度話したぐらいですし、たいした動きもしていません。異能でわざわざ作り出すほどの価値ではないと思うのですけれど。」
ココナが小鬼を貶しました。すると中の小鬼が急に暴れ出す音がします。小鬼の体は土なので瓶にぶつかるたびにコツン、コツンと鳴りました。
「あら、急にどうしたのかしら。」
急な小鬼の動きに興味を持ったのか、ずっと寝込んでいたシルフィが起き上がりました。
「何故か急に暴れ出したの。ラン様に報告しないと。お二人とも無事だとは思うけど、少し時間がかかってるわね。」
スミレはまだ戻ってこない2人を心配します。
「大丈夫だとは思いますがお怪我をされるかも。用意はしておきますね。姫さまとシルフィは小鬼から目を離さないでください。」
実際にその通りではありますが、ココナは念のために救急箱などの怪我の治療に使えそうなものを集めるため、部屋を出ました。
「異能で作られたとしたらなんでこんな弱そうな奴がスミレ様にひっついてたんでしょうね?」
「小型だから私に気づかれないと踏んだのだと思う。実際、私は気がつけなかったもの。」
スミレは瓶の中身をじっと見つめながら言いました。すると、中の小鬼が話し始めます。
「そこの人間は賢いようだな。さっきの茶髪の人間よりも。」
小鬼が瓶の中で立ち上がりました。
「我が名は睦已。睦已太夫と呼べ、人間ども。」
人間よりも自分が偉いと言わんばかりの小鬼にスミレは痛烈な一言を浴びせました。
「人間に作られた分際で何言ってるの?」
小鬼はわなわなと震えます。その様子を見たシルフィが笑い出しました。そして、涼であったときの言葉遣いが思わず飛び出してしまっています。
「こりゃあ、いいや。深窓の姫君が世間知らずの小鬼を言い負かすなんてな。」
「あの、シルフィ、、、、?」
「あぁ、悪い。あんまり面白くってな。そうだ、あたしのことはシフィって呼んでくれよ。あんたが気に入った。」
スミレは困惑します。
「シフィ、言葉遣いが悪いわ。」
「あ、いけない。すみません、見苦しいところをお見せしてしまって。」
シルフィがいつもの調子に戻ります。小鬼の睦已もまた動かなくなっていました。
「あー、動かなくなりましたね。スミレ様の言葉がかなり効いたようですね。」
シルフィが口を開けて笑います。スミレはボソリと口にしました。
「ココナと違ってシフィは最低限の品すらないわね。」
今度はシルフィが動きを止めました。
「ただいま戻りました。あら?シルフィが固まってる。姫さま、何かありました?」
「さあ、急に固まってしまったの。体調が悪くなったのかしら。」
帰ってきたココナをスミレは涼しい顔で迎えます。
「、、、、スミレ様は無自覚に人を傷つけますね。」
そう言ったシルフィ。しかし、ココナの顔は青ざめていました。なぜなら、スミレは悪意を持たず人を殺したことが何度もあったから。




