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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
国外逃亡編
35/70

逃避行

「着いたぞ。ここだ。」



ランが足を止めます。目の前には古い居酒屋しかありません。しかし、ただの古い居酒屋に来た途端に小鬼が手足を激しく動かしました。



「小鬼が暴れ出したわ。」



スミレは片手で握っていた小鬼を両手で握り直します。それをみていた風華は思わず言いました。



「まだ持ってたのか?」



「ええ。そこらへんに放っておくわけにもいかないと思って。」



スミレはさらに手に力を込めたときです。



「痛いな!離せ、人間!」



「あなた、喋るの?」



急に喋りだした小鬼にスミレは手の力を緩めます。その隙をついて逃げ出そうとする小鬼。しかし、スミレはまた小鬼を握り直したため小鬼にはどうすることもできません。

一連の流れを見たラン達は不思議そうに小鬼を見つめます。



「惜しいな。このような状況でなければ話す小鬼など、見世物小屋に売り飛ばすのに。」



「仕方がないです。諦めましょう。」



ランがドアを開けた瞬間、カランと音がしました。居酒屋の中はガラリとしていて、誰もいません。



「ここは、一体、、、、?」



「タイハン出身じゃなかったのか?セイナリにまともな商業施設なんてないぞ。大体裏があるか廃墟のどちらかだ。」



風華は不思議そうに尋ねます。 



「タイハンといってもここではありません。うちは貴族との繋がりのある呉服屋です。そうでないと姫さま付きの侍女にはなれません。」



「和は『お嬢様』を徹底的に危険から離そうとするんだな。」



ランが皮肉たっぷりにそう答えました。ココナは悔しそうに手の力をこめます。そんなココナを気にもせずにランは鞄から紙束を取り出しました。その時、さっきまで黙っていたシルフィが話しだします。



「印が本格的に洋に攻め込みました。華は印に手を貸すことに決め、和も参戦します。華の宮殿では姫さまの捜索隊の人数が5000人だったのを2000人に減らしました。残ったのは異能が強いものだそうです。アレを出すのは今かと。」



「了解。華、雲の上だ。シルフィ、頼んだ。」



急に始まったラン達の連携についていけないスミレ達。しかし、スミレはふっと辺りを見回しました。小鬼がまた暴れだしたのです。



「待って。ここ、何かあります。誰かいるのかしら。」



「生き物はいないはずだ。血の流れは見えなかった。」



そう言ったランですが、次の瞬間シルフィは叫びました。



「すぐにアレを!」



「糜哥盂爹熈」



風華が何やら唱えました。紙束は燃え始めます。



「転移します!」



シルフィがそう言った瞬間に居酒屋からスミレ達が消えます。スミレ達が転移したと同時に外から居酒屋が何者かによって破壊されました。






居酒屋を破壊し、ガチャガチャと妙な音を立てながら去っていく"それ"を後ろから見つめる男が2人。



「ほぉ、和の姫が私を撒くのか。しかし、姫の他に4人ほど強い異能の持ち主がいたな。」



「風穣峰からの話だと華の貴族が姫の後ろについているとのことです。しかし今は国境が封鎖されている為、私達捜索隊と印へ向かう軍しか華を出ることができません。ですがここは和。」



身分の高そうな男の名は土令瞑。そしてその従者の翠秋琰。秋琰はもしや、とつぶやきます。思い当たることがあるようでした。



「、、、、今我が国を出ている貴族はほとんどいません。しかし、異能を使いながら我々とは別の人間として生きていける者がいます。」



「陽蘭様だな。しかしあの方が和の姫が逃げることに手を貸すわけがない。そうでなければ陽蘭様は我が国に逆らう反逆者だ。あの聡明な姫がこんな馬鹿なことをするわけがない。何かの間違いだろう。」



令瞑は秋琰のいうことを否定します。



「そんなことは分かっています。しかし、どうも腑に落ちません。この辺りには風家の異能の痕があります。」



「痕?穣峰ならそんなヘマはしない。」



「ええ。だから私は背後に陽蘭様がいることを疑っているのです。微かにですが薄い水色のモヤと宮殿で焚かれている香の匂いがしました。風華様で間違いないかと。」



「風華か。とんだ風家の恥さらし。穣峰も気の毒なものだ。」



令瞑は風華を思い出し、嘲笑いました。



「逃げられるものなら逃げてみろ。姫は我が国のため、廉様に嫁いでいただく。」

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