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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
和の国編
29/70

緊迫

ランの目の前に光とともに現れたシルフィとココナ、そしてスミレ。ランは自分の弟を殺した姫君の顔を見ようと近づいてきます。そして、何も思っていないような笑顔でスミレに言いました。



「初めまして、スミレさん。今回のことは災難だったでしょう。煌がしたことは許されることではありません。今となっては話せない弟の代わりに私の謝罪を受けてもらえないかしら。」



側妃といえどもランはスミレよりも高い立場にいます。スミレには当然受け入れると言う選択肢しかありません。



「もちろん。」



「今回のことの責任は華にあります。本当に申し訳ないことをしたわ。ごめんなさいね。」



腰を折り、最上級の礼をするラン。スミレはその姿を見て心を打たれたようでした。



「顔をあげてください。私が、殿下を殺めたことに変わりはありませんから。、、、、この話はこれで終わりにしませんか?ラン様が私たちをここに呼んだ理由が知りたいです。」



スミレは言えませんでした。ただ殺すのではなく、陽煌を串刺しにした上に、消し炭になるまで焼いたことを。だから、話を逸らしました。



ーー話を逸らすことも貴族の嗜み。アイラもそう言ってた。



スミレはランと話しているあいだ、ずっと微笑み続けていました。しかし、表向きは取り繕うことができても感情までを操ることはできません。スミレにとってランは不気味で今まで会ったことがない異質な存在。恐怖でスミレから少しずつ冷気が染み出します。



「あら、寒くなってきたわね。そうだ、スミレさんにこれを。異能を制御できる石です。もとはイヤリングだったのだけれど、加工し直して指輪にしたの。気に入ったかしら。」



ランはスミレに紅い石の指輪を手渡します。深い紅で、光に当てると反射して光り輝くように削られた石と、その石を繊細に包み込む銀の装飾品。ココナはこの指輪に見覚えがありました。



ーー、、、、アイラ様?



アイラの付けていた赤い石のイヤリング。彼女が片方しかつけていなかったことにココナは気がついたのです。



「ラン様、そのイヤリングはどこで?」



ランは答えます。



「伽耶の古城に滞在した時に見つけたの。草むらに落ちていたのだけれどね、不思議なことがあったのよ。」



ランが話そうとすると、お茶を入れに席を外していた風華が戻ってきました。





「この焼き菓子は開口球という和の南の町のおかしです。確か、チュウジョーという名の。」



ココナはハッと思い出したように言いました。



「チュウジョー?風華様、開口球とは砂糖揚げのことなのですか?」



「よくご存知ですね。そうです。それを華ではそのように呼んでおります。油で揚げたもので、和では苦手な方もいらっしゃるとは思いますが、ラン様は気にいると思いまして、、、、。」



風華がさらに話そうとするのをシルフィが手で制しました。ランの話が途中だったからです。



「あら、失礼。」



風華は身分が下のシルフィに手で制されたことに怒りを見せず、ココナと共に下がりました。



「ラン様の従者はココナと歳が近いはずなのに、貴婦人の品格がございますね。」



風華を見てスミレは感心していました。



「彼女は風華。名門、風家の娘よ。華の国では皇族の従者は四家から選ぶの。きっと貴族の令嬢だからこその品格ね。それはそうと、その不思議なことというのが、そう、その石に呼ばれたの。」



石に呼ばれた。この言葉が引っかかるとスミレは聞きました。



「華の国は石も言葉を話すのですか?」



華の国は異能を使う人間が住む場所です。スミレは話す石があってもおかしくないと思いました。しかし、ランはスミレの話を聞いて笑い出します。



「まさか!流石に石は話さないわ。でも、確かに呼ばれたの。古いイヤリング。せっかくの銀の装飾もくすんでいて、石にも傷があった。けれどこのときの私は石が欲しいと思ったの。何故なら草むらの影からきらりと光ったのだから。普段は運命なんて信じないけどこの時ばかりは信じたわ。」



ランはそう言って窓の方を向きます。そこは伽耶王国の古城がある方角でした.


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