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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
和の国編
27/70

ココナの説得

「姫さま、大変です!!とりあえず逃げてください。」



一度出ていったと思えば、また牢に勢いよく入ってきたココナはガシャリと音を立てながら、ドアに手をかけます。広場近くで聞いていた婚約の打診。罪人の娘には徹底的な報復が待っていることをココナは知っていました。華の国は格を、歴史を大切にします。筋よりも身分。どんな理由があろうと陽煌を殺したスミレに良い扱いなどありえないことだったのです。



「なんですか、その品のない言葉遣いは。しっかりして。」



はぁ、とスミレはため息を付き、注意しますがココナは話を聞きません。相変わらず牢の鍵を開けようとしています。スミレは涼と話す間に、忘れていたことを思い出して、苦悩しました。



「ねえ、ココナ。私は罪人なのよ。陽煌様を殺してしまったのよ。取り返しのつかないこと、したのよ。」



そんな私が逃げていいの?というスミレ。感情が急に戻ったことで人格が不安定になっているようでした。しかし、ココナはスミレの手を取り、彼女を励まします。



「姫さまは確かに陽煌様を殺してしまいました。しかし、あれはどう考えても事故だったんです。姫さまは殺そうと思って陽煌様を殺害したわけではありませんよね?」



「それはそうだけれど、、、、。」



ーー和では過失であったとしても罰せられるわ。ココナがそれを知らないはずないのに。



自分の「こうあるべきだ」という考えから大きくズレた行動をする周りの人々に、流石のスミレも疑い始めます。



「ココナ、華の法律にそんなものはなかったわ。しかも私が命を奪ったのは陽煌様で、皇太子殿下よ。ただで済むわけがないじゃない。受け入れなければいけないわ。」



ココナはにっこり笑います。



「はい。しかしそうも言ってられなくなりました。姫様は過失、そして殿下が引いた引き金のせいで人権を失いたいのですか?そんな目に合うのは償いではありません。償いという名の利用です。」



ーーココナがいつもと違う。怖い。けれど、私は王女だ。ココナの目の前で恐怖は出せない。王家は感情を表に出さない。



今は怖いと思っていても牢の中にいるので氷の柱は出てきません。スミレはその事実にだけは安心しました。ココナがまたスミレに言います。



「姫さま、とりあえずこの牢を出ましょう。」



簪を抜いて牢の鍵穴に差し込み、開けようとします。しかしスミレはそれを拒みました。利用されることがわかっていながらスミレにはどうしても譲れないことがありました。



「だめよ!私が痛みを感じてしまったら、また誰かを傷つけてしまう。お願い。ココナを傷つけたくないの。」



しかし、ココナは悲しそうな顔をします。



「すみません、姫さま。何としてでも姫さまにはここから出ていただかないといけないのです。先程、和から知らせが届きました。姫さまは王家から絶縁。華に渡すとのことです。陽怜様は陽雅様が姫さまに求婚をすることで姫さまを手に入れようとしていました。しかし、和が無条件で渡すと言ってきたのです。姫さま、今逃げなければここで貴方の尊厳を踏みにじり、永遠にここで飼い殺されることになります。姫さま。今、牢の鍵は私が持っています。逃げましょう。」



「無駄だよ。少なくともあんた達だけではここから出られない。」



涼が急に気配を表します。それに驚くココナとスミレ。ココナが涼に尋ねます。



「何者だ?!」



「あたしは涼。勝手な理由で投獄された可哀そうな少女だよ。あとあんたも何者だよ。和の女官はそんな泥棒みたいなマネするのか。」

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