サイドストーリー 目的と叱責
「全部話してやる。だから、黙認しろ。あたしは絶対にあいつを殺さなければいけないんだ。そのためにはあんたが行き着いたコウ家の情報が必要だ。もともとそれであたしはあんたに協力していた。どうだ。悪くない条件だろ。あの時のことがわかるんだ。何てったって私の目の前で惨劇は起こったからな。」
ランに詰め寄る涼。彼女は自分がランに勝てないであろうということは理解しているのです。しかし、それでも、涼にはやらなければいけないことがありました。
「涼、貴方が優秀なのは知っているわ。でも、それ以上に、貴方を野放しにすることは危険なの。説明したでしょう。華はメチャクチャになる。異能が効かないことは王家への不信感に繋がるわ。だから一つの不安要素も残してはいけないの。」
真実を手に入れるか、不安要素を残さず、華の国に尽くすかの二択を迫られるランは僅かではありますが戸惑いを見せました。
「どうする?私はあんたに情報を吐かされる前に死ぬことだってできるんだ。」
ランに更に脅しをかける涼。しかし、この言葉でランは冷静さを取り戻します。
「死ぬほど殺したい人間がいる。そんなあなたが死ぬことなんて出来ないわ。おかげで冷静になれた。そう、よね。使える手は何でも使わなくては。」
ランが笑顔になると同時に涼の体にさっきまではなかった激痛が広がります。苦しさに顔を歪めることしか出来ない彼女。ランはこのまま死なない程度に涼を痛めつけるつもりでした。ところが、先程まで部屋から離れていた風華が戻ってきたのです。部屋に駆け込んだ風華はランに向かって、
「アイラ・コウが死亡しました。」
と伝えました。風華自身もアイラの死には戸惑いを隠せないようで、
「しかも、老衰だそうです。」
と、死の理由もあまり理解できないようでした。アイラの死亡はランに衝撃を、涼には絶望を与えます。痛みに耐えながら声を絞り出しました。
「嘘だろ。あいつは私が殺すって。なんで楽に逝くんだよ。」
「ねえ、涼。これであなたには殺す相手がいなくなった。知ってることを全部白状してください。」
ランは涼にかけた異能を解きます。しかし、涼はキッとランを睨みます。
「兄さんを殺したやつはアイラだ。でも、その裏ででかい組織が動いている。アイラの親玉だ。そいつを潰すまで私は観念しない。あんたにもう一度聞く。あたしはその組織の情報も持っていて、なおかつそこに入ることができる。どうする?王妃が死んだ理由に近づくことができるぞ。」
ランは一瞬考え込み、決まりが悪そうに決断しました。
「、、、、風華。確か洋のベールがあったでしょう。それと、退職した女官の古着を持ってきて。」
ランは風華に命令します。涼と協力関係になることを決めたのです。急なことでありながら風華はすぐにベールと古着を取りに行きました。
「涼、あなたに新しい名前をあげなくてはね。やらなくてはいけないことがたくさんあるけれど、洋の者に涼という名前はおかしいもの。」
ランは微笑みますが、考えていることを読み取ることができません。しかし、涼は何を考えているかわからないランに不満を言うのです。
「涼という名前は兄さんの清という字と合わせて清涼、となる。母さんが唯一あたしたちにくれた贈り物だ。兄さんも何も残すことなく、あの女に殺された。残ったのはあたしが兄さんの妹であるという印の涼という名前だけだ。取り上げないでくれ。しかも、あたしは洋の者じゃない。」
「その茶色の髪は間違いなく洋の髪よ。お父様は洋の者だったのね。いい?あなたは指名手配犯よ。牢から脱獄した愚かな女。それがあなた。洋の名を名乗り、姿を変えるのは最低限の行いよ。私の目的はコージ様の命令に従い、レイラ様の死の原因を探ること。あなたに自由を与えるためではないの。それだけは理解して。」




