サイドストーリー 婚約の打診
「アイラ コウは何者なんだ?我が国にルーツを持つものだろう。コウ家なんてあったか?」
「言霊使いらしいではないか。でも、その一族は神官の一族である巫家ではなかったか。」
「それよりも和の姫だ。何故、異能を持ってる?!母は金の髪を持つ洋の国にルーツを持つはずではないのか!」
華の国の王宮では突如、老衰で亡くなったアイラとスミレの異能の暴走で混乱に陥っていました。その時、陽怜の言葉が彼らの声を抑えました。
「煌の死は国にとっても大きな打撃だ。しかし、姫君が月家の異能をもつ者であるのなら私はこの国に迎え入れ、雅の妃としよう。」
広場中にざわざわと話し合う声が響きます。さっきまで広場は死罪を求める声が多数でした。しかし、煌の父親である陽怜が出した案はスミレを妃として華に受け入れることでした。
「何故ですか。煌様を殺したのですよ!我が華の国の皇太子を!どう考えても死罪でしょう。」
大臣の1人が叫びます。彼は煌の教育係を勤めていました。教え子が殺されたことへの悲しみと怒りで顔は赤く、頬は涙で濡れていました。しかし、心から叫んだ大臣には一瞥もくれずに陽怜は高らかに言葉を発します。
「聞けば、煌が姫君に2人きりになろうとなど持ちかけたそうではないか。しかも、姫君に勝手に触れた上に姫君の異能を止める何かを解いたという。煌が姫君の力を暴走させたのだ。それでも姫君のみが悪いというのか!」
広間に広がった声は一瞬にして鎮まりました。皇帝の言葉は絶対です。しかし、その沈黙を破ったものがいました。
「じゃあ、姫君は雅にじゃなくて私にください。」
扉を自分で開け、洋の服に身を包み、艶やかな黒い髪と、吸い込まれそうな黒い瞳という、和の国の王家の特徴を持った青年が広場に入ってきます。彼は華の国のタブー。生まれるはずのなかった人間。生まれてはいけなかった子供。煌が亡き今、皇太子となった雅は彼をにらみます。
「廉、、、、。何故、こんなところに。お前には伽耶王国を与えただろう。」
陽怜は廉に向けてそう言い放ちます。王国一つ与えても惜しくは無いほど手放したかったのがこの廉という青年。彼は陽家の生まれでありながら苗字を持ちません。
「私が伽耶王国の王だからこそ、ですよ。実際は領主ですがね。あんな、でかい田舎。でも月家の異能を持つ姫といえば、伽耶王国を立ち上げた一族の再来。領民もさぞかし喜ぶでしょうよ。」
冷たく笑う廉。スミレは自分を取り巻く環境の変化をまだ知りませんでした。




