女官の変死
監守に無理を言い、牢に入り込んだココナはスミレの元に即座に向かいました。そして誠心誠意謝罪します。アイラの言霊でその場を離れるに至ったことをココナとフタバは知りません。こうなったのは自身のせいだと責め続けていました。
「姫さま、こんなところで、、、、。すみません。私が姫さまを1人にしなければこんなことにはならなかったのに。」
「謝らないで、ココナ。それにフタバは大丈夫なの?」
スミレは自分が陽煌を殺した事実は知っています。しかしその感覚はありません。だから自分の身よりも他人を案じる余裕がありました。
「フタバはずっと取り調べを受けています。アイラ様のことで。私は商家の出身で、貴族同士のやり取りには邪魔になるのです。フタバはその点、トーケイの貴族。安心して任せています。」
陽煌殺害の件についてもフタバが取り調べを受けていますが、それは伏せることにしました。それからさらに続けます。
「姫さま、落ち着いて聴いてください。ここは姫さまの異能を止めることはできますが、姫さまの異能は未知数。しかも、感情を出すことにもなれているわけじゃないので本当に何が起こるのかわかりません。そして、それぐらいのことが起こっています。」
「どう言うこと?」
スミレは眉を少し顰めます。自身の異能についてほとんど理解していないのです。
「アイラさまが亡くなりました。死因は老衰だそうです。部屋で無くなっていた女性はアイラ様で間違いないということでした。」
「アイラが死んだ?しかも老衰で?」
スミレはアイラの皴のない白い肌、黒髪のようで、光に反射すると蒼く見えた艶のある髪を思い出します。どこからどう見てもアイラは老衰で死ぬ、という年齢ではありません。
「原因はわかりません。しかし、確かに、アイラ様の姿を確認したところ、アイラ様はとても年老いておられました。」
異能で年齢を偽っていたが限界が来たのではないか、と。という言葉がスミレの耳には入ってきませんでした。なんせ、今までアイラに助けられていたからこそスミレは感覚がないことを隠し通すことができたのです。スミレの異能が解放された今、アイラのサポートなしで物事が進められるとは思えませんでした。落ち着けと言われてもスミレは落ち着くことができません。しかし、幸いというべきか、華の国の牢の力でスミレの力が出てきてくることはありませんでした。




