牢の中
スミレは城の地下牢に連れて行かれていました。そして、牢に入った途端に眠らされ、手足を縛られたのです。目が覚めたとき、スミレは手足に激痛を感じました。
「、、、、痛いっ。」
強い痛みを感じますが、火は飛び出しません。
「何も出ない、、、、?」
スミレは驚きました。しかし、そんなことはやがてどうでも良さそうに笑顔になったのです。
「もう、傷つけなくていいのね。」
そう呟いたスミレに話しかける少女がいました。少女は向かいの牢から話しかけてきているのにもかかわらず、姿は見えません。
「何も知らないんだな。牢の中で異能は使えない。」
「貴方は?」
スミレは突然話しかけてきた姿の見えない少女に、その言葉の意味を聞かず名前を尋ねました。和の国では身分の高い人に話しかけるにはまず挨拶をする必要があります。その習慣は他の国も同じこと。だからスミレは話を無視して、まず挨拶をさせようとしたのです。
「あんた、人に名前を聞くんなら自分が名乗ってからにするんだね。」
少女はそんなスミレの意図には気が付かず、こんなことを言います。
ーー違う文化の国の人かしら。それとも国民たちはこんな感じなのかしら。口ぶりからしても貴族らしくないわ。
「何を黙ってるんだ?」
「失礼。文化の違いを目の前にすると驚いてしまって。」
すると、少女は信じられない、と呟いた後、こう言いました。
「あんた、下町出身じゃないのか?!」
「下町?」
「嘘だろ。ここには下町とか身分が低い人間しか入らないんだ。国家転覆を図るようなやつでさえ私たちよりも良い部屋で繋がれる。異能が使えなくなってるのは同じだけどな。」
少女は何度も考えます。しかしスミレが貴族、そして和の国の王族ということを考えつくことができません。とうとう少女は折れ、名を名乗ります。
「あたしは涼。リョウでも何でも好きなように読んでくれ。」
「私は、、、、。」
スミレも名乗ろうとします。
ーー私が王族ということを話してもいいのかしら。でも、涼は本当のことを話してくれた。
ここでもスミレは疑うことを知りませんでした。涼が本当のことを話しているという根拠もないのに。
「私はスミレ イマガミ。」
「イマガミ?ああ、和の国出身か。ならここにいるのもわかる。あいつらのことだ。外国の人間なら問答無用で庶民の牢に入れる。」
それから涼はふっと笑います。
「和の国にはあたしも言ったことがある。あそこは良い国だ。異能を持っているだけで捕まることはない。」
寂しそうな声色の涼を、気遣うということを知らないスミレは彼女に話しかけます。
「涼様は何の異能を持っていらっしゃるのでしょうか。」
「ほっといてくれ。今はそんな気分じゃない。」




