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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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それぞれの想い

セトが女の心がわからないポンコツすぎで思わず酒場を飛び出したエリー。


ヴァレリアは呆れた声を上げてセトを見るのだった。

「あーあ、セトがネフティスさんを擁護するようなこと言ったからエリーが拗ねちゃったじゃないですか」


 ヴァレリアはセトの方を見て呆れたように言う。


「エリーは強く見えるけど繊細なんです。二人ともそれなりに長く過ごしていながら何故それがわからないのですか? 好きっていう気持ちだけじゃダメなんです!」


 それを聞いて店の端で座っていたレクターが思わず吹き出す。それをお前が言うのかと。


「セト、エリーがどれだけ不遇な幼少期を過ごしてきたかご存知でしょう? その中でエリーはずっと我慢を強いられ、強くならざるを得なかったのです」


 ヴァレリアはネフティスの方をチラッと見る。


 離婚したとはいえこの方が元妻だったという事実だけで少なからずエリーは心に傷を負っているというのに。


 ヴァレリアは他人の事になると色々と気持ちが分かるらしい。レクターは首の後ろを掻き、聞こえないようにため息を吐いた


「ネフティスさんにも色々あったのでしょうが、お金目当てでセトと結婚したという事実は、幼少期を苦労だけで過ごしてきたあの子には耐えられなかったのです。多感な時期に半ば捨てられるように売られたあの子には辛すぎる事実です。エリーはそんなに強くないんですよ」


 それを聞いてセトの顔がサーっと青くなる。


「ッ‥‥‥! お、俺は何て事を。‥‥‥エリー!!」


 ガタンバタンと大きな音を立てながらセトはエリーの後を追った。


「さてネフティスさん! 貴女は悪気はないのでしょうけど、エリーとは相性最悪ですので、当分エリーとは会わせませんわ。エリーは私と一緒にオシリスさんの家に帰ります」


 と言うと、ヴァレリアもさっさとレクターの方に足を向けた。


「オシリスさーん、設計図は貴方に任せるわ!」


 ヴァレリアはそう言ってオシリスに手をひらひらと振る。


「んー。おう! 任せとけ」


 ヴァレリアの言葉に、了解と言うようにオシリスも手を振って応えた。


「‥‥‥。オシリス。私、エリーさんに悪い事をしてしまったわ」


 しばらく黙っていたネフティスが、申し訳無さそうに口を開く。


「んーそうだな! ネフティスは言動ひとつひとつに配慮が欠けてる! まぁ一度言った事は戻せないし、反省してるなら直せばいい、お前も根は悪いやつじゃないんだ。エリーもその内わかってくれるさ。それより設計図の構想を手伝ってくれ、お前がメインで踊るんだからな」


 ドキッ!!


【それから、セトのことはもう何とも思ってないから!あ、あたしが好きなのは、オシリスだから】


 ネフティスはオシリスに自分の気持ちを伝えていなかった。


(思えば、あたしはエリーに嫉妬していたのかもしれない‥‥‥。オシリスに頼られて、何でもできるあの子に)


【エリーありがとな、頼まれごとをしてくれて。エリーが来てくれてから店の細々したことがスムーズに出来て助かるよ】


 ネフティスはぎゅっと目を閉じる!


「エリーは何も悪くないのに、ただ仕事をこなしていただけなのに。あたし、なんて馬鹿な事をしたのかしら」


* * *


「レクター? お待たせしました! 私、ケルベロスのお散歩に行きたいですわ! ユーリが居なくて、寂しい思いもしてるでしょうし」


 ヴァレリアは葡萄酒をちびちびと飲んでいたレクターに話しかける。


 ヴァレリアの足元を見ると、ケルベロスが安心したようにヴァレリアの足元で寝ていた。


「ケルベロスはだいぶ老犬だろう? 散歩など行って大丈夫なのか?」 


「あぁ、そっか」


 ヴァレリアはそれもそうだと言わんばかりに顎に手を当てて考える。


 その時ケルベロスの三つの頭の内一つが動いて口を開いた。


『サーカスに出すには歳を取っているってだけだ、まだワシは現役バリバリじゃ! 散歩はワシも行きたい! セトが時々連れて行ってくれたが、あいつは金が絡まんと動かない奴でな! 金もでんのに何故ワシを散歩に連れて行かんといけんのじゃ! て毎回ブツクサ言いよったわ、ワシを完全になめとるよあいつは!』


 ヴァレリアはそれを聞いて笑った。


「ハハ! ケルベロスといいエリーといい、二人ともセトにだいぶ当たりがキツいですわね!」


 まぁエリーを傷つけたのは私も許せませんが。


「うーむ、言われてみればセトは鈍すぎるんだよなぁ。エリーやユーリの方がよっぽど大人で空気も読める」


 レクターがそう言うと。


『ワシから見れば、どいつもこいつも似たり寄ったりだと思うがな。ユーリ以外は』


 ケルベロスがそう言うと、ヴァレリアとレクターはお互いにどこかしら心当たりがあるのか。顔を見合わせ、黙ってしまった。


『ハハハハハ! お前らはほんとに面白いな!!』


 ケルベロスの老犬とは思えない豪快な笑いが、店中に響いた。



セトボロクソでワロタ。


しばらくこういうほのぼのした話が続きます


ここまでお読みくださってありがとうございます。

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