フランシスとガルシア
ヴァレリア達がザダクに遭遇する少し前。ユーリはガルシアにある場所に連れて行かれていた。
ヴァレリアとレクターがザダクに遭遇する少し前。
* * *
「それではユーリには覚えたてのフランシスの魔法を見せてもらおうかな〜」
ガルシアはそう言って、小さな城から離れた場所にある、広大な敷地にユーリを案内した。
「ここは、私がいつかフランシスと魔法対決をしようと作った場所だ。結局使う事はなかったがな‥‥‥」
ガルシアは寂しそうに呟く。
ここで先王と僕のお父さんは、魔法対決をするつもりだったんだ。僕はまだ生まれてなかった頃の話だろうけど、せっかく作ったのに先王はお父さんと対決できなくて。きっとさぞ寂しかっただろうな‥‥‥
ん? 待てよ? ユーリは首を捻った。
「そうだ! お父さんの力を受け継いだという事は、僕はお父さんになる事もできるんじゃないですか? ええと、正確にはお父さんは生きていないけど、確かお父さんは変身術も覚えていた。お父さんの記憶にあったはずです」
僕は興奮して先王の方を見た!
「おお! それはそうだな?できるのかユーリ!」
先王も子供みたいな顔をしている! よっぽど嬉しいみたいだ!
「お父さんみたいにはうまくいかないかもしれないけど、頑張ってみます!」
ユーリはフランシスから受け継いだ記憶の中を探り出す。変身術の呪文を‥‥‥
『アロヌメラーレ!』
ボフッと音がし、ユーリは煙に巻かれた。
「ユーリ! 大丈夫か?!」
「ゲホゲホ、久しぶりだなガルシア」
煙の中から現れたのはユーリではなく、フランシスだった!
呆気に取られていたガルシアだったが、自分の目の前にいるのが本物のフランシスだとわかって思わず歓喜する。
「フランシス!! 本当にフランシスなのか!? 久しぶりだな! 話したいことがたくさんあったのだ! ユーリは?ユーリの意識はないのか?」
「ハハッ、今はいないよ。まぁいないと言うか、正確にはユーリと意識が交代したんだ。ユーリは、ただの変身術だと思っているが、正確には違う。『アロヌメラーレ』は「蘇りという意味があるんだ」
「で、ではお前は正しくフランシスなのか??」
フランシスは微笑んだ。
「ありがとうガルシア、約束を守ってくれて。おかげでまた君に会えた」
フランシスの言葉に感極まったのか、ガルシアはフランシスを抱きしめた!
「フランシス! フランシスなんだな! お、俺がどんなに会いたかったか! この広場を見ろよ! お前と魔法対決をするためだけに特別に作らせたんだぞ!」
「ハハハッ! ガルシアは変わらないなぁ、負けず嫌いなところが全然変わらない」
「フランシス〜! それだけお前に会いたかったんだよぉー!」
「ハハハ! 僕も会いたかったよ! あの石には僕の意識も閉じ込めてあったから。いつかガルシアが封印を解いてくれるのを信じてた!」
ガルシア、やはり君は僕の太陽だ。
「フランシスゥゥ〜!!」
ガルシアはフランシスの頬にキスをしようとした。
「うわ馬鹿やめろ! 君がどれだけ僕に会いたかったかわかるけど‥‥‥」
フランシスはガルシアの唇を遠ざけたが、その顔は笑っていた。フランシスもガルシアに会いたかったのは同じだった。
「ハハハッ! 冗談だ! ちょっとふざけてみただけなんだ! なあなあそれより、魔法対決をしようじゃないか! 舞台は整ってるんだから!」
そう言うガルシアの指先を追うと、魔法の暴走を防ぐための魔法陣、加えて地面には火・水・風・土の四大元素に霊を加えた5つのエレメントを模した五芒星が記してある。
「ずいぶん本格的な魔法陣だな」
「魔法学校のは王の権力をもってしても借りられなかったからな! でも俺の権力でほぼ完全に復元したぜ!」
「ハハハ、ガルシアは権力の無駄使いしすぎだよ」
「仕方ないだろ! それほどお前と決闘したかったんだ! 結局一度もお前に勝てないままで、お前は居なくなってしまったのだから! 無駄にならなくて本当によかった!」
フンと鼻息を荒くすると、早速ガルシアはフランシスと魔法対決をすることにした。
「いいか! 五芒星の端に着いたら術を詠唱するんだぞ!」
「相手を殺すような術は禁止」
そして‥‥‥
「「禁術は使わないこと!」」
二人はそう言ってお互いに笑い合った。
二人は魔法学校にいた頃の記憶を思い出していた。共に笑い合い、時には(主にガルシアのせいで)先生に怒られたこと。ガルシアが失敗した時には、フランシスが庇ってくれたこと。
「懐かしいなぁ」
「これからもずっと会えるぞ、先程の呪文を詠唱すればね!僕の体は少し透けているが」
二人はそう言いながら、五芒星の端にお互い後ろ向きでたどり着いた
「「三、二、一!!」」
「インテリオール!!」
「グルータ!!」
フランシスとガルシアはほぼ同時に詠唱した! フランシスはインテリオール。ガルシアはグルータ。
バチバチとお互いの魔法がぶつかり合う!
ガルシアは青、フランシスは赤の魔術がお互いぶつかり合って一歩も譲らない!
「ハハッ、ガルシア! なかなかやるじゃないか!」
「お前こそ! 全然、衰えていないぞ!」
やがて赤と青の光は上方で消え、やがて燃え尽きてしまった。
「ハハッ! 相打ちだなぁ〜。チェッ‥‥‥」
ガルシアが少し残念そうに舌打ちする。その様子を見てフランシスが不思議そうに聞く。
「どうして? 初めて僕と相打ちになったのに」
「お前は、俺の理想だったからさ。お前に勝ちたかったけど、本当は負けたかったのかもしれない」
「ハハッ、なんだよそれは、ガルシアが強くなっただけだろ。まぁ、僕も少しは手加減したかもしれない? かな?」
「なんだよ! やっぱ手加減してたんだな〜!?」
ハハハッ! と、二人は笑い合った。
それからもたわいもない話をし、二人はまるで魔法学校にいた時を取り戻すようにはしゃいでいた。
「フランシス、お前が何故突然死んでしまったのかを、俺はずっと考えていたんだ」
ガルシアの言葉を、フランシスは頷きながら無言で聞く。
「あの時俺にもっと力が有れば、魔力があれば‥‥‥。ユーリだけでなく、お前も助けられた事だろう!」
でもフランシスは長い間を経て、ユーリと引き合わせてくれた! そして俺に預けた石で、またお前にこうして会う事ができた!
「これを奇跡と言わずして何と形容しようか?! フランシス!」
ガルシア! そうだよ、僕はずっと待っていた。
「俺たちの友情は、永遠だな!」
フランシスは微笑んで言った。
「ハハッ、ガルシア。今さら何を言っているんだ!? 僕はずっと待っていたんだよ。ガルシアなら僕をいつまでも忘れずに呼んでくれる事を!」
ガルシア、僕は信じていた! 君ならいつか、僕を呼んでくれる。
何故なら君は僕の太陽だから。僕の行く道を、いつでも明るく照らしてくれる‥‥‥
「僕たちの友情は、永遠だと!」
それを聞いてガルシアはポカンとしていた。
そうか‥‥‥。フランシスは私にずっと会えると信じていたのだな。フランシスはずっと待っていたのに。
「フランシス‥‥‥待たせてしまったな、俺もお前に会いたかった!」
そう言うとガルシアはフランシスの肩を抱いた!
「フランシス! 俺たちの友情は永遠だな!」
「ああ、永遠だよ!」
二人は力強く握手をした。二人の目にはうっすら涙の膜が張っていた。二人ともそれに気付いていた。
気付いていながら、お互いに敢えて何も言わなかった。
ユーリに着いて来ていたヴァナルカンドが、ヴァレリア達が出て行った方向を見て唸る。
「ヴァナルカンド?」
気付いたガルシアがヴァナルカンドを撫でる。
『レクター達が出て行った方向がおかしい。双子達と同じ臭いがする、双子達とは比べ物にならないほど強く、禍々(まがまが)しい臭い‥‥‥』
双子達‥‥‥執念でヴァナルカンドの口を閉じ、その咆哮を閉ざし続けた。
「レクター‥‥‥。ヴァレリア‥‥‥」
ガルシアは心配そうに呟き、ヴァナルカンドと同じ方向を見た。
ガルシアがフランシスに対してだけ「俺」呼びなの好きです。
今日は七夕ですね、出会えないと思っていた二人が出会えましたね。こんな七夕もいいと思います。
男同士の友情っていいですよね。
友達からフランシスがあっさり生き返ったのショックと言われました( ;∀;)私もそう思います。
フランシス私が好きになっちゃったのぉ〜ごめんなさい!
いつかこの二人の魔法学校時代での番外編も書きたいです
ここまでお読みくださってありがとうございます。