新しいヴァレリア様
持ち前のポテンシャルの高さとズレで、長い髪を失った事を何とも思っていない様子のヴァレリア。
その様子を見て、レクターとニーズヘッグは安心するのだった。
階下に降りてきたヴァレリアはお風呂で体も洗い、エリーに髪も切ってもらい、サッパリとしていた。ぼろぼろになった装備は、今から買いに行くらしい。今ヴァレリアは普通の町娘のような格好をしている。
長かった緋色の髪は、顎くらいにバッサリと切られていた。
俺は幾分かショックを受けた。馬に乗って、駆けて、その度に煌めいていた烟るような緋色の長い髪はもう見れないのかと。
俺の様子に気付いてエリーが謝る。
「ごめんなさい、思ったよりザダク? の血液がしつこくて、こんなに短くなってしまいました」
ヴァレリアはエリーに何故自分の髪の毛がこんな事になったのかを風呂場で説明していた。
「‥‥‥ヴァレリア」
「いいのいいの! 朝のお手入れが楽になったし、それにこんなに綺麗にしてもらって嬉しいわ!」
俺はたまらなくなって思わずヴァレリアを抱きしめてしまった。
「ヴァレリア、可哀想に。こんな男のような髪型になってしまって、もうあの美しい巻き髪や、飾り花は見ることができないのだな」
俺がそう言うと、たちまち不機嫌になったヴァレリアがべしっと俺の手を振り払う。
「私はこれでいいのですわ! 大体あの髪の毛のお花の飾り付けも本当は嫌だったのですわ、エリーに言われて仕方なく‥‥‥」
そこまで言ってヴァレリアはこちらを振り向いた。
「‥‥‥レクターは、短い髪の私はお嫌いですか?」
ドキッ!!
ヴァレリアは上目遣いで聞く。可愛い! 言われてみれば、ヴァレリアには短い髪も似合うな‥‥‥。いや、長かった時も美しかったが、これはこれでヴァレリアの童顔が引き立つというか‥‥‥
「いや、全然問題ない。可愛い」
そう言って俺はもう一度ヴァレリアを抱きしめた。ヴァレリアのふくよかな巨乳、細い腰、匂い、全てを堪能する。風呂に入って来たからかいい匂いがする。
「うーん、ヴァレリアの匂い〜」
「もう。レクターは変態みたいですよ、一応一国の王子なのですからもう少ししっかりしてくださいよ」
「んーすまん、もう少しこのまま‥‥‥」
何故だろうか、ヴァレリアの前では気が緩む。本当の俺で居られる。居心地が良い‥‥‥何より。
「生きていてよかった、ヴァレリア」
「‥‥‥うん、レクターが助けてくれたから」
どちらかと言うこともなくお互いが顔を寄せ合った時、ニーズヘッグが割って入ってきた!
『ブッブー! ハズレー! 残念でした! お前ら俺様の存在を忘れてんじゃねーよ! 俺様がいる限りイチャイチャは禁止だからな』
「ニーズ! あなたも無事だったのね!」
『へっへ〜、俺様を誰だと思っている? 今イチ強キャラ感出せてないけどなかなかの魔力の持ち主なんだぜ! 今回のヴァレリアの一命を取り留めたのも、半分は俺様のおかげなんだからな!』
「ふふっ、ありがとうニーズ」
そう言うとニーズヘッグに頬擦りをするヴァレリア。
イッラァ〜(怒)!
「ニーズそこをどけ! 俺もヴァレリアにすりすりされたいぞ!」
『レクターは俺様程小さくないじゃないか! この乳と頬擦りは俺様だけの特権なの!』
ムカムカムカ(怒)!!
「ヴァレリアの全てが(全てはいずれ俺のものになる予定)俺なのだ!! ニーズヘッグ! そこを離れろ今すぐに」
意味のわからない事を言い放つレクター。ハァ、とニーズヘッグも呆れている。
「二人とも何を子供みたいな事を言ってるの!? あ、そういえばエリーに面白い事を聞いたんです。エリー??」
エリーはとっくに場の空気を察して他の場所に移動していた。
「お嬢様、ここからオシリスのお店までは歩いて行けますわ。馬はこのまま繋いでおきましょう」
「ありがとうエリー」
残された俺とニーズヘッグはポカンとしていた。
「ま、まぁなんだ。ヴァレリアは生きているし、元気だしな。一旦休戦だ」
『休戦も何も、俺様とヴァレリアが契約してる時点でレクターに勝ち目はねーよ!』
「なんだとォォ!?」
「なんだか後ろが騒がしいですわね」
「ハァ、どうせしょうもない事ですよ。それよりヴァレリア様、生きててよかったですわ」
ぎゅーっとエリーがヴァレリアの腕に自分の腕を絡ませる。エリーの目元には涙が滲んでいた。
「ヴァレリア様、失ったものが髪の毛だけで済んでよかったですわ。ヴァレリア様に何かあったらと思うと私、私‥‥‥」
「エリーまで変な事を言うのですね! 私にはレクターとニーズヘッグがいますから大丈夫ですよ!」
「ええ‥‥‥。グスン」
その様子を羨ましそうに見る二人‥‥‥
どちらかと言うとでもなく目が合う王子とニーズヘッグ。
慌ててフンっという感じでお互い目を逸らした。
エリーの勝ちですね。何がとは言わんが。
ところでユーリとガルシアとヴァナルカンドはどうしてるんですかね?
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