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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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忍び寄る影

ついに自ら魔剣の正体を明かした王子。

ヴァレリアは特に驚く事もなくあっさりと受け入れるのだった。

セトとエリーの砂吐き劇場を挟み、ヴァレリア達はそろそろ戻ろうかという話になる。

「さて、用事も済んだしそろそろ戻るか! テセウスにも地下室を渡したしな」


「ユーリはどうしましょう? 魔法に興味津々の先王様に連れて行かれてそのままなんですが?」


 それを聞いてレクターは困ったように首の後ろを掻く。


「あーそっか。親父の魔法好きにも困ったな」


「ヴァナルカンド。ユーリを任せていいか? 親父の気が済んだら吠えて知らせてくれ」


『ハハハ! お安い御用だ。俺も石を継いだユーリの魔力を見てみたいしな』


 こうして私たちは、ヴァナルカンドと先王にユーリを任せてセトとエリーの元に戻る事にした。


「そういえば、レクターは一応王子ですけど大丈夫なんですか?」


 いとも簡単に城を出たレクターだが、一応この城の跡取りである。


「ああ、心配いらないよ。テセウスがしばらく代わりに政務をしてくれる事になったからな。あいつは普段は地下室から滅多に出ないが、仕事は俺くらいにできる」


 そう? ならしばらくは安心? なのかな‥‥‥


「レクター。レクターの中に入っている魔剣っていうのは

 どのような時に力を発揮するのですか?」


 私は馬に乗りながら聞く。


「んー? 基本的には、俺が力を発揮したいと強く願った時に魔剣の力は発動してるなぁ。魔剣に選ばれた者は、同時に魔剣を支配しているからな。まあごくたまに、魔剣の力が暴走する時があるけど」


「暴走? 暴走ってどんな事があった時ですか?」


「ーーーー俺もよくわからないんだ。今のところ、そういう事が起きた時がないから。ただそういう事が起こる時は、よっぽど俺と魔剣の感情が(たかぶ)った時だろうな」


 感情が(たかぶ)った時‥‥‥


 そういえばレクターは、いつも冷静で、これと言った激情を見せた事がないな。


「ふーん? ちょっと見てみたいかも、レクターが感情を剥き出しにするところ」


「それは難しいな、仮にも一国の王子だからなぁ。簡単に感情を剥き出しにするのは‥‥‥」


 いや、難しいというより、忘れてしまった?


 でもーーーー


「ヴァレリアの事になると、感情と激情が戻ってくるような気がする。ユーリがまだアレクと混乱状態にあった時、ヴァレリアの上に乗っていた事があっただろう? あの時は頭に血が昇ってどうにかなりそうだった」


(本当は、両腕を燃やしたいところだが‥‥‥今日は勘弁してやるよ)


 ヴァレリアの事となると、我を忘れてしまう。仲間であっても、何をするかわからない。


 でもあの後ヴァレリアに説教されて目が覚めた。


「ヴァレリア、俺は怖いんだ。この俺の体にある大いなる力が」


 絶大な力は、それを持っている者にしかわからない孤独が常に付き纏う。それは逃れられない宿命だ。擦り寄る者はこの力が目的の奴らばかり。そしていつか大切な誰かを傷付けてしまう恐怖がつきまとう。


「俺は王子にならなければ良かったと思うよ。魔剣が暴走した時を考えると怖くて仕方がない」


「あははっ、珍しいですね。レクターが弱気になるなんて! 大丈夫ですよ、魔剣は生きているのでしょう? いつかレクターの気持ちをわかってくれる日が来ますよ」


 俺の気持ち?

 魔剣が分かってくれる?

 そんな事考えた事もないーーーー


「ハハッ、そんな日が来るのかな」


 でも確かに悪魔との対話をヴァレリアは可能にしてみせた。それにあのニーズヘッグに涙を流させた。


(王子‥‥‥。ヴァレリアを救ってくれよ、グスン。普通の人間なら何もできないだろうけど、でも王子なら、王子だったらできるだろ!! うぅ。可哀想な、ヴァレリア‥‥‥)


 あのようにお互いを思い合える関係になれる日が来るのだろうか? 俺にも、レーヴァテインと‥‥‥


「それに今は私たちの仲間だし、私たちは、こ、こここ」


「?なんだ?」


「とっ、とにかく今はそんな事考えたって仕方ないですよ! それに、レクターは自分の意思で私たちとの冒険を選んだんですよ! 私も今はーーーー」


「今は?」


「レ、レクターにいつも側にいて欲しいです」


 だって私は、いつもレクターに助けられてばかりだった。私が一番側にいて欲しい時に側にいてくれた。


「えっ!? ヴァレリア今のよく聞こえなかった! もう一回言って!!」


「わーッ! そんなの嘘です聞こえてたはずですわ! もう二度と言いませんよ!」


 そう言って私はレクターから逃げるように馬の腹を軽く蹴って走らせた! それを見てレクターも後に続く。


「あははは! 楽しいですね! レクター!」


「俺はお前の笑顔を見ているだけで楽しいよ」


「はぁ?? 何かっこつけた事言ってるんですか! やめてくださいよ!」


 二人は馬を並走させながらイチャイチャしている。


 その様子を見ている怪しい影に気付きもしないままーーーー




そこのバカップル後ろになんかいるぞー!


ここまでお読みくださってありがとうございます。



この話が良いと思ったら広告の下の☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆に0を付けて行ってくださいね。


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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