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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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王位と魔剣

ガルシアからとんでもない事を聞いてしまったヴァレリア

ヴァナルカンドとニーズヘッグと共にまたお城に戻るのだった。

 私達は、再び城に戻って来ていた。


 が、私は不機嫌限界突破しそうだった。


(レクターから聞いてなかったか? ついでに言うとレクターも私の上をいく魔剣の加護を受けている。大抵の悪魔はこの魔剣に恐れをなして王族に逆らえないのさ)


 あのクソ王子、レクターのやつ! 先王様が言わなかったらずーっと秘密にしとく事にしてたの? そのつもりでずっと冒険について来て。その上私はレクターの事を好きになって‥‥‥


「ぐぬうぁぁぁぁーーーー!!」


『うわぁ! いきなりどうしたんだ!? ヴァレリア!』


 私は何とも言えない気持ちになって頭を抱えて思わず叫んだ。こんな重大な事を秘密にされていた! 私を信用してくれてないみたいで悲しい!


 なんか涙が出てきた‥‥‥


『おいおい泣くなよ。俺様が言うのも何だけど、王子が魔剣の事を話さなかったのは、お前を怖がらせたくなかったんだと思うぜ?』


「怖がる? 私が? 今さら何を怖がるっていうのよ、ニーズヘッグも従えさせて、悪魔化もできるのに!」


『いや、そうじゃなくてさ〜。お前元々王子が怖かったんじゃないのか? 俺様お前と同化するたびにお前の記憶がちょっとずつ流れてくるんだけど、王子の瞳とか、前から結構怖がってただろう』


‥‥‥そういえば前に言われた事がありますわ。あれは、まだユーリとアレクが安定していなかった時。王子が冒険に参加する前だった。


(お前俺の目を見る時いつも怖がっていたからな。そう、この瞳が探してくれたのだお前の居場所を。この瞳には秘密があるんだが‥‥‥まだお前に話すのはやめよう)


 レクター、あの頃の私と違うわ! 私はもう何も恐れない! だって私はレクターの事が‥‥‥


「うぶぶぶ! でも私だけがそう思ってたらどうしよう〜!!」


 私はヴァナルカンドのもふもふに顔を埋めて悶える。


(俺が好きなのはヴァレリアお前だけだ! 結婚したいと思っているのもヴァレリアだけだ)


 いや、王子はそう言ってくれたし‥‥‥。な、なんか思い出したら恥ずかしくなって来ましたわ。王子のやつ、思い出したらなんて恥ずかしい言葉を堂々と‥‥‥


「ヴァレリア? 何をしているのだ?」


 顔をヴァナルカンドに埋めたままの体制でいる私の背後から、レクターの声が聞こえてきた。


 私は赤い顔を見られたくなくて顔をあげられない。レクターに会ったら、言いたいこと聞きたい事がたくさんあったのに!


『さっき先王に会ってきたんだ。ついでにヴァレリアはお前の秘密を知ったんだよ』


「えっ?」


「‥‥‥」


 私はもふもふから顔をレクターに向けた。


「レクター! どうして教えてくれなかったのよ!?」


 顔をもふもふから離し、やっとそれだけ言えた。


「‥‥‥。いつのまに親父に会ったのだ??」


 私の代わりにニーズヘッグが今までの事をレクターに説明した。


「そうか、俺がテセウスを地下に案内している間にそんな事が‥‥‥ついにバレちまったか」


 レクターは首の後ろを掻きながら仕方ないなという感じだった。あれ? 意外と動揺してない?


 色々‥‥‥


「色々、知りたい事はありますが。まず瞳は?! あの瞳の色が変わるのは何故?」


「うーむ」


 そう言いながらレクターはテラスの長椅子に腰掛けた。


「ーーーーずっと話せていなかったのは、どこから話していいのか分からなかったんだ、すまない。色々あったし、話す機会が無かったというのもある」


「では、レクター自身は話す気はあったと?」


「うん。今のヴァレリアなら、話してもいいと思った」


 そう言うとレクターは、私に隣りに座るように手を自分の隣りに置いた。


 私はヴァナルカンドから離れてレクターの隣りに座る。


「どこから話そう、まず王族は、王位継承の儀式の時に、冠を被る表向きの儀式の他に、裏儀式というのがあってだな。それは歴代の王が代々継承してきた儀式なのだ」


 ヴァナルカンドが話していただろう。気の遠くなるような昔、悪魔と人間の戦いがあったと。その争いは世界を巻き込んだと。


(散り散りになった悪魔の細胞が、何年も何百年も長い時間をかけて繋がり、深淵で(うごめ)きながら、静かにタイミングを狙っていた)


 ーーーー王家は恐れた。いつかその散り散りになった悪魔の破片が、国に害をなす事を。そこで王族は、世界中から魔剣を集めてその体に宿し。対悪魔との戦闘に備えたのだ。いつでも悪魔が襲ってきてもいいように。


 悪魔対人間の争いが酷かった時の名残り、とでも言おうか。いつのまにか王家には魔剣を継承する事が習わしとなっていた。


「魔剣は生きていて、魔剣自身が宿主、従ってもいいと判断した人を選ぶんだ。親父は数多(あまた)の兄弟の中で魔剣に選ばれた。王位に興味もなく、兄弟に王位を押し付けようと思っていた親父にとっては不服だが、魔剣に選ばれては仕方ない。渋々といった感じで国王になった」


(だるいと(おっしゃ)っていたのはそう言うことだったのね)


「魔剣には色々種類があるのだが、俺が5歳の時、突如として魔剣が俺を選んだんだ」


 親父はおーラッキーじゃん! という感じで以後の政務は全て摂政に任せてさっさと引退してしまった。


「まぁ親父は元々、国王なんぞに興味は無く魔法に興味が全振りだったからな。剣捌(けんさば)きもイマイチだったし、当時は何故あいつが国王に? とかなり揉めたそうだ」


 たしかに。魔法の話になると先王様は瞳を輝かせてたもの。私は頷きながら話を聞いた。


「幸い、俺は親父と違って優秀だったから、魔剣に選ばれた時はずいぶんと祝福されたものだよ」


 はははは、レクターはそう言うと偉そうに踏ん反り返った。レクターのこういう所、なんか腹立つ!


「ーーーー先王様はレクターは自分より遥か上級の魔剣を継承したと仰ってましたけど‥‥‥」


「そうか? 俺にとっては大して変わらんと思うがな」


 俺の色の変わる瞳、羽根、飛べる脚。その全てが、俺が継承した魔剣の力に()るものなのだ。


「ヴァレリア、ここまで聞いて怖いか?」


 私はレクターの目を真っ直ぐ見つめて答える。


「いいえ、私にもニーズヘッグがいますし」


「ははっ、そうだな! そういえば俺たち二人とも、何かを体に宿しているな」


 私は膝にいるニーズヘッグを撫でながら口を開く。


「魔剣とは仲良くなれないのですか?私とニーズヘッグみたいに。だって魔剣は生きているのでしょう?」


 レクターは目を丸くした。


「ははは! 面白いことを言うなヴァレリアは! そんな事は考えた事もない」


『ふふっ』


 レクターに釣られてヴァナルカンドも笑いだした。


「えっ? 私なんか変な事言いました?」


「いや、ただ単にその発想はなかっただけだ」


 ヴァレリアは羨ましいな。その自由な発想が。でもヴァレリアが言うと、不可能な事も可能にできる気がするから不思議だ。俺もいつか意思疎通できる日が来るかもしれない。


 俺のこの体にいる。魔剣【レーヴァテイン】と。


体に剣が入ったり悪魔が入ったり、大変ですな!


次回は癒し回(主に私の)です。緊張しっぱなしの回が続いたのでね(そうか?)


ここまでお読みくださってありがとうございます。




この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けて行ってくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けて行ってください。


ご拝読ありがとうございました。また読んでくださいね。

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