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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第一章 ヴァレリアとアナスタシア
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ガルシア

シリウスのアプローチを蹴散らしたヴァレリアとニーズヘッグ。

ヴァナルカンドとユーリを伴い、ヴァナルカンドの飼い主である父王に会いに行く。

 ヴァナルカンドたち4人はあっという間に庭にたどり着いた。ヴァナルカンドはどうだと言わんばかりにフン、と鼻を鳴らした。


「うわぁ素敵な庭園!」


 ヴァレリアは庭の素晴らしさに歓喜した。いち早くヴァナルカンドから降りて咲く花を愛でる。


「これはシャクヤクかしら?可憐ねぇ」


 ん?あの人影は?


「あっ、すみません庭師さん、お邪魔でしたか?」 


 でもこの庭師さん、庭師にしてはなんかオーラというか、圧がすごい。


 ヴァナルカンドがワハハと笑う。

 私変な事言ったかしら? 


『そいつは庭師じゃねえよ。俺の飼い主、ガルシアだ』


「ええええ!?先王様だったのですか!? 私ったら大変なご無礼を」


 ガルシア様は私に微笑むと、その手で私を制した。


「ああ、私はもう引退した身だ。気にすることはないよ、それよりヴァナルカンド、よく会いに来てくれた。音沙汰が無いので心配していたのだが」


 ええ〜!私は先王様を庭師呼ばわりしたのに!?そんな寛大でいいの?私は顔から火が出るかと思うほど真っ赤になっていた。


『うーむ、どこから話せばいいのか。ヤツの手先の双子が厄介な呪いをかけていってな、助けを呼びたくても呼べなかったのだ』


「ふむ、立ち話も何だ。あちらの城で詳しく聞こう」


 そう言って先王様が指差した先を見ると、バルカ城の宮殿よりは小さいけれど、それでも立派な石造りの城があった。


「ヴァレリアさん、大丈夫ですか?」


 ユーリが声を掛けてくれた。


「ユーリ、私恥をかいてしまったわ。よりによって庭師と先王様を見間違えるなんて」


『ハハハハハ、気にするなヴァレリア!あんな格好をしているガルシアが悪いのだ!』


* * *


 城内には可愛いらしい花の花瓶、美しい女神たちの絵画。彫刻、ロココ調の調度品。白を基調にしたセンスの良い壁紙。マホガニーの小さなピアノ。白地に小花が散りばめられたファブリックなどがそこかしこに見られた!


「可愛い〜!!」


 私は思わず叫んでしまった。


「しまった!私ったらまた失礼な事を!」


 慌てて口を手で抑える。

 その様子を見てユーリがクスクス笑っている。


「いやすまんな、この城内の調度品は全て私の妻が手配した物で、私にはさっぱりわからないのだよ、妻が喜べばそれで良いと思ってな」


 着替えてきた先王様は、先程とは打って変わって先王のオーラを充分に(たずさ)えていた。


 ガルシア=ザルバトール・バアル・ド・バルカ


 かつてバルカ城を治めていた国王その人である。バルカ城に隣接する学園に入学する頃にはすでに引退していて、私はお目にかかった事がないのだけど‥‥‥


「礼を申し上げます、ガルシア様」


「いやいや。そんな堅苦しい挨拶は抜きにして、それよりも座ろう」


 どっこいしょ、とガルシアは部屋にある椅子にどっかりと腰を落とす。


「ああ疲れた、庭の仕事は腰に来るな」


『ガルシア!なんだここは!狭いぞ!』


 ヴァナルカンドが大きな体を縮こませて文句を言う。


「あれ?これでも一番広い部屋を用意したはずなのだがな」


『あーもうここでいい!』


 仕方ないと言うようにヴァナルカンドが言い捨てる。

 ガルシアは椅子から腰を上げた。


「ヴァナルカンド、無事でよかった」


 モフッ!


 言いながらガルシアはヴァナルカンドを抱きしめた。


「さて、改めて‥‥‥おや、君は?」


 先王はヴァナルカンドの隣りに目を向ける。


『やっと気づいたのか、ずっと前からいたぞ』


 ヴァナルカンドがため息を()きながら言う。


「は、初めまして先王ガルシア様! ユーリと申します」


「ユーリ!?君はユーリなのか?あの小さかったユーリが、こんなに立派になって」


 ガルシアは感動のあまりユーリにも抱きつく。


 えっ何この先王様?? 今頃ユーリに気付くなんて、ひょっとしてかなりお鈍いのでは? ヴァナルカンドにあてがった部屋もこの城にしては小さいし。縮こまってるヴァナルカンドは可愛いし。そしてこの城の物が全て自分の奥様の趣味だなんて、萌えですわ!

 ヴァレリアはまた怪しげな自分の世界にトリップしてしまった。


「懐かしいなぁ、君のお父さんと私は、幼い頃は喧嘩ばかりしていてね。まぁそれも、君のお父さんと私の魔力があまりにも格が違うので、私が一方的に嫉妬していただけなんだがな! 君の、ユーリの父親は私の良き友であり、良きライバルでもあった」


 ユーリの肩を抱きながらガルシアは話す。


(僕の、お父さん、僕の、両親‥‥‥)


「あの!聞かせて頂けませんか? 僕の父親の事、僕の両親のこと‥‥‥」


 ガルシアはユーリの言葉に、目に涙を浮かべた。


「ユーリ、あんなに小さかった君が‥‥‥」


 そう言ってガルシアは再びユーリを抱きしめた。


『そんな事はいいから早く話せって!ガウガウ!!』


 どこまでもマイペースなガルシアに、ついにヴァナルカンドがブチ切れて吠えた。



先王様おっとりしすぎ!

ヴァナルカンドのガウガウが書けてよかったです。


ここまでお読みくださってありがとうございます。



この話が良いと思ったら広告の下にある☆に点を付けてくださいね!良くないと思ったら☆にZEROを付けてくださいね!


ご拝読ありがとうございました。また読んでください。

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